1.2015年9月14日の週の相場概況:日経平均株価は18,000円台で値固めか

9月14日の週の株式市場は、前半に下落しましたが、後半はアメリカの利上げ延期期待から上昇しました。

アメリカのFOMCが現地時間の9月16~17日に開催されました。FOMCの声明が日本時間の18日午前3時に発表されましたが、結局今回も利上げは見送られました。今週は後半になってアメリカの利上げの延期論が優勢となり、日経平均株価もそれに応じて上昇しました。17日(木)は前日比260.67円高の18,432.27円で引けました。チャートを見ると、重要な節目である18,000円で下げ止まって、戻る相場になりつつあることが見えます。18日の株価に注目したいと思います。

利上げが先延ばしになったところで、再度個別セクター、個別銘柄のファンダメンタルズに注目したいと思います。自動車、電子部品、ゲーム、建設、小型株などに株価とPERが十分下がった銘柄があります。とりあえず、その戻りを狙いたいと思います。

具体的には、自動車では、トヨタ自動車、富士重工業、デンソー、電子部品では、村田製作所、日本電産、ソニー、TDK、アルプス電気、NOK、ゲームでは、任天堂、ミクシィ、建設では、清水建設、大成建設、大林組、小型株では、アミューズ、アニコム ホールディングス、アルファポリスを挙げておきます。

グラフ1 日経平均株価:日足

グラフ2 日経平均株価:週足

グラフ3 日経平均株価:月足

グラフ4 東証マザーズ指数:週足

グラフ5 ドル円レート:日足

グラフ6 ユーロ円レート:日足

グラフ7 東証各指数(2015年9月17日まで)を
2012年11月14日を起点(=100)として指数化

2.セクターコメント:「iPhone6s」シリーズの予約好調

先週お伝えしたように、アップルは9月12日(土)から「iPhone6s」「iPhone6s Plus」の予約を開始しました。発売は9月25日(金)です。これに関してアップルは9月15日にアメリカのCNBCにコメントを寄せ、「iPhone6s」シリーズの予約は大変好調で、発売後3日間の販売台数は、昨年の「iPhone6」シリーズの1,000万台を上回るだろうと指摘しました。特に大画面の「6s Plus」の納期が中国において3-4週間になっているとしています。昨年の「6」シリーズ発売時には中国は初期発売国に入っていませんでしたが、今回は中国でも最初に発売するため、初期の販売台数が大きくなります。ただし、そのことを考慮しても出足は順調の模様です。

日本でも、アップルのオンラインショップでは、9月17日時点で「iPhone6s」シルバーの16GBは9月25日に入手できますが、同じ「6S」のローズゴールド(新色)は全タイプが2-3週間待ちになります。また、「6s Plus」は色を問わず全タイプが既に3-4週間待ちとなっています。アメリカのアップルのオンライン予約でも「6s Plus」は人気で、通信会社を問わず3-4週間待ちとなっています。

なお「6s」シリーズについては、各種の情報を総合すると、今回の目玉技術の一つである「3D Touch」(触覚デバイス)の重要部品の生産数量が4-6月期から増加しなかったため、6月から8月の初旬まで、端末の生産台数が思うように伸びなかったのではないかと言われています。この重要部品は振動モーターと思われます(日本電産とAACテクノロジーズ(中国)が生産している模様)。ただし、この部品の生産数量が8月中旬から増加した模様なので、端末生産も同時期から増加している模様で、今後は9、10、11月と生産数量が増加すると思われます。

後は人気次第ですが、アメリカ、日本での人気と、中国での人気が衰えていないことを考えると、「6s」シリーズは「6」シリーズを上回る生産販売台数を達成する可能性が高いと思われます。

「iPhone6s」シリーズの生産数量が増加中であることを考えると、日本の大手電子部品メーカー、

村田製作所

チップ積層セラミックコンデンサ、SAWフィルタなど世界シェアトップ製品多数。

日本電産

振動モーターで中国のAACテクノロジーズに次ぐ生産能力を持つ。

ソニー

カメラ用高級イメージセンサの最大手。「6s」シリーズではカメラの性能が向上している。

アルプス電気

カメラ用AFアクチュエータ、手振れ補正用アクチュエータの最大手。

TDK

ポリマー電池の世界シェアトップ

NOK

高品質フレキシブル回路基板の最大手、3D Touch用に採用か。

などに、引き続き投資妙味があると思われます。特に、これらの銘柄の多くが今回の下落相場に伴って株価が大きく下落しました。とりあえず、その戻りを取ることを考えたいと思います。

グラフ8 村田製作所:日足

グラフ9 日本電産:日足

グラフ10 ソニー:日足

3.銘柄コメント:任天堂の新経営陣が発足した

君島常務が新社長に

9月14日、任天堂は新経営陣を発表しました。それによれば、新社長には常務取締役経営統括本部長兼総務本部長人事本部担当の君島 達巳(きみしま たつみ)氏が就任します(9月16日で就任、以下同様)。

また、代表取締役専務で統合開発本部長の竹田玄洋氏が代表取締役専務はそのままに、統合開発本部長から「技術フェロー」に、代表取締役専務で情報開発本部長の宮本茂氏が、同じく代表取締役専務はそのままに情報開発本部長から「クリエイティブフェロー」に就任します。

ちなみに「フェロー」は、代表取締役の中から選定し、高度な知識と豊富な経験をもとに、専門領域おいて組織運営に関し指導・助言を行う職位です。9月16日付けで新設されました。

この他、管理、営業、開発の各部門で若手が登用されています。「マリオ」の生みの親で任天堂のソフト開発の「顔」である宮本氏が本部長をしていた情報開発本部は、企画開発本部と統合し企画制作本部となりましたが、この本部長に高橋伸也取締役が就任しました。同氏がスマホ向けを含む任天堂のソフト開発全般を取り仕切ることになります。

また、ハードウェア全般の開発を行ってきた竹田氏の後任としては、統合開発本部とシステム開発本部を統合した技術開発本部の本部長として、統合開発本部副本部長だった塩田輿氏が就任しています。ソフト、ハードの両分野で後継人事が進んでいると受け取れます。

報道によれば、社長就任記者会見において、君島新社長は竹田専務、宮本専務との集団指導体制を強化すること、1年後に取締役の任期が来るが、1年後どう動くかわからないとし、後継人事に社外の人材を当てることも選択肢に入ることを指摘しました。また、岩田前社長の路線を継承するとして、ディー・エヌ・エーとのスマホゲームの開発が進んでいること、米ユニバーサル・パークス・アンド・リゾーツとの間で遊戯施設の具体的なプランを検討していることも明らかにしました。

「NX」など再成長への動きが進む

君島新社長は常務時代に経営統括本部長としてIRも管掌してきたため、株式市場のアナリスト、投資家にもなじみのある人物です。旧三和銀行出身で、三和銀行時代のニューヨーク駐在とNintendo of Americaの時代を含めて、通算20年近くをアメリカで過ごしているため、任天堂の最重点地域である北米市場を熟知していると思われます。

また、代表取締役専務の竹田、宮本両氏と、その後任の人達は、今年10-12月期に参入する計画のネイティブアプリゲーム(スマホゲーム)、2017年3月期の発売が予想される新型機「NX」の開発にかかりきりになっていると思われるため、彼らが社長になるのは無理だったと思われます。

特に「NX」は、その成否によって任天堂が再成長できるかどうかがかかっている、まさに社運をかけたプロジェクトであると思われます。逆に、スマホゲームについては、上手く行くのかどうか、ディー・エヌ・エーとの関係が続くかどうかも含めて不透明感があり、今後流動的になる可能性も否定できないと思われます。こう考える理由は、家庭用ゲームとスマホゲームはユーザーの時間とお金を喰い合ってしまうため、任天堂のように必ず一定規模の家庭用ハードを売らなければ高収益が実現できない会社では、両立させることが難しいと思われるからです。今後任天堂がどのような道を進むのかは、時間をかけて練られていくのではないでしょうか。

環境は厳しいが任天堂の地力に期待したい

今年後半から来年にかけて、年内に配信開始とされるスマホゲームの成否、年末商戦での特にWii U用ソフトの売れ行き、私自身は2017年3月期下期と予想している「NX」の発売と、観察しなければならない重要時が続きます。

一方、任天堂を取り巻く環境は決して任天堂にとってやさしいものではありません。「iPhone6s」シリーズの予約が好調ですが、日本では少なからぬ人が「iPhone6s」シリーズのゲーム機としての性能を評価して購入すると思われます。単純に画面が大きく、性能がよいのでゲーム機として使いやすいのです。また、3D Touchをゲームに使う動きがそのうち出てくるかもしれません。

国内のネイティブアプリ市場では、任天堂の新ソフトと並んで、ミクシィの新作ソフト(10-12月期配信開始予定)と10月の「モンスターストライク」のアニメ配信開始が注目されます。

また、アップルが10月下旬に発売する新型「Apple TV」に家庭向きのゲームを配信する計画も注目されます(専用のアップストアを使う模様)。これが好評なら任天堂にとって脅威となる可能性があります。

海外の家庭用ゲーム市場で先行するソニーを見ると、日本向けPS4の価格を従来より5,000円値下げして3万4,980円とします(10月1日から、海外での価格は据え置く)。海外に比較してPS4の普及が遅れている日本市場をてこ入れします。9月16日からはゲームの定額制サービス「Playstation Now」も日本で開始します。PS3時代の名作ソフトがPS4で月額定額制で遊べるようになります。

このように、競争相手の動きは急です。当面は年末までに配信される予定のスマホゲームと日米欧の年末商戦の動きに注目したいと思います。

ちなみに2Q以降に期待できる新作ソフトは、3DS用では、「どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー」(日本は7月30日発売、アメリカ9月、欧州10月)、「ゼルダの伝説 トライフォース3銃士」(2015年中)など。Wii U用ソフトでは、「スーパーマリオメーカー」(日米欧9月)、「どうぶつの森amiiboフェスティバル」(2015年10-12月期)、「マリオテニス ウルトラスマッシュ」(2015年10-12月期)、「スターフォックス ゼロ」(2015年10-12月期)などの有力シリーズの新作です。

このほか、「XENOBLADEX(ゼノブレイド エックス」(アクションRPG、日本は2015年4月発売、米欧12月)、「Project Guard」(開発本部長の宮本氏が開発している。詳細は不明。2015年中発売予定)などの全くの新作もあります。任天堂は地力のある会社なので、特にWii U用ソフトの年末商戦にはある程度期待してよいと思われます。

任天堂株の下がったところを狙いたい

株価は新経営陣発表後、大きく下落しました。様々な評価、考え方があると思われますが、私自身は、ゲーム会社の経営にとって最も重要なのは、クリエーターが優れたゲームソフトを作り続けることができるかどうか、それにつきると思います。ゲーム会社に限らず、映画会社、音楽会社、芸能プロダクションなどのエンタテインメント会社もそうですが、強いリーダーシップを持った経営者が必ずしも上手く行くとは限りません。逆に調整型の経営者のほうがよい場合もあります。

今回の新経営陣を見ると、手堅く当面の業績を向上させ、次の世代を育成していく期待ができると思われます。株価の下がったところに注目したいと思います。

グラフ11 任天堂:日足