(1)2015年1月19日の週の相場概況:日経平均は17,500円台を回復

1月19日の週の株式市場は、前週の流れから一転して上昇して始まりました。1月16日の日経平均は一時16,600円割れまで下落しましたが、その後持ち直し、16,864.16円、前日比244.54円安で引けました。また、16日のNYダウも190.86ドル高と高かったことから、19日は上昇して始まり、19日150.13円高、20日352.01円高となって、17,300円台を回復しました。21、22日は小動きでしたが、22日のECB(欧州中央銀行)の量的金融緩和の決定を受けて、23日の日経平均は前場終値で144.78円上昇しています。このまま上値を志向するかどうか、注目されるところです。

為替の動きも今週は1ドル=116~118円台で推移しています。ECBの量的金融緩和決定で、ユーロ円相場は1ユーロ=137円台だったものが133円台に円高になりましたが、ドル円相場は1ドル=118円台に入っています。

今週から2015年3月期3Q決算発表のシーズンが始まりましたが、相場的にはよい決算を素直に評価できる地合いになってきたように思われます。

グラフ1 日経平均株価:日足

(2)中小型株では東証マザーズ指数のチャートが三角保合いに

中小型株の各指数を見ると、東証マザーズ指数のチャートが三角保合いの形になっています。3Q決算の大勢次第では上にも下にもどちらにも行きそうなチャートですが、高PERが多いことには引き続き注意が必要と思われます。日経ジャスダック平均も勢いは鈍っているように感じられます。

一方、東証2部総合指数は引き続き上値を志向するチャートを描いています。

中小型株は決算に対するコンセンサスが測れない銘柄が多く、決算内容の微妙な変化で株価が上下する傾向が東証1部以上に見られます。決算シーズンは新たな投資対象を見付けるチャンスではありますが、逆に見切りをつけたほうがよい銘柄が出てくる場合もあるでしょう。

グラフ2 東証マザーズ指数:日足

グラフ3 日経ジャスダック平均:日足

グラフ4 東証2部総合指数:日足

(3)決算コメント:2015年3月期3Q決算の見所

1月19日の週から2015年3月期3Q(2014年10-12月期)決算が始まりました。重要企業の決算としては、1月22日に日本電産の決算発表がありました。

ここでは、3Q決算の見所についてコメントします。

自動車各社に注目したい

まず、全くの私見ですが、今回の3Q決算で最も重要な決算は自動車各社、特にトヨタ自動車(2月4日決算発表)と思われます。3Qから円安が進んでおり、2014年12月に1ドル=120円台に入りました。足元でも1ドル=118円台です。ちなみに、2015年3月期上期(4-9月期)の平均レートは1ドル=103円でした。日本企業の中でも円安メリットが出易いのが自動車メーカー、特にトヨタ自動車です(1ドル1円の円安で営業利益に対して400億円の円安メリットが発生する)。

為替とともに重要なのが、アメリカでの販売好調がどの程度業績に寄与しているのかということです。これについては、表1、2を見てください。トヨタ自動車のアメリカ販売ですが、「プリウス」の減少が続き、「カムリ」が振るわない中で、中大型SUVの「RAV4」「ハイランダー」「フォーランナー」が好調です。アメリカにおけるメーカー標準小売価格(輸送費用等を除く)を見ると、「プリウス」が24,200~30,005ドル(1ドル=117円換算で283~351万円)なのに対して、「RAV4」は23,680~28,450ドル、「ハイランダー」が29,415~47,500ドル、「フォーランナー」が33,210~41,585ドルです。エンジンは「RAV4」が2.5ℓ、「ハイランダー」が2.7ℓと3.5ℓ、「フォーランナー」が4.0ℓですので、表1、2を見ると、アメリカの自動車市場で、中小型の乗用車から、排気量3~4ℓの大型SUVへの需要シフトが起こっていると言えるでしょう。

この背景にあるのは、アメリカの好景気、金融緩和による自動車ローンの金利低下と条件緩和、そして原油安によるガソリン価格低下です。いずれもこの先も続きそうな流れです。

トヨタ自動車の中では、ハイブリッドカーの採算は悪く、全社の2015年3月期粗利益率18~19%(楽天証券予想)よりも低いと思われます。一方で、大型SUVは30~40%程度の粗利益率があると思われます。円安と合わせて考えると、かなり大きな利益がアメリカ市場で獲得出来ている可能性があるのです。

もちろん悪い部分もあり、日本での販売は前年割れが続いています。消費税増税後の反動としては前年割れが長引きすぎています。消費税増税と円安による物価上昇によって実質賃金が低下し、一般消費者の購買力が低下したことが、自動車販売の減少に繋がっているとみるのが自然かもしれません。タイ、インドネシアなどトヨタ自動車の市場シェアが高いアジア各国も、回復していません。

このように、プラス要因とマイナス要因が共存する中で、どの程度業績が上積みされるのかが、トヨタ自動車と自動車各社の決算の見所と言えます。なお、トヨタ自動車については、1月23日付けでアナリストレポートを発行しておりますので、詳細はそちらをごらんください。

トヨタ自動車以外の決算発表は、本田技研工業(1月30日)、日産自動車(2月9日)、富士重工業(2月4日)、マツダ(2月4日)などです。

表1 トヨタ自動車:アメリカでの主力車種の販売動向:1

単位:台
出所:TOYOTA USA プレスリリースより楽天証券作成

表2 トヨタ自動車:アメリカでの主力車種の販売動向:2

単位:台
出所:TOYOTA USA プレスリリースより楽天証券作成

自動車部品、電子部品

自動車と並んで注目したいのが、自動車部品と電子部品です。自動車部品では、デンソー(2月3日)、アイシン精機(2月3日)、NOK(2月3日)など。電子部品では、日本電産(1月22日)、村田製作所(1月30日)、TDK(1月30日)などです。自動車部品では、日系、外資系ともに自動車生産が増えていることが注目点です。電子部品では、村田製作所、TDKはスマートフォン向け、自動車向けの増加が注目点です。

1月22日に決算発表した日本電産は、HDD向けから自動車、家電、一般産業向けモーターへのシフトが進んでいました。3Q営業利益は27.9%増益でした。しかし一方で、HDD向け、光ディスク向けの落ち込みが予想以上に大きいというネガティブな面もありました。

ゲーム

ゲームでは、ミクシィ(2月6日)、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(2月3日)、コロプラ(1月28日)のようなネイティブアプリゲーム大手の決算が注目されるところですが、任天堂(1月28日)とソニー(2月4日)にも注目したいと思います。

任天堂の3DS用ゲームが、昨年のクリスマスシーズンは国内、海外でよく売れました。1月3日現在で任天堂製ソフトの「大乱闘スマッシュブラザーズ」が550万本、「ポケットモンスター オメガルビー/アルファサファイア」が741万本売れています(VGCharzによる)。まだ売れ続けているため、3月末までに更に上乗せが出来そうです。

ソニーもプレイステーション4が好調です。1月3日現在の累計販売台数が1,850万台に達しており(VGCharz)、かなり早いスピードで売れています。

為替については、対ドルで任天堂は円安が営業利益にプラスになりますが、ソニーはマイナスになります。このあたりにも注意して決算を見たいと思います。

任天堂、ソニーともに3Q決算で実態を確認したいと思います。