本レポートに掲載した銘柄

フリークアウト(6094)/アドウェイズ(2489)/GMOインターネット(9449)/メディアドゥ(3678)/カドカワ(9468)/エムアップ(3661)/ディー・エル・イー(3686)/エイベックス・グループ・ホールディングス(7860)

LINEとLINE関連

1.7月15日、LINEが東証に上場する

LINEが7月14日にニューヨーク証券取引所に、7月15日に東京証券取引所に上場します。上場の概要は以下の通りです。大型上場になります。

  • 上場に伴い公募増資を行う。公募の内容は、国内1,300万株、海外2,200万株。また、需要動向に応じて、国内195万株、海外330万株の売り出しを行う。主幹事証券会社は、日本、アメリカとも、野村証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券(アメリカはモルガン・スタンレー証券)、ゴールドマン・サックス証券、JPモルガン証券の共同主幹事。
  • 新株式発行並びに株式売出届出目論見書に記載された想定発行価格は2,800円。これで計算すると、手取り資金は概算928億円、時価総額は5,879億円になる。
  • 手取り資金の使途は、設備投資、運転資金、各事業への投融資、借入金返済。
  • 上場前の主要な株主とストックオプション保有者に対して、2017年1月10日までロックアップ期間が設定される。
  • 上場前の発行済み株式数は、1億7,499万2,000株。ストックオプションによる潜在株式は2,552万6,500株(外数)。

2.LINEの業績

以下の分析はLINEの「新株式発行並びに株式売出届出目論見書」(いわゆる「Iの部」。東京証券取引所のホームページから閲覧可能です)と過去の報道資料、同社ホームページによります。

LINEは言うまでもなく日本最大のSNSです。海外の大手に比べればマンスリー・アクティブ・ユーザー数(MAU)は少ないですが、日本のMAU約6,000万人は日本のSNSの中では最大で、ユーザーの使用頻度が多いことで知られています。

本社は日本(東京)ですが、韓国のNAVER Corporationの100%子会社であり、実質的には外国企業(韓国企業)と言って良いと思われます。上場後も株式の過半数をNAVER Corporationが保有します。

グラフ1 SNS各社のマンスリー・アクティブ・ユーザー数

(単位:万人、全世界、2016年3月末、出所:各社資料より楽天証券作成)

業績は以下の通りです。2011年6月にSNSサービスのLINEを開始しており、LINEのゲーム、スタンプ、広告などの売り上げの増加に伴い、全社売上収益は急速に伸びています(表1)。

しかし、2015年12月期までは、営業利益と最終利益は売上高のように順調には伸びていません。しばしば赤字になっていますが、これは広告費などのマーケティング費用や人件費の増加、のれんの減損などによります。特に従業員報酬費用(現金の給与、賞与とストックオプションの評価の合計)の対売上収益比率は2014年12月期から2015年12月期にかけて急上昇し、2015年12月期の営業赤字の要因になりました。

ちなみに連結従業員数は2013年12月末1,340人から2015年12月3,153人に急増しています。日本企業であるヤフーの5,547人(2016年3月末)、ミクシィの558人(同、外注を入れても約1,000人)と比べて、LINEの従業員数は多いと言えます。なお、2016年4月末現在の従業員数は3,182人で、従業員の急増は収まったように見えます。

上場後の業績は上場後に改めて確認する必要があります。過去1年間の四半期業績を見ると、黒字と赤字を繰り返しており、利益変動が激しくなっています(グラフ2)。ただし、2016年1-3月期(2016年度1Q)は、コンテンツ(ゲーム)売上高が鈍化したため、増収率が2015年12月期39.7%増から2016年1-3月期19.0%増に鈍化したにもかかわらず、営業黒字となりました(営業利益率16.0%)。最終損益は赤字でしたが、これは2016年3月に撤退したラジオ型音楽配信サービスMixRadioの最後の赤字があったためであり、業績の実体は改善しています。

これは主に、他の事業に比べて採算が良いと思われる広告売上高が増加したこと、マーケティング費用が減少したことによりますが、従業員報酬の増加に一定の歯止めがかかったこと、「その他の営業費用」の中の減損などの費用、損失が減少したことなどにもよります(表2)。上場後に広告売上高の伸びが続き、このようなコントロールされたコスト構造が維持できれば、黒字が継続できる可能性があります。

表1 LINEの業績

表2 営業費用の内訳

グラフ2 LINEの四半期業績

(単位:百万円、出所:会社資料より楽天証券作成)

3.LINEの収益構造

LINEのマンスリー・アクティブ・ユーザー数(月1回以上LINEを使うユーザー、MAU)は、2016年3月末合計2億1,800万人で、このうち日本が6,070万人です(グラフ3)。伸びは日本が最も鈍く、台湾、タイ、インドネシアが高い伸びとなっています。

しかし、収益上は日本の比重が大きくなっています。2015年12月期売上収益の70%が日本、30%が台湾、インドネシア、その他です(表3)。地域別利益は公表されていませんが、日本が主力地域と思われます。

サービス別売上収益の構成を見ると、ゲーム課金中心の「コンテンツ」が売上収益の41%、次がスタンプなどの「コミュニケーション」で同24%、LINE広告が22%となっています(いずれも2015年12月期、表4)。かつてはゲーム(コンテンツ)が大きな比重を占めていましたが、広告が急成長して事業の多角化が進んでいます。

売上収益の伸びを見ると、2015年12月期通期は前年比40%増、2016年1-3月期は同19%増と鈍化しています(表1、4)。これはゲーム課金(コンテンツ)の減少によります。目論書によれば、2015年に配信開始した「LINEバブル2」「LINEディズニーつむつむ」の課金収入は増加したものの、2014年配信開始の「LINEレンジャー」「LINEゲットリッチ」などが減収になったためです。また、LINEスタンプなどのコミュニケーションは伸びましたが伸び率は鈍化しました。ゲームとスタンプは当社の業績上大きな存在なので、今後の動きが注目されます。

また、「コミュニケーション及びコンテンツ」の中の「その他」が小額ながら急増しています。これはキャラクター収入などです。

一方広告は、livedoorに配信しているポータル広告が2016年1-3月期に減収となったものの、LINE広告は同66.3%増と高い伸びを示しています。収益の分散と新しい収益源の開拓が進んでいると思われます。広告はページビューの在庫を販売することになるため、低コストと思われ、当社の業績への寄与は大きくなっていると思われます。

なお、今年夏をめどにMVNO(格安スマホ)事業のLINEモバイルを開始する計画ですが、採算は不明です。

グラフ3 LINEのマンスリー・アクティブ・ユーザー数(MAU)

(単位:百万人、出所:会社資料より楽天証券作成)

表3 地域別売上収益

表4 LINEの売上収益内訳

4.業績を見る場合の今後の注目点

当面の注目点は、上場時に公表される今期2016年12月期業績見通し(ニューヨークにも上場するため業績見通しを開示しない場合もあります)と、成長可能性に関する説明資料です。また、上場後に2016年4-6月期決算の発表があります。

5.LINE関連銘柄

株式市場で注目されるLINE関連としては、ゲーム、広告、スタンプ、音楽、マンガ、販促などの各分野があります。主要な関連銘柄は以下の通りです。

  • ゲーム:グリー、ボルテージなどが開発したゲームをLINE GAMEで配信。
  • スタンプ:エムアップ、ディー・エル・イーなどがLINEにスタンプを提供。
  • 音楽:LINE MUSICを、ソニー、エイベックス・グループ・ホールディングスと共同で設立。
  • マンガ:メディアドゥ(LINEマンガへのコンテンツ取次)、カドカワ(自社コンテンツを提供)。
  • 広告:アドウェイズ、GMOインターネット、フリークアウトなど。
  • 販促、アカウント開設の受託等:トランスコスモス、ガイアックス。

LINEは各分野で複数のパートナー企業と協業しています。上述の各分野ではスタンプの制作がパートナー企業にとって収益貢献が大きい模様です。LINE広告も急成長している分野なので、LINE広告の取り扱いにはビジネスチャンスがあると思われます。

LINE広告の取り扱いも複数の広告会社が行っています。ただし、RTB(リアルタイムビッディング、広告枠の自動取引)については、現在のところフリークアウトが独占的に扱っています。また、LINEはフリークアウトの子会社でネイティブ広告(記事広告、ニュース広告など)向けプラットフォーム「Hike」を運営するM.T.Burnに出資しており、ネイティブ広告をフリークアウトと共同で事業化します。このネイティブ広告はフリークアウトのRTBシステムで売買されます。

LINEはフリークアウトの技術を高く評価している模様で(実際にフリークアウトのRTB技術は日本でトップの評価を受けています)、LINEの上場前説明会でも会社側から企業名に言及がありました。LINE広告の成長がフリークアウトの業績にどう寄与するかが注目されます(RTBについては、2015年3月13日付け楽天証券投資WEEKLYを参照してください)。

また、LINE MUSICへも注力する模様です。LINE利用者の年齢層に対して音楽事業は訴求すると思われます。

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フリークアウト(6094)/アドウェイズ(2489)/GMOインターネット(9449)/メディアドゥ(3678)/カドカワ(9468)/エムアップ(3661)/ディー・エル・イー(3686)/エイベックス・グループ・ホールディングス(7860)