(1)2014年10月20日の週の相場概況:日経平均株価は反発、200日移動平均線を上回った。

10月20日の週の株式市場は、前週までの大幅下落から一転して反発し、一時15,300円台まで回復しました。底値固めの段階に入った模様です。

日経平均株価は前週10月17日に14,500円台まで下落しました。9月26日のザラ場高値16,374.14円から10月17日のザラ場安値14,529.03円まで、3週間で1,845.11円、11.3%下落しました。10月14日には200日移動平均線を割っています。

しかしその後は、前週末以降欧州株式とNYダウが反発したことを受けて日経平均も戻りに入りました。10月20日は前日比578.72円高の15,111.23円を付け、今年最大の上げ幅となり15,100円台を回復しました。その後騰落を繰り返しながらも堅調に戻っており、現在は15,000円台にある200日移動平均線を上回っています。24日は23日のNYダウが再び大幅高したことを受け上昇しており、前場に一時15,300円台にまで上昇しました。一時1ドル=105円台に入った為替レートも、24日に一時1ドル=108円台に戻り、108円を挟んだ動きとなっています。

今回の下落は欧州景気の悪化、中国景気の鈍化にアメリカ景気への不安が台頭して起こったものです。日本では、消費税増税後の反動が長引いており、円安で不利益を受ける勢力中心に円安に対する懐疑的な意見も聞かれるようになりました。2015年10月の消費税率の再度の引き上げに対しても、慎重な意見が聞かれるようになりました。

このようなもやもやした環境の中でも、日経平均の今回の下落は、現時点では、前回の下落、2014年1~5月に比べて、下落率、下落幅ともに軽微に済んでいます(前回は12月30日ザラ場高値16,320.22円から4月11日ザラ場安値13,885.11円まで、2,435.11円、14.9%の下落)。

もちろん、このまま戻るかどうか、まだ予断を許さない面はあります。特に、昨今の政治的な問題、不祥事には根深いものがあり、これが既に揺らぎ始めているように見える現政権の為替レートに対する態度や消費税率再引き上げに対する態度を変更させることになれば、これが金融市場、株式市場に予期せぬ変動をもたらす可能性も検討しなければなりません。政治的問題は数値化できないため、株価上の難問なのです。

一方で、20日の週から2015年3月期2Q決算が始まっています。株価にはこれをマクロの経済変動と絡めて見る考え方と、企業を売買する際の価格であるという考え方と、二通りあると思いますが、私は後者の考え方の比重が大きいものです。その立場からは決算を注意深く観察したいと思います。後述しますが、今週でた安川電機、日本電産とも良好な決算内容でした。

決算を前にした業績見通しの修正も出ています。大林組、日立製作所、オリエンタルランド、三菱自動車工業などが上期(1-2Q累計)決算の見通しを大幅上方修正しています。また、トヨタ自動車、富士重工業、マツダなどの北米比率が高く円安メリットを受け易い自動車メーカーの業績好調も報道されています(24日付け日経)。一方で、タカタ製エアバッグの不具合による自動車メーカー各社のリコールや本田技研工業の新型フィットのリコールが続いています。業種、会社によって業績がまちまちになる可能性があり、注意が必要でしょう。

グラフ1 日経平均株価:週足

(2)中小型株も反発、上昇トレンド持続か。

中小型株の各指標(東証マザーズ指数、日経ジャスダック平均、東証2部総合指数)も、反発しました。

マザーズ指数は、チャートを見ると大きな三角保ち合いの途上であるように見えます。一方で、日経ジャスダック平均、東証2部総合指数は、中期的な上昇トレンドは崩れていないと思われます。

これは、時価総額1兆円以下の中小型株の場合、グローバルに展開する輸出・グローバル企業よりも、主に日本国内で事業展開している内需型企業が多く、そのため、為替レートや世界景気の影響を受けにくいという事情があると思われます。また、経営者の采配、意欲、経営戦略次第で大きな成長を獲得する企業も出てきます。例えば、ゲーム、インターネット、情報通信、ロボット、建設関連などの中小型株は内需企業が多数です。

例えば、今回の反発局面でも、ゲーム株の動きがよくなっています。ミクシィのチャートを見ると三角保ち合いから上放たれようとしています。アップストアの課金売上高ランキングで1位の日が多くなっています。また、10月23日からアメリカで「モンスターストライク」の配信を開始しました。

株価が調整している現在は、決算を見ながら有望な投資先を探すチャンスです。時価総額1兆円以上の大型株と同様、中小型株も決算に注目したいと思います。

グラフ2 東証マザーズ指数:週足

グラフ3 日経ジャスダック平均:週足

グラフ4 東証2部総合指数:週足

グラフ5 東証各指数(2014年10月23日まで)を2012年11月14日を起点(=100)として指数化

(3)決算コメント:安川電機、日本電産

今週から決算についてコメントします。

安川電機

工作機械や一般産業機械に使われるサーボモータや自動車向けロボットの大手です。設備投資関連です。2015年3月期1-2Q累計(上期)は、9.5%増収、18.1%営業増益でした。地域別売上高を見ると、国内向けは前年比1.1%増にとどまり、欧州向けは販売力が弱いこともあって7.7%増でしたが、中国向けは23.9%増、中国を除くアジア向けは16.7%増、米州向けは10.1%増でした。特に中国とアメリカの自動車産業向けが好調です。中国の自動車産業向けは活況が続いており、10月のアメリカでの受注は過去最高になりそうです。

事業の好調と円安メリットにより、会社側は通期業績見通しを上方修正しました。営業利益は期初予想の275億円(前年比7.0%増)から300億円(同16.7%増)に上方修正されました。半導体、液晶向け設備投資関連が一服しているため、利益の伸びは大きくはありませんが、自動車向け中心に堅調な利益成長です。予想PERは14.5倍(10月23日終値ベース)です。中長期投資に向く銘柄と思われます。

日本電産

上期は13.9%増収、33.9%営業増益でした。営業利益は1Q 255億円(前年比41.6%増)、2Q 271億円(同27.4%増)です。1Qに比べ前年比は鈍化しましたが、1Q、2Qと営業利益は増えており、順調に利益成長しています。精密小型モータ(HDD用スピンドルモータとOA、家電、自動車、PC向けなどの小型モータ)が緩やかながら伸びが続いており、これに加えて車載、家電、商業、産業用モータが急成長しています。また、電子・光学部品も不振のカメラ向けから成長セクターである自動車向けへ転換が成功しつつあります。

今回の決算では、通期見通しは上方修正しませんでした。通期営業利益見通しは1,050億円(前年比23.4%増)です。理由はマクロ環境を見定めたいということでしたが、2Qに特に悪いところも見当たらないため、通期1,100億円前後の営業利益になる可能性があります。

会社予想ベースでの予想PERは27倍なので低くはありません。ただし、自動車の自動運転向けへ積極姿勢を見せており、20%台の利益成長が今後も続くと思われます。中長期的な投資妙味があると思われます。

(4)特集:建設業界

活況続く建設業界

建設業界の活況が続いています。今回の建設業界好調の要因は以下のとおりです。

  • 東京の大型再開発
  • 東北の復興
  • 2020年オリンピック・パラリンピック
  • 整備新幹線(北陸新幹線に続き、北海道新幹線、九州新幹線長崎ルート)
  • リニア中央新幹線(2015年春着工へ、2027年品川-名古屋間開業)
  • 異常気象に対応するための地方の土木工事など。

上記6つのどれをとってもビッグプロジェクトばかりですが、これらが、短いもので2~3年後(整備新幹線)、長いもので2020年を超えてからも続くことになります(リニア中央新幹線)。更にこれらのプロジェクトが、各々独立して完結するのではなく、地価上昇を通じて新たな再開発プロジェクトなどの建設需要を生み出し始めていることにも注意したいと思います。

例えば、整備新幹線です。整備新幹線の駅が決まった市町村では、地価と家賃が既に上昇しているか、上昇し始めています。地価と家賃の上昇はマンション建設、ホテル建設などの建設需要を呼び起こします。東京と地方との価格差に注目した投資家の不動産需要も出ているようです。東京中心だった地価の上昇が整備新幹線を通じて地方に拡散され始めているとも言えます。このように、建設需要の増加が地価上昇を引き起こし、更に新しい建設需要を生み出すという好循環が始まっています。

また、最近頻発している大型台風や集中豪雨による被害を防ぐための土木工事も、今後全国的に増えると思われます。特に、東京オリンピックに向けて外国人観光客の増加が期待されますが、インフラ面での安全性を確保することは非常に重要になります。

グラフ6 建設受注:前年比 (出所:建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)
季節変動調整済より楽天証券作成)

リスクは人手不足、資材価格上昇、財源

リスクもあります。第一に人手不足です。これは、足元では少し一服しています。今年の3月から5~6月にかけて、2年以上前に受注した不採算案件の多くが完工しました。昨年秋からは大手ゼネンコンが選別受注に入っているため、今建設中の案件は採算が多いものが多くなっていますが、不採算案件が減少したことにより、建設中の工事は一時的に減少している模様です。グラフ6の建設受注前年比、グラフ7の土木・建設機械のレンタル売上高の伸びが鈍化しているのは、このような工事の端境期が今期の上期にあったためと思われます。これが労務費の上昇を鈍化させていると思われます。

しかし今後は、東京を中心とした大都市圏での再開発の増加、オリンピック関連施設の着工、リニア中央新幹線の着工、東北の中間貯蔵施設、高台移転、各種インフラ工事、地方の災害対策など、再び工事が増加していくと思われます。このため人手不足が続くと思われますが、これは、賃金が上昇して他産業からの労働力の移転が進むまで解消しないと思われます。

資材価格の上昇もありますが、人件費とともに、工事価格に転嫁するしか解決策はありません。ゼネコンから中堅まで建設会社は、価格転嫁が出来ない工事は受注しない、というより赤字になるので受注出来ない状況です。従って、これから工事が進む案件は、採算がまともかそれ以上の案件になります。これは建設会社の業績を大きく改善させる要因です。

最後のリスクは公共投資の財源です。公共投資には批判もありますが、民間投資の刺激材料となっていることは否めません。災害対策の様に人命や経済活動に直接かかわるものもあります。またリニア中央新幹線は、工事が難航し予算(5兆5,235億円)を超過する可能性が発生すると公費投入の可能性もでてきます。消費税は直接公共投資に使われるわけではありませんが、国の財源が増えるに越したことはありません。逆に2015年10月に予定されている消費税再増税の延期や中止は、金融市場、株式市場と建設市場に思わぬ動揺を来たしかねないため、注意が必要です。

建設会社の好業績続く

大手建設会社の決算発表は、11月10日に清水建設、11月11日に大成建設、大林組、鹿島建設の予定です。既に10月21日に大林組が24日に大成建設が上期業績見通しの上方修正を発表しましたが、各社ともに好業績が予想されます。2015年3月期通期見通しも各社ともに上方修正される可能性が高いと思われます。表1を見ると、今期1Qは前年同期に不動産開発の利益が多く計上された大成建設を除き大幅増益になっています。大成建設も減益幅が大幅に縮小する見通しです。21日の大林組の業績修正を見ると、1Qのトレンドが継続していると思われます。

建設需要の好調は長期化する可能性があり、当面の受注のピークが2018年ごろ、完工(売上高)のピークが2020年ごろになると予想されます。また、リニア中央新幹線の完成が2,027円ですので、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが終わった後も、建設需要は急減せず、一定の規模を保つ可能性もあります。大手の大成建設、大林組、鹿島建設、清水建設、準大手の熊谷組、西松建設、安藤・間などに中長期的な投資妙味があると思われます。

表1 建設大手の営業利益

グラフ7 土木・建設機械レンタル売上高:月次
(単位:百万円、%、出所:特定サービス産業動態調査より楽天証券作成)

建機レンタル会社にも注目したい

建設業界の裾野は広く、大手から中堅中小までのゼネコン、道路舗装、補修など各種専門業者、建機メーカー、建設機械のレンタル会社などがあります。中でも建設機械のレンタル会社は重要です。日本の建設会社は、季節毎の工事の繁閑によるリスクを軽減するために、建設機械の多くをレンタルします。建機レンタル会社は、独立系、建機メーカー系など様々ですが、大手は、アクティオ(未上場、全国シェア1位7.9%)、カナモト(2位4.8%)、西尾レントオール(3位4.4%)、4位ニッケン(未上場、4位4.3%)などです。全国展開している大手は、財務内容もよく、機材調達力も大きく、成長性が高いです。

上場している大手建機レンタル会社は、北海道を地盤とするカナモト、関西を地盤とする西尾レントオールなどです。もともとは、関西から中部、関東へと進出してきた西尾レントオールの事業規模がカナモトのそれよりも大きかったのですが、ここ数年は東日本大震災の復興需要を獲得したカナモトが西尾レントオール以上に急成長してきました。

今後の展開を考えると、東北の復興需要だけでなく、首都圏、中部から全国にわたって旺盛な建機需要があると思われます。

カナモトが地盤とする北海道は、11月から翌年の4月まで雪で工事がほとんどできなくなるため、経営効率が問題でしたが、復興需要がそれを埋めました(グラフ8)。同社は2015年10月期から東京での展開を積極化させます。雪の制約のない地域での事業を拡大させる「南下政策」は、カナモトの業績を一段と押し上げる可能性があるため注目されます。

西尾レントオールも、今後はリニア中央新幹線の工事が始まり再開発も多い関東、中部への事業展開を積極化させる方針です。

このように、カナモト、西尾レントオールともに順調な利益成長が予想されます。PERを見ると、カナモトが17~18倍、西尾レントオールが12~13倍と低いことも魅力です。

グラフ8 カナモトの業績推移(単位::百万円、%、出所:会社資料より楽天証券作成、会予は会社予想)

グラフ9 西尾レントオールの業績推移
(単位:百万円、%、出所:会社資料より楽天証券作成、会予は会社予想)