1.2015年7月13日の週の相場概況:ギリシャ問題、中国問題が「とりあえず」解決で日経平均株価は2万円を回復。

7月13日の週の株式市場は、戻す展開となりました。ギリシャ問題は、13日のユーロ圏緊急首脳会議において、15日までにギリシャ議会がユーロ圏が求める緊縮策の法制化を行うことを条件に、ギリシャへの金融支援再開を合意しました。3年で約11兆円の支援が実施される見通しです。そして、日本時間の16日朝、ギリシャ議会は財政緊縮化の法案を可決しました。ギリシャ問題はとりあえず一服したと思われます。

中国の上海総合指数が大幅下落した問題では、中国当局はなりふり構わぬ姿勢で各種介入を行いました。その結果上海総合指数は、7月8日の3,507.192ポイントを底にして、7月13日の3,970.388ポイントまで上昇しました。15日には一時下がりましたが、16日は3,823.18ポイントで引けました。

このように、このところの相場下落の2大要因が、相次いで、とりあえずですが、一応解決の方向に向かっています。

この動きを受けて、日経平均株価は週初から順調に戻りました。前週末7月10日は19,779.83円(前日比75.67円安)で引けましたが、週初7月13日は前日比309.94円高の20,089.77円で2万円台を回復、その後も順調に上昇し、15日は前日比78.00円高の20,463.33円、16日は前日比136.79円高の20,600.12円で引けました。17日も寄り付きは堅調な動きです。

物色の対象も、不動産、鉄道、ゲームなどの内需株から自動車、電機などの輸出・グローバル関連まで、また大型株から小型株までが循環物色されており、相場の地合いとしては強いものを感じます。

7月21日の週からは、日本企業の2015年4-6月期決算が始まります。7月月内の有力企業の決算発表予定を見ると、

  • 7月21日(火)安川電機
  • 22日(水)日本電産
  • 23日(木)信越化学工業、サイバーエージェント(9月決算)
  • 28日(火)ファナック、日立建機
  • 29日(水)任天堂、コロプラ、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(12月決算)、アルプス電気、コマツ、
    日産自動車、日野自動車、NTTドコモ、パナソニック
  • 30日(木)マツダ、ソニー、三菱電機、SCSK、オムロン、武田薬品工業、三菱自動車工業、住友商事、カプコン、
    富士通、ダイハツ、日本電気、Aiming(12月決算)
  • 31日(金)デンソー、アイシン精機、富士重工業、村田製作所、本田技研工業、TDK、三菱重工業、川崎重工業、シャープ

などです。この中で私が注目しているのが、電子部品の日本電産、アルプス電気、村田製作所、TDK、自動車、自動車部品の富士重工業、マツダ、日産自動車、本田技研工業、デンソー、ゲームで任天堂、コロプラ、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、Aiming、民生用電機でソニー、設備投資関連でファナックなどです。

第1四半期決算は、営業日数が少ないため、変化に乏しいと思われがちですが、実は逆に営業日数が少なくイベントが少ないだけに変化が出やすい四半期です。1Q決算が良好な場合は、通期でも良好な場合が多いのです。良い銘柄を探すとよいと思われます。

追記

7月15日付けでアナリストレポート「アルファポリス」を発行しました。

グラフ1 日経平均株価:日足

グラフ2 東証マザーズ指数:日足

グラフ3 東証各指数(2015年7月16日まで)を
2012年11月14日を起点(=100)として指数化

グラフ4 ドル円レート:日足

グラフ5 ユーロ円レート:日足

2.セクターコメント:自動車セクターの日米販売動向

7月3日付けの本稿で、自動車各社のアメリカでの販売動向をコメントしました。今回はその続きで、日本とアメリカの動きを見てみたいと思います。

1.日本の新車販売動向

日本では軽自動車の売れ行きが引き続き低迷しています。2014年4月の消費税増税に伴う駆け込み需要と、2015年4月の軽自動車税増税に伴う駆け込み需要で、需要の先喰いが相当起こってしまったようです。回復の兆しが見られません。

一方で、登録車については、やや回復の兆しが出てきました。特に普通車の販売台数が前年比でプラスに転じてきました。グラフ6を見る限り、全体での変化はまだ緩やかなものですが、レクサス(全て車格の大きい普通車です)の前年比が4月、5月は20%以上の伸び、6月は前年比47%増となりました。想像されるのは、国内景気の回復と株高による資産効果です。

メーカー、ブランドによっても、好不調が分かれています。軽自動車の不振が続いていますが、対極のレクサスは好調に転じてきました。また、マツダが小型、中型のSUVであるCX-3、CX-5を成功させたことから、大きな伸びを示しています。日本市場は全体としては伸び悩んだ状態から、普通車から回復の機会を見出そうとしています。

グラフ6 日本の新車販売台数:前年比
(単位:%、出所:日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会より楽天証券作成)

表1 日本の新車販売台数:前年比(ブランド別)

2.アメリカの新車販売動向

7月3日付けの本稿でも述べたとおり、アメリカ市場は中大型(排気量2ℓ以上)のSUV、ピックアップトラックが好調で、普通の乗用車、特に2ℓクラスから下の乗用車は前年比マイナスが続いており、不振です。自動車の採算は排気量の大きさ、販売価格に比例して良くなると言われています。日系自動車メーカーの場合は円安メリットもあるため(表6)、各社ともアメリカで大きな利益を上げていると思われます。

表2 アメリカの新車販売台数:前年比

ただし、問題がないわけではありません。日本メーカーは小型車、ハイブリッドカーに多くの経営資源、人、金、時間を費やしてきました。ところが、中大型のSUV、ピックアップトラックばかりが売れて、小型のセダンが売れないとなると、中長期で見た時に、日系メーカーの優位性が失われることになりかねません。

今年は、日本とアメリカで重要な小型車が2つ発売される予定です。一つは、トヨタ自動車の新型プリウスで発売は11月と言われています。日米でほぼ同時に発売されると思われます。

もう一つは、本田技研工業の新型シビックです。発売は今秋と言われています。前回2011年春のフルモデルチェンジは失敗だったと思われます。今回は成功させなければなりません。

トヨタ自動車と本田技研工業は、小型車、ハイブリッドカーに特別に注力してきた会社です。この分野でのフラッグシップ(旗艦車種)が今秋アメリカで発売されます。成否が注目されます。

もっとも、投資対象として見た時のトヨタ自動車は、本田技研工業や日産自動車に比べて、2ℓ以上のSUV、ピックアップトラックで好調な車種が多くなっています。SUVのRV4(2ℓクラス)、4RUNNER(4ℓクラス)、ピックアップトラックのTACOMA(2~4ℓクラス)などです。小型車が不振でも、採算の良い中大型車が好調なので全体の業績へのプラスの影響は大きくなっていると思われます。

富士重工業とマツダにも注目したいと思います。理由は、最も重要な市場であるアメリカ市場で順調に売れていること、車種や地域に大きな問題がないことです。この観点からは、本田技研工業は小型車のアメリカでの売れ行きが不透明であり、日産自動車は中国市場での売れ行きが不透明です。

これに対して、富士重工業は、日本での売れ行きにブレーキがかかってきましたが、アメリカが順調です。というよりも、アメリカを最大限意識した車づくりを行っています。また、アメリカで車の品不足が続いており、日本その他の地域から自動車を回している状態です。

マツダは日本とアメリカが順調です。また、超低燃費技術「SKYACTIV」の将来性にも注目したいと思います。「SKYACTIV」は小型車のみに適用するだけでなく、2ℓ以上のエンジンにも適用可能な技術です。2016年1-3月期に中型SUV「CX-9」(現行のエンジンは3.5ℓガソリン)の新車がアメリカで発売される予定です。「SKYACTIV」になると思われ、どの程度の燃費になるか注目されます。マツダは欧州での販売に不透明感があり、ユーロ安円高の問題もあるため、中長期投資の対象と思われます。

表3-1 トヨタ自動車-アメリカでの主力車種の販売動向:1

表3-2 トヨタ自動車-アメリカでの主力車種の販売動向:2

表4 富士重工業:アメリカの車種別新車販売台数

表5 マツダ:アメリカの車種別新車販売台数

表6 自動車、自動車部品会社の円安メリット(試算)