(1)2014年10月27日の週の相場概況:日経平均株価は反騰、高値を奪回する勢い。

10月27日の週の株式市場は、前週以上に勢いよく上昇する展開となりました。日経平均株価は前週に200日移動平均線を上回ったのに続き、今週は75日移動平均線、25日移動平均線を抜きました。そして、30日には15,600円台、31日前場は15,900円台まで上昇しています。

日経平均株価の上昇要因は、7-9月期の好決算を背景としたNYダウの上昇と円安です。アルコア、アップル、フェイスブックなどの好業績に刺激されて、NYダウは10月15日のザラ場15,800ドル台を底として10月28日には17,000ドル台、30日には17,100ドル台まで回復し、高値面あわせのところまで来ました。

また、為替相場が円安方向に傾いており、10月29日にFOMCが今月で量的金融緩和策を終了すると声明を出すと、10月30日午後には一時1ドル=109円台になり、31日は109円台の動きとなっています。

NYダウ高、円安に加えて、日本企業の2015年3月期2Q決算も、全て良好とは行かないまでも、底堅い状況が確認できつつあり、日経平均の上昇要因と言ってよいと思われます。円安が大手製造業中心に基本的にはメリットになることが改めて確認できたと考えられます。

日経平均の上昇ピッチが急なので、決算が発表されるにしたがって一服する可能性もありますが、このまま年末に向けてラリーとなる可能性もあります。決算を吟味しつつ、銘柄を選んで投資したいと思います。特に、自動車、電機の好決算組、ゲーム(ネイティブアプリだけでなく家庭用ゲームも)、建設、建設関連セクターなどに注目したいと思います。

グラフ1 日経平均株価:週足

(2)中小型株は引き続き上昇トレンド持続。

中小型株の各指標(東証マザーズ指数、日経ジャスダック平均、東証2部総合指数)の反発は、日経平均株価に比べ小幅に止まっています。これは、中小型株は日経平均ほど大きな調整がなかったこと、11月に入ってから決算発表がある企業が多く、中小型株特有ですが、個別企業の要因で業績が変動することが多いことから、決算を確認したいという投資家が多いためと思われます。

もっとも、中小型株は内需株が多く、経営者の采配に間違いがなければ(これが最も重要ですが)、順調な成長が期待できる企業が少なからずあると思われます。銘柄にもよりますが、前向きに決算を見たいと思います。チャートは、東証マザーズ指数は大きな三角保ち合い、日経ジャスダック平均、東証2部総合指数は上昇トレンド維持です。大型株同様前向きに銘柄を探したいと思います。

グラフ2 東証マザーズ指数:週足

グラフ3 日経ジャスダック平均:週足

グラフ4 東証2部総合指数:週足

(3)決算コメント

ガンホー・オンライン・エンターテイメントとミクシィ

ガンホー・オンライン・エンターテイメントの2014年12月期3Q(7-9月期)は、前年比、前期比(2Q比)ともに減収、減益となりました。「パズル&ドラゴンズ」のダウンロード数は9月までに3,100万ダウンロードに緩やかに増加し、MAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー数)は高位安定していますが、MAUに対する課金率がほぼ1年にわたって緩やかに低下しており、これが売上高の減少に結びつきました。「パズドラ」で遊ぶ人は多いのですが、課金するまでのことはないと思う人が増えたということです。遂に「パズドラ」が飽きられ始めたということでしょう。

「パズドラ」のような超大型ソフトが飽きられ始めたとなると、これの再活性化は極めて難しいと思われます。家庭用ゲームのようなパッケージゲームの場合、1~2年ごとに新たに企画、開発をやり直してシリーズもののソフトを作り、長期間のブームを作ることは可能ですが(任天堂の「マリオ」「ポケモン」の各シリーズや、カプコンの「モンスターハンター」「バイオハザード」の各シリーズなど)、継続してユーザーが遊ぶネイティブアプリゲームで、一度下向きになったゲームが再活性化できるかどうか不透明です。

会社側は「パズドラ」の中国版を来年投入する方針で、全くの新タイトルも計画しています。「パズドラ」の下向きトレンドが確認されたことで、新作を投入し易くなったと言えます。しかし、これは家庭用ゲームでの経験ですが、大作の後に大作を連発するのは至難の技であり、また、海外展開も同様です。ガンホー・オンライン・エンターテイメントの業績は当面下向きトレンドが続くと考えざるを得ないと思われます。

「パズドラ」の下方トレンドは、今後下向き角度が急になる可能性もあります。表1はミクシィの「モンスターストライク」がアップストア、グーグルプレイの課金売上高ランキングで1位になった日数を月毎に数えたものです。ランキング1位の日が9、10月と急増していること、特に10月はほぼ半分の日が1位であることがわかります。

ガンホー・オンライン・エンターテイメントの2014年12月期3Qの決算説明会資料によれば、ガンホー・オンライン・エンターテイメント単独の10月売上高は130億円の見込みで、これは9月よりも増える見通しです。この約90%が「パズドラ」と推定されます(約117億円)。10月の課金ランキング1位の日数が「モンスト」、「パズドラ」がほぼ拮抗していることから、ミクシィの「モンスト」の10月売上高を「パズドラ」の90~95%程度と仮定すると、月間約110億円と推定できます。「モンスト」には勢いがありますので、10月から来年3月までの6カ月間に月110億円×6カ月+α=700~800億円程度の売上高が期待できる可能性があるのです。営業利益率を約40%とすると下期営業利益は約280~320億円となります。

10月29日付け日経は、ミクシィの4-9月期売上高を会社予想を20億円上回る約350億円、営業利益は同じく10億円上回る140億円前後になった模様と報じています。その通りなら、2015年3月期通期は売上高1,050~1,150億円程度、営業利益420~460億円となります。税率を約40%とすると当期純利益は約250~280億円、10月30日の時価総額4,809億円から今期予想PERは約17~19倍となります。「モンスト」の勢いが続くと、来期も50%以上の増益になる可能性があります。そうであれば、PER17~19倍は明らかに割安と思われるのです。

ガンホー・オンライン・エンターテイメントの株価には当面期待できそうにありませんが、業績を予想するとミクシィはそうではないと思われます。11月7日(金)のミクシィの決算発表に注目したいと思います。

表1 「モンスターストライク」が
課金売上高ランキングで1位になった日数

グラフ5 ガンホー・オンライン・エンターテイメントの四半期業績推移
(単位:百万円、%、出所:会社予想より楽天証券作成)

グラフ6 ミクシィの四半期業績推移
(単位:百万円、%、出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券)

任天堂

任天堂の2015年3月期2Q(7-9月期)は、売上高967億300万円(前年比15.9%減)、営業利益92億5,400万円(前年同期は183億5,300万円の赤字)、経常利益321億6,100万円(同135億6,900万円の赤字)、当期純利益242億2,400万円(同80億2,400万円の赤字)となりました。日本で9月13日発売、欧米で10月3日発売(出荷は9月)の3DS用ソフト「大乱闘スマッシュブラザーズ」が全世界322万本出荷のヒットとなったことが寄与しました。2Qとしては久しぶりの営業黒字となりました。

また、営業外損益で為替差益206億3,200万円が計上されました。これは主に手持ちの外貨建て金融資産と営業債権の評価益です。

下期は日本とアメリカで11月21日、欧州で11月28日発売予定の「ポケットモンスター オメガルビー」「同アルファサファイア」(3DS用)、「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U」(Wii U用、日本で12月6日、アメリカで11月21日、欧州で12月5日発売予定)が期待されます。

特に「ポケットモンスター オメガルビー」「同アルファサファイア」(3DS用)は2002年に発売されたゲームボーイアドバンス用のリメイク版ですが、前人気が高く、全世界で500万本以上の売上高になる可能性があります。「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U」は相変わらずハードが盛り上がらないWii U用ですので未知数ですが、「ポケモン」とその他のソフトで3Qは営業利益200~300億円以上が可能と思われます。そのため、通期会社予想営業利益400億円は、達成の可能性が出てきました。

来期を見ると、3DSのハード市場が既に下降局面に入っており、また、率直なところWii Uには期待できそうにないと思われるため、黒字が定着したとしても大きな利益は期待できないと思われます。また、高性能センサーを使った「睡眠」関連の新事業も、当たると面白そうですが未知数です。

ただし、営業黒字が続くならば、3DSの次(携帯型次世代機)の投入が比較的早期に実現する可能性が出てきます。3DS用ソフトの新作が順調に売れるならば、ユーザーが次の新ハードとそれ用のソフトを欲しがるようになるためです。同じ理屈でWii Uは今の様に停滞した状態では、次世代機は出しづらいのです。現行機が大した盛り上がりもないままで次世代機を出してしまうと、次世代機を買ってくれるお客が少なくなってしまうのです(任天堂はそう考えています)。そのため、Wii Uで一定の成果を出すことが、Wii Uの次を出す条件となりそうです。携帯型ゲーム機の次世代機に対して据置型ゲーム機の次世代機は遅れる可能性があります。

ガンホー・オンライン・エンターテイメントの業績を見てわかってきたことですが、ネイティブアプリゲームにはネイティブアプリゲームの問題点が、家庭用ゲームには家庭用ゲームの長所があります。同じシリーズでも全くの新作を売り切り型モデルで販売する家庭用ゲームは、世界的なヒットが生まれ、それが長期間にわたってシリーズ化できる場合がありますが、ネイティブアプリゲームでそれができるかどうか、特に日本の会社の場合、どの会社もやったことがないため未知数です。

当面の業績には波があると思われますが、足元ではDS市場がほぼなくなり、Wii市場が急減する中で、3DSが高水準横ばいとなっています。3DS用ソフトのヒットとWii U用ソフトが多少なりとも売れれば、それが全体の業績に直接寄与するようになっています。

世界のゲーム市場で、日米欧で通用する大作ソフトを毎年継続的に発売することが出来る会社は、実は任天堂だけです。マイクロソフトなどの欧米企業のソフトは日本でヒットせず、日本のゲーム会社のソフトは日本でヒットしても欧米でヒットする作品はわずかであり、しかも毎年継続的に開発することが出来ていません。ソニーは世界展開はしていますが、1タイトル数百万本売れる大作が出なくなりました。

営業黒字が定着すれば、長い目で任天堂に注目できるようになると思われます。

グラフ7 任天堂の四半期業績推移(単位:百万円、出所:会社資料より楽天証券作成)

グラフ8 任天堂の機種別ソフト販売本数
(単位:万本、出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券)

建設各社(鹿島建設、西松建設、安藤・間)

建設では、10月28日付けで鹿島建設が2015年3月期上期見通しを下方修正しました。理由は、国内で3年前に受注した不採算案件の損失処理です。労務費、資材費の上昇、工程の遅れなどで赤字になった案件が出ました。

ただし、通期見通しを見ると(表2)、下期は上方修正となっています。国内土木が好調で、利益率が上昇しています。鹿島建設は、大成建設、大林組に比べ過去に国内で受注した不採算案件の損失処理が遅れていること、海外工事の赤字の処理が不透明なことから業績不安を抱えていましたが、下期見通しの上方修正を見ると、他の大手ゼネコン同様基調は強いと思われます。もっとも、下期も損失処理の可能性がないとは言えません。震災前後に受注した不採算案件がまだ残っているようなので、注意は必要です。

準大手建設会社でも、10月29日付けで西松建設が上期営業利益を前回予想の32億円から62億円に(前上期は9億3,700万円の黒字)に、安藤・間が同じく37億円から71億円(同38億1,300万円の黒字)に上方修正しました。建設業界の広い範囲で不採算案件の完工が進み、昨年秋以降受注した採算の良い案件の計上(進行基準)によって損益が急速に改善しているのです。各社の通期見通しは2Q決算発表時に上方修正される可能性が高いと思われます。

業績の上方修正とその中身をみると、建設セクターは重要な投資対象であると思われます。

表2 建設大手の営業利益