1.2014年12月1日の週の相場概況:円安進行、年末ラリー始まる。

12月1日の週の株式市場は、上値を追う展開となりました。12月4日には年初来高値を更新しました。5日前場は軟化しましたが、なお高値を窺う動きが続く可能性があります。円安が進行し、12月2日に一時1ドル=119円台に入ったあと、12月3日からは119円台が定着し、4日は一時1ドル=120円台に入りました。また報道で衆議院選挙の自民党優勢が伝えられていることも、株価の強気材料になっていると思われます。

電機も、ソニー、パナソニックの民生用電機や、村田製作所、TDK、日本電産、NOKなどの電子部品メーカーが買われました。民生用電機メーカーは、生産拠点を広く海外に分散しているため、自動車ほど円安メリットは大きくありませんが、電子部品メーカーは重要部品を日本国内で生産する傾向が強いため、少なからず円安メリットが発生します。

任天堂も買われました。アメリカのクリスマス商戦好調を見込んだ動きに円安メリットを取ろうという動きが重なっていると思われます。

今回の円安は、アメリカ景気の好調を織り込んだ「ドル買い」の側面と、日本の大型金融緩和や日本国債格下げによる「円売り」の両方の側面があると思われます。それだけに根強い円安傾向が続くと思われ、自動車、電機中心に、また輸出・グローバル企業を中心とした大型株の流れは当面続くと思われます。前向きに投資したい局面と思われます。

グラフ1 日経平均株価:週足

2.中小型株はまちまちの動き

中小型株の各指標(東証マザーズ指数、日経ジャスダック平均、東証2部総合指数)は、今週はまちまちの動きになりました。マザーズは先週に続き下落基調ですが、これは割高感が出てきたためと思われます。ジャスダックも最近はPERが高い銘柄が多くなっています。また、マザーズ、ジャスダックともに、新規公開ラッシュであることも影響していると思われます。

一方で、東証2部指数は上昇傾向が持続しています。新興市場に比べPER、PBRが低い企業が多く、投資し易いことが背景にあると思われます。

円安メリットを受けるには、それなりの企業規模と海外展開が必要になります。そういう意味では、現在の相場は中小型株よりも大型株優勢になっています。ただし、中小型株には、製品・サービスや経営がユニークで業績がよく、PERが割安な銘柄もまだあります。そういった銘柄を発掘する機会ではあると思われます。

グラフ2 東証マザーズ指数:週足

グラフ3 日経ジャスダック平均:週足

グラフ4 東証2部総合指数:週足

グラフ5 東証各指数(2014年12月4日まで)を2012年11月14日を起点(=100)として指数化

3.銘柄コメント:CYBERDYNE(補足)

先週号でコメントしたCYBERDYNEについて、一部訂正事項があり、読者の皆様にご迷惑をお掛けしました。

ここでは補足として、同社の今回の資金調達によって、普通株式、B種類株式の発行済み株式が各々どのように変化するのかを見ておきます。

同社は、2種類株式を発行しております。東証マザーズに上場している普通株式(以下普通株)、非上場のB種類株式(以下B株)です。

今回の資金調達では、公募増資は普通株、新株予約権付社債の転換対象も普通株です。表1のように、今回の公募増資で普通株の発行済み株式数は12.5%増加します(普通株、B株の合計に対しては7.4%の増加)。新株予約権付社債が普通株に全額転換された場合は、普通株は9.5%増加します。合わせて公募増資と新株引受権付社債の全額転換が実現した場合は、普通株は22.0%増加します。

表1 CYBERDYNEの普通株式とB種類株式

4.銘柄コメント:ソニー

ソニーIR DAY開催

11月18、25日の両日、ソニーIR DAYが開催されました。

IR DAYでソニーが提示した各部門(ただし、モバイル・コミュニケーション、金融、その他とセグメント間消去を除く)の2018年3月期経営数値目標と2014年3月期セグメント別実績、2015年3月期会社見通しをまとめたものが表2です。今回提示された経営数値目標は、各部門で2018年3月期に概ね達成できるであろうと考えた数字と思われます。

まず冒頭に、平井社長は、ソニーの中核は、映画、音楽のエンタテインメント部門だと宣言しました。私自身は、重要な収益源であり、世界展開している重要部門である映画、音楽両部門をソニーが売却するはずがないと思っていましたが、やはりソニーが両部門を売却することはないようです。

一方で、映画、音楽部門には問題もあります。

映画部門は2013年3月期から2015年3月期までドルベースで減収が続く見通しです。ハリウッドメジャーには増収が続いている映画会社もあります。投資不足やマネジメントの問題がある可能性があります。ただし、現在は北米、欧州、日本の先進国が事業の中心ですが、インド、南米など新興国での足場も築きつつあります。2018年3月期に向けての見通しは比較的強いので、期待したいと思います。

音楽も2013年3月期から2015年3月期まで減収が続く見通しです。デジタル配信が普及した結果、アルバムが売れなくなり、デジタル配信もダウンロードからストリーミングへの変化が始まっています。2018年3月期に向けた見通しは、映画よりも弱いですが、音楽は最も身近な娯楽なので、今後の成長に注目したいと思います。

デバイスとゲームに注目したい

エレクトロニクスで好調が予想される部門は、デバイスです。デバイスはイメージセンサーと電池に集中する方針です。特にイメージセンサーは競争力が高く、スマートフォン大手だけでなく、成長著しい中国メーカーにも納入している模様です。利益率もソニーとしては高く、有望部門です。

ゲーム&ネットワークサービスも高い伸びが期待できそうです。プレイステーション4の好調の効果と、ソニーが現在進めている、ネットワーク上でゲームだけでなく、映画、ドラマ、音楽などのコンテンツを楽しめる、それもスマートフォンでも楽しめるシステムの効果が期待されます。ゲーム部門はうまく事業展開出来たときの利益の伸びが大きい部門です。

ホームエンタテインメント&サウンドは、営業利益率が低い状態が続きそうですが、黒字は維持する見通しになっています。数量を追わない経営になって黒字転換しました。4Kテレビの販売増加が続きそうです。4Kテレビのような高性能テレビは、黒字ならば続けたほうが良い事業だと思われます。テレビが変わることによって映像(映画、ドラマ)の作り方が変わることがあり得ると思われます。近い将来、映画、音楽とデジタルAV機器の両方、コンテンツとハードの両方を持っているソニーの真価が発揮されることがあるかもしれません。

一方で、イメージング・プロダクツ&ソリューションは、カメラの数量減少に対して高級化路線による単価上昇がなかなか追いつかない状況が予想されます。

また、今回のIR DAYでは、モバイル・コミュニケーションの2018年3月期見通しは示されませんでした。モバイル・コミュニケーションは、地域別に見ると日本でのみ黒字です。高級品に特化すれば生き残ることが出来ると思われます。スマートフォンはこれからも進化が続きます。映像、音楽、ゲームなどのエンタテインメントマシンとしての重要性も増していくと思われます。出来れば続けたほうが良い事業と思われます。

ソニーに注目したい

会社側から提示されたゲーム&ネットワークサービス、イメージング・プロダクツ&ソリューション、ホームエンタテインメント&サウンド、デバイス、映画、音楽の営業利益を合計すると(表2)、2015年3月期会社見通し2,720億円に対して、2018年3月期は3,931~5,397億円に拡大する見通しです。

もちろん、やってみないとわからないことは多いと思われますが、ソニーのこれまでの赤字は、事業部門の赤字と固定資産の減損が重なって大きくなっていったものです。各部門の赤字が止まれば、4,000億円前後以上の営業利益が2018年3月期に出る可能性は十分あると思われます。

また為替感応度は、対ドルでは1ドル1円の円安で営業利益は30億円目減りしますが、対ユーロでは同じく60億円上乗せになります。今の為替レートならば円安メリットが発生します。

ソニーへの投資を前向きに考えてみたいと思います。

表2 ソニーの経営数値目標