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特集:自動車セクター銘柄コメント:そーせいグループ
今中 能夫
楽天証券投資weekly セクター・投資テーマ編
毎週金曜日夕方掲載。楽天証券経済研究所チーフアナリスト 今中能夫の、今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。注目セクターと投資テーマに重点を置いて、相場と銘柄を…

特集:自動車セクター銘柄コメント:そーせいグループ

2016/7/8
今週(7月8日付け)と来週または再来週(7月15日または22日付け)の本稿で、2回にわたって自動車セクターと自動運転を特集します。まず、今回は最近の自動車セクターの動きを概観します。そして、次回に自動運転の動きを見ていきます。
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本レポートに掲載した銘柄

トヨタ自動車(7203)/日産自動車(7201)/本田技研工業(7267)/富士重工業(7270)/マツダ(7261)/そーせいグループ(4565)

特集:自動車セクター

1.自動車セクターの現状:円高だけでなく問題が生じ始めている

今週(7月8日付け)と来週または再来週(7月15日または22日付け)の本稿で、2回にわたって自動車セクターと自動運転を特集します。まず、今回は最近の自動車セクターの動きを概観します。そして、次回に自動運転の動きを見ていきます。

自動車産業は世界経済の基幹産業です。そのため、自動車各社の株価は、世界経済と為替レートに敏感です。足元では、欧州の政治と経済、金融の変動、日本の参院選後の政治、アメリカ経済と大統領選挙、そして、進行中の円高などに左右されていると思われます。見た目は円高の影響が大きいですが、景気も為替と同じかそれ以上に自動車各社の業績と株価に影響します。代表的な耐久消費財である自動車の需要は、景気に敏感です。

グラフ1 各国の新車販売台数:前年比:1

(単位:%、出所:各国自動車工業会、AUTODATAより楽天証券作成)

グラフ2 各国の新車販売台数:前年比:2

(単位:%、出所:各国自動車工業会より楽天証券作成)

2.自動車の地域別販売動向

アメリカ

各地域の自動車販売の動きを見ると、収益面で最も重要なアメリカで変調が始まっている可能性があります。ライトトラック(SUVとピックアップトラック)は堅調ですが、メーカーによっては伸びが鈍化しています。また乗用車の不振が続いており、各社にとって重要な問題になっています。乗用車よりも採算の良いライトトラックに割り切って注力する考え方もありますが、将来の環境規制を考えると乗用車は必要と考えるトヨタなどの日系メーカーは、昨年から乗用車販売をテコ入れするために販売奨励金(インセンティブ、販売店の値引き原資になる)を積み増しています。

これは自動車ビジネスの特色ですが、新車を1台売れば約2年後から更新需要(買い替え需要)が発生します。将来の新車需要を確保するためには、今売らなければなりません。そのため、自動車メーカーは売れなくなると販売奨励金の積み増しを行う傾向がありますが、これは往々にして業績悪化の要因となります。

アメリカ販売の動きはメーカーによっても違いがあり、日産自動車の好調が目立つ一方で、トヨタ自動車が月によってはマイナスになっています。中堅では、富士重工業が相変わらず堅調で在庫不足が続いています。7月後半からアメリカ工場でアウトバックの増産が始まり、年末には新型インプレッサが生産開始となる予定なので、生産能力増強の業績への貢献が注目されます。一方で、マツダはマツダ3(アクセラ)、マツダ6(アテンザ)の前年割れが続いており、必ずしも良いとは言えないようです。5月から販売している中型SUV「CX-9」の売れ行きが注目されます。

また、アメリカ市場全体の先行きに対して、慎重な見方が多くなり始めています。アメリカ新車販売台数は、リーマンショック後の大幅な落ち込み分を埋める形で伸びてきましたが、2016年からは横ばい圏に入るかもしれません。ただし、日系メーカーにとっては、鈍化してもアメリカ市場は最も儲かる市場です。販売競争の激化は避けられないと思われます。

グラフ3 アメリカの新車販売台数(年率換算)

(単位:百万台、出所:AUTODATAより楽天証券作成)

表1 アメリカの新車販売台数:前年比

グラフ4 アメリカの新車販売台数

(単位:万台、暦年、出所:AUTOATAより楽天証券作成、予測は楽天証券)

日本

日本市場には当面期待できそうにありません。各社とも2017年4月の消費税増税前の駆け込み需要をわずかながら前提していましたが、消費税増税が先送りされたため駆け込み需要はなくなる見込みです。そのため、軽を含むベースでの2016年度販売台数は前期に続いて500万台割れとなりそうです(2015年度は493.9万台、6.8%減)。

表2 日本の新車販売台数:前年比(ブランド別)

中国、アジア

中国、アジアの販売は比較的良好です。中国では小型車減税の効果と環境への関心の高まりから、トヨタのハイブリッドカーなど日系メーカーの小型車が売れています。市場全体でも前年を上回っています。ただし、全般的に値引き競争が厳しくなっているようです。

アジア各国を見ると、タイは2013年初頭から、インドネシアは2014年春から前年割れとなっていましたが、ようやく回復して来ました。両市場とも新車効果が出ています。インドは堅調な伸びが続いています。

欧州

欧州は回復が続いています。日系メーカーではマツダが好調です。ただし、イギリスのEU離脱、イタリアとドイツの金融不安が自動車販売にどう影響するか、注意が必要です。

このように、世界の自動車販売は足元では堅調ですが、先行きの不透明感が強くなっており、要注意と言えます。

3.トヨタの「ゆらぎ」。業界序列に変化。

世界の自動車産業では、フォルクスワーゲン、トヨタ自動車の2強が生産販売台数のトップの座を争ってきました。しかし、昨年発覚したアメリカでの排ガス不正事件で、フォルクスワーゲンはアメリカに対して約1.5兆円の訴訟和解金を支払うことになりました。他に、株主や消費者からの訴訟も抱えています。そのため、トヨタ一強時代が到来するかとも思われました。

しかし、最近の動きを見ると、自動車セクター内で地殻変動があります。トヨタの地位が揺らぎ始めているように見えます。ほんの1~2年前まではトヨタは世界の自動車メーカーの中で最大最強の存在でした。しかし今は、様々な分野でトヨタ以外の自動車メーカーに対する消費者や投資家の評価が相対的に上がっているようです。

例えば、エンジン技術の中でも、ガソリン、ディーゼルのノーマルエンジンの低燃費技術では、トヨタよりマツダが世界最高であると思われます。マツダは、次世代スカイアクティブエンジン搭載車を2019年3月期に投入する模様ですが、これで一層他社を引き離すと思われます。

また、大衆車から中級車の車作り、ブランド構築と収益力、安全面の技術力では富士重工業と思われます。今回の自動運転ブームの先駆けとなったのは、富士重工業のアイサイトです。アイサイトの前身である「ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)」が実車に搭載されたのは1999年からですが、これが世界で最初の運転支援システムとなりました。このADAは車間距離をとるクルーズコントロール、車線逸脱に対する警報装置などは備えていましたが、規制上の問題で自動ブレーキは装備されませんでした。自動ブレーキが装備されたのは、2008年から実車装備されたアイサイトVer.1からです。その後、2010年からのVer.2、2014年からのVer.3へと進歩を続けています。

セダンの車作りでは、今年に入って北米でフルモデルチェンジしたホンダのシビックの評価が高いようです。

自動車メーカーとしての規模では、日産自動車が三菱自動車を傘下に入れることによって、トヨタグループの世界販売台数1,001.8万台(FOURIN調べ、会社公表の2016年暦年計画は1,011.4万台)にあと83万台で届くところまできました(ルノー・日産・アフトワズに三菱自動車を単純合算すると2015年918.8万台)。日産は今後販売台数の増加とともに、中身の充実に注力すると思われますが、その柱の一つが自動運転になると思われます。

もちろん、生産・販売効率や、ハイブリッドカー、燃料電池車を含む中長期の技術開発でのトヨタの優位性には依然として大きなものがありますが、総合的に見ると圧倒的というわけではなくなっていると思われます。

表3 自動車販売台数ランキング(2015年)

4.様々な数字が悪化している。業績見通し下方修正の可能性。

このように自動車セクターの数字を見ていくと、様々な数字が2月19日付けの前回レポートで見たときよりも悪化していることがわかります。

足元の為替レート、1ドル=100円、1ユーロ=111円が今期平均レートとなったときに、営業利益がどの程度影響を受けるかを試算したものが表4です。トヨタで約2,400億円のマイナス影響が発生すると試算されます。これに新興国通貨の円高デメリット、販売台数の計画未達によるマイナス影響や販促費の増加を考慮すると、トヨタの営業利益は前年比50~60%の減少(営業利益11,000~12,000億円)となる可能性があります。新興国通貨によるマイナス要因は、富士重工業を除く全社で発生すると思われます。

また、販売台数が会社計画未達となるリスクは、これも販売エリアが大きい会社ほどあると思われます。特にアメリカでの伸びが大きくなく、グローバル展開が進んでいるトヨタ自動車、本田技研工業、マツダにリスクがあると思われます。

これらの事情を考えると、今はセクターとしては買えないと言わざるを得ません。また、銘柄に対する見方を変えることが必要になると思われます。今後の販売台数の伸びと中身の充実を考えると、自動車セクターの投資の主軸は、日産自動車、富士重工業となる可能性があります。

表4 自動車各社に対する為替の影響(試算):2017年3月期

グラフ5 自動車各社の営業利益:1

(単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成)

グラフ6 自動車各社の営業利益:2

(単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成)

グラフ7 自動車各社の営業利益率

(単位:%、出所:各社資料より楽天証券作成)

5.自動運転は車を売る重要な武器になる

このように難しい時代だからこそ自動運転が重要になります。今や日本を含めてどの国でも、日本メーカーが得意な燃費は以前ほど消費者にアピールしなくなりました。代わって、「安全」が重視されるようになりました。その意味でアイサイトのようなADAS(先進運転支援システム)は単に安全に運転するだけでなく、車を売るために重要です。

また、パーキングアシストシステムは、日米欧ともに自動車販売の現場で消費者にアピールする重要機能になっています。駐車はどこの国でも苦手な人が多いため、パーキングアシストシステムは便利な機能なのです。

もちろん、最近起きたテスラ車の事故のように、自動運転による事故もあります。次回書きますが、自動運転になっても事故は起きます。ただし、テスラの自動運転システム「Autopilot」はレベル2(前の車に追従したり、車線維持を自動化する)の運転支援システムであり、完全自動運転には程遠いシステムです。事故の原因はまだ分りませんが、システムの未熟さ、使い方の間違い(ドライバーがハンドルから手を離していたかもしれないが、レベル2の運転支援システムでは手を離してはいけない)、あるいはメーカーのアピールの仕方に問題があった可能性などが考えられます。

自動運転は、自動車メーカーの販売を左右するものになろうとしています。このため、同時に自動車部品メーカーの投資価値を左右するものにもなっています。次回は、デンソー、アイシン精機、日立製作所、ルネサスエレクトロニクス、日本電産、クラリオンなどの自動運転関連銘柄について見て行きます。トヨタ系のデンソー、アイシン精機も重要な会社ですが、日産自動車と富士重工業を顧客に持つ日立製作所と、その子会社でパーキングアシストシステムを販売しているクラリオン、自動車向け半導体では世界2位のルネサスエレクトロニクスなども重要な会社です。

銘柄コメント:そーせいグループ

1.アストラゼネカに導出したアデノシンA2A受容体拮抗薬のフェーズ1が始まった

7月6日付けでそーせいグループは、2015年8月にアストラゼネカに導出したアデノシンA2A受容体拮抗薬の開発パイプライン「HTL1071」(AZD4635)が臨床試験フェーズ1に入ったと発表しました。これに伴い、そーせいグループの子会社ヘプタレスは開発マイルストン1,000万ドル(10億円)を受領します。

HTL1071はがん免疫療法剤であり、フェーズ1はHTL1071単独投与と、アストラゼネカが開発中の免疫チェックポイント阻害剤「durvalumab」との併用でのHTL1071の最大耐量(MTD、投与薬物の量を順次増加させていったときに人が死に至らない最大の投与量)を決定することが主な目的です。約50名の進行悪性固形腫瘍患者と非小細胞肺がん患者を対象とします。

最大耐量が判明次第、安全性、忍容性、薬物動態及び選定容量の抗腫瘍作用を更に検討するために、フェーズⅡを実施する計画です。

2.免疫チェックポイント阻害剤との併用が効くかどうかが焦点

アストラゼネカが開発中の免疫チェックポイント阻害剤「durvalumab」は、現在、頭頸部がん、非小細胞肺がんでフェーズⅢ、それ以外のがん種で単剤、他剤との併用でフェーズⅠ、Ⅱの臨床試験を行っています。PD-L1阻害剤であり、非小細胞肺がんのファーストライン向けフェーズⅠ/Ⅱ試験では、PD-L1発現が多い患者に対して良好な結果が得られています。フェーズⅢ終了予定時期は、最も早い非小細胞肺がん向けで2017年前半になると予想されます(アストラゼネカのプレゼンテーション資料による)。

がん免疫療法剤と免疫チェックポイント阻害剤との併用療法は、がん免疫療法剤が免疫を強化する一方で、免疫チェックポイント阻害剤でがん細胞特有の免疫逃避機構(がんが人間の免疫機能を止めようとするもの)を阻害するものです。成功すれば、がん治療に大変効果的と期待されているものです。前回レポートでも書いた通り、グリーンペプタイドがアメリカでがん免疫療法剤の一種であるがんペプチドワクチン「GRN1201」のフェーズⅠ(メラノーマ向け)を実施していますが、フェーズⅡaからは免疫チェックポイント阻害剤との併用になる模様です(併用する免疫チェックポイント阻害剤は、小野薬品工業=ブリストル・マイヤーズ スクイブのオプジーボ、またはメルクのキートルーダか)。その意味で、HTL1071の単剤での効き目もさることながら、併用での効き目も注目されます。

3.臨床試験の結果が注目される

HTL1071のフェーズⅠは2017年10月に終了する予定です(ClinicalTrials.govによる)。仮にフェーズⅡ2年、フェーズⅢ3年、データ解析と次の段階の準備期間を計1~1.5年とすると、フェーズⅢの終了は2,023~2024年となり、その後申請→承認→上市となります。最近、日本のバイオベンチャー3社でフェーズⅢを終了した開発パイプラインにおいて結果が十分出なかった事例があり、また、durvalumabがまだ上市されていない薬であることを考えると、実際に効果の大きい新薬かどうかはフェーズⅢの結果を確認する必要があると思われます。

なお、HTL1071の今回の開発マイルストン10億円は4月8日付けレポートで予想した20億円の半分です。HTL1071その他のアデノシンA2A受容体拮抗薬の開発、販売マイルストンは総額5億ドル(500億円)以上ですが、フェーズⅢ進出以降に比重を置いた配分になっていると思われます。

がん免疫療法剤と免疫チェックポイント阻害剤との併用療法は注目度の高いテーマです。ただし、アストラゼネカが先行しているわけではないため、臨床試験の各段階の結果の確認が重要と思われます。引き続き変動の大きい株価が予想されます。

本レポートに掲載した銘柄

トヨタ自動車(7203)/日産自動車(7201)/本田技研工業(7267)/富士重工業(7270)/マツダ(7261)/そーせいグループ(4565)

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