1.2014年12月15日の週の相場概況:FOMCの声明を受け日経平均は急反発した。

12月15日の週の株式市場は、前半は前週からの原油安、NYダウ安の流れを受け、日経平均は大幅下落が続き、17日には一時16,600円台に入りました。為替レートも16日に1ドル=115円台に入りました。ところが、17日のアメリカFOMCの声明で、実質的に今の超低金利政策が長期化することが示唆されると、NYダウは急反発し、17日は前日比288.00ドル高、18日も421.28ドル高となりました。

これを受けて日経平均も急反発し、18日は前日比390.32円高の17,210.05円で引けました。為替レートも1ドル=118円台を回復し、株高を後押ししました。前週は原油安で落とされましたが、今週はアメリカから豪快なクリスマスプレゼントがありました。19日も前場段階で前日比300円以上上げています。為替レートも1ドル=118円台後半に円安に戻りました。

この結果、トヨタ自動車筆頭に、富士重工業、マツダなどのセットメーカーからデンソーなどの自動車部品メーカーを含む自動車関連、村田製作所、日本電産など電子部品の円安メリット関連、任天堂、カプコンなどのグローバル展開するゲーム会社から、大成建設、大林組などの建設(リニア中央新幹線の着工というニュースもありました)、三菱地所、三井不動産などの不動産まで、輸出・グローバル関連から内需関連まで幅広く買われています。

原油安は続いており、影響はロシアの経済不安、中東情勢の険悪化に及んでおります。原油価格は先進国経済全体にとっては大きなメリットがありますが、新興国経済と先進国の資源産業にはダメージとなります。原油価格が急反発する見込みは少ないため、原油安の影響を注視する必要はあります。

ただし、アメリカの超低金利政策継続は朗報です。来年に向けて投資したいと思います。

グラフ1 日経平均株価:週足

2.中小型株も反発したが反発力は弱い、ひとまずは大型株優位の展開か

中小型株の各指標(東証マザーズ指数、日経ジャスダック平均、東証2部総合指数)も反発しました。ただし、反発力はそう強いものではありません。マザーズは高PER銘柄が売り込まれた反動で急反発した色彩が強いと思われ、今後の持続力には疑問があります。また、期待されていたにもかかわらず上場初日の動きがぱっとしなかったgumiのように、IPO銘柄の中で株価の動きが不調になるものが出てきました。当面は東証1部の大型株優位の展開が続くと思われます。特に、業績変化率に対してPERが高い割高株には注意が必要と思われます。

グラフ2 東証マザーズ指数:週足

グラフ3 日経ジャスダック平均:週足

グラフ4 東証2部総合指数:週足

3.特集:ゲーム株(ネイティブアプリゲーム):ミクシィは中国で羽ばたくか

今回はゲーム株の中でもネイティブアプリゲームについて分析します。

クリスマスシーズン入りしたネイティブアプリゲーム業界

家庭用ゲームもそうですが、ネイティブアプリゲーム、オンラインゲームにも年末需要があります。10-12月期は一年でもっともゲーム需要が盛り上がる時期です。

今年も様々な人気ゲームが出ています。トップを争うのはガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」とミクシィの「モンスターストライク(モンスト)」です。「モンスト」のほうが勢いがありますが、「ゴッドフェス」のようなイベント時の課金売上高の高さ、それを牽引するユーザー層の厚さでは、まだまだ「パズドラ」の優位が続いています。これに対してミクシィは着実に間合いを詰めているという構図です。

もっとも、イベントが多い12月は、「パズドラ」の優位が続いており、「モンスト」が「パズドラ」をはっきりと抜くにはまだ時間がかかりそうです。ミクシィの成長は10-12月期も続くと思われますが、ガンホーは10-12月期に売上高と営業利益の下落傾向が一旦止まる可能性もあります。

「パズドラ」「モンスト」の次に位置するゲーム群を見ると、ある程度ユーザーの評価が固まってきた様子が見えます。コロプラのゲームや「ディズニー:ツムツム」などのLINEゲームは、表1のように上位ランキングに各々数タイトルが入っています。コロプラの業績を見れば、ガンホー・オンライン・エンターテイメントやミクシィのように1タイトルの大ヒットのよる急成長はありませんが、安定的に成長していることがわかります。

コロプラ、LINEの次には、最近話題のマーベラスの「剣と魔法のログレス」、安定的に課金収入があるKLabの「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」などがランクインしています。

このように新たに上位に入ってくる会社とゲームタイトルがあり、現時点では大手(ガンホー・オンライン・エンターテイメント、ミクシィ、コロプラ、LINE)、準大手(マーベラス、KLab、スクウェア・エニックス、サイバーエージェントなど)に分かれてきました。

今後の焦点は、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズドラ」をミクシィの「モンスト」が抜く日がいつなのか、準大手クラスの中でより大きくなる会社が出てくるのか、あるいは、全くの新しい会社がこのランキングの中に入ってくるのか、などです。ネイティブアプリの世界は引き続き注目点の多い分野と言えます。

表1 アップストアのアプリ順位(日本のみ、全カテゴリー、2014年12月19日)

グラフ5 ネイティブアプリゲーム大手3社の売上高
(単位:百万円、四半期ベース、出所:会社資料より楽天証券作成)

グラフ6 ネイティブアプリゲーム大手3社の営業利益
(単位:百万円、四半期ベース、出所:会社資料より楽天証券作成)

表2 「モンスターストライク」が課金売上高ランキングで
1位になった日数

ゲームジャンルが多様化してきた

ネイティブアプリゲームの最近の傾向で重要なのは、ゲームジャンルが多様化してきたということです。ネイティブアプリゲームの世界で一般的なのは、「パズドラ」のようにパズルゲームに戦略的な要素を付け加えたゲームです。

一方で、2013年から2014年にかけて、家庭用ゲーム市場で流行っているジャンルがネイティブアプリの中に入ってきました。そのきっかけが、2013年12月に配信開始したマーベラスの「剣と魔法のログレス いにしえの女神」と、2014年7月配信開始の「白猫プロジェクト」(コロプラ)です。いずれもスマートフォンでは難しいと言われたRPG(ロールプレイングゲーム)です。特に、「白猫プロジェクト」は擬似コントローラーを画面内に作りこむことによって、スマートフォンでRPGをプレイする時の問題点だった操作性を向上させました。アップストアの課金ランキングの上位に「白猫プロジェクト」と「剣と魔法のログレス」がランクインしているということは、家庭用ゲームだけでなく、ネイティブアプリゲームの世界でもRPGへの関心が強いことを示しています。エイチームのような中堅もRPG「ユニゾンリーグ」を12月から配信開始しました。成果が注目されます。

RPG以外にも、アクション、シミュレーションなど様々なジャンルのゲームが多くなってきました。ただし、問題も浮かび上がっています。マーベラスは新作の「ディズニー マジックキャッスル・ドリームアイランド」(12月15日配信開始)の人気が高くユーザーが想定以上に多かったため、サーバー運用が不調で、12月19日時点で同タイトルはダウンロード停止になっています。ネイティブアプリゲームでは、ソフト開発だけでなくネットワーク運用が重要になります。このためゲーム会社は、企画開発と運用の両方に優れている必要があります。

このようにネイティブアプリゲームのゲームジャンルが多様化する中で、従来、パズルなどのカジュアルゲーム中心だったLINEが、他社への出資や合弁会社設立によってゲームジャンルの多様化に乗り出しています。12月18日に東証1部に上場したgumiは、2014年8月にLINEと資本業務提携をして、カジュアルゲームよりも少し濃い目のミッドコア層を狙ったゲームを開発している模様です。また、エイチーム、サイバーエージェントもLINEとの間で合弁会社を設立しています。いずれも、LINEゲームを開発しています。こちらの成果も注目されます。

ネイティブアプリゲームの海外展開

ネイティブアプリゲームの世界展開は、エイチーム、gumiなど少数の会社がやってきましたが、大きな成果を挙げたとは言えません。これは特に欧米市場のアクティブユーザーに対する課金率、課金ユーザー1人当たり課金額が日本に比べ低いためです。

しかし、東アジアのスマートフォンゲーム(ネイティブアプリゲームとブラウザゲーム)市場は、日本、中国を筆頭にかなり大きくなっています(グラフ7)。従ってネイティブアプリゲームが今後も成長するためには、アジア市場への進出が重要になってきました。

この中で、ミクシィが「モンスト」の中国版、「怪物弾珠」が、大手インターネット会社で大手ゲームパブリシャーの「テンセント」から12月11日に配信開始されました。中国のゲーム市場にあったゲームの作りこみとマーケティングをテンセントが行った成果が現れており、13~15日の3日間、中国のアップストアランキングで無料ダウンロード1位となりました。その後順位は下がっていますが、進出し始めなので今後の動きを観察したいと思います。

テンセントを通じては、ガンホー・オンライン・エンターテイメントも中国版「パズドラ」を2015年半ばにも配信開始する計画です。これも成果が注目されます。

なお、ミクシィの「モンスターストライク」の累計ダウンロード数は、12月17日に2,000万件を突破しました。11月29日に1,700万件を超えてから、約半月で300万件増えました。この中には中国での配信が含まれていますし、日本での各種イベントの成果もあると思われます。この累計ダウンロード数の増加分の中から新たな課金ユーザーが生まれることになるでしょう。今後の業績が注目されるところです。

グラフ7 東アジアのスマートフォンゲーム市場
(単位:億円、出所:CyberZ 2014年7月30日プレスリリースより楽天証券作成、
スマートフォンゲームにはネイティブアプリとブラウザゲームを含む)

表3 中国でのミクシィ順位(iOSのみ、ゲームカテゴリー)