(1)2014年9月22日の週の相場概況:ドル高円安傾向持続で日経平均は25日に昨年来高値を更新。

9月22日の週の株式市場は、前週に続き大型株中心に活況となりました。

ドル円レートは、8月中旬から、ほぼ一本調子に1ドル=102円台だったものが、1ドル=109円台に円安となりました。ユーロ円レートはドル円ほどではないものの、これも円安になりました。

この円安に伴い、自動車、電機中心に輸出・グローバル関連セクターが上昇しました。例えば、輸出関連、円安メリット株の筆頭と言えるトヨタ自動車は、8月29日終値5,928円から9月25日終値6,550円まで、10.5%上昇しました。時価総額22兆円の超大型株としては、比較的大きな上昇率と言えます。また、これも円安メリットが大きい富士重工業も、同じく2,955.5円から3,554.5円まで20.3%上昇。マツダも2,454円から2,796円へ13.9%上昇しました。富士重工業、マツダともに新車投入が続いており、これが来期2016年3月期にも寄与すると思われます。

富士重工業の新車については、先週の本稿で指摘したように、国内の「レヴォーグ」、北米の「レガシィ」の寄与の期待できそうです。マツダの場合は、9月26日発売の新型「デミオ」の1.5ℓディーゼルSKYACTIVの人気が高く、価格も比較的高く設定されていることから、業績への寄与が注目されます。また、今期は「デミオ」の新車のほかにデミオベースの小型SUVが計画されているほか、来期2016年3月期には、「ロードスター」の新車、北米で販売している大型SUV「CX-9」の後継車種、アジア向けの地域限定車種が計画されている模様です。特にCX-9の後継車である大型SUVは、北米での利益増加に寄与すると思われます。

北米で車が売れているトヨタ自動車、富士重工業、マツダだけでなく、北米がぱっとしない本田技研工業も3,513.0円から3,816.5円へ8.7%上昇、北米の伸びは高いもののインセンティブ(販売奨励金)も高い日産自動車も999円から1,088円へ8.9%上昇しました。本田技研工業は、2011年春に北米で発売したシビックの新車が良い評価を得られず、それが北米で十分伸びない要因になっていました。しかし、2016年3月期上期にもシビックのフルモデルチェンジを行うと思われます。これが成功すれば、本田技研工業の株式市場での評価が良い方向に変わる可能性があります。足元では8月中旬に北米で発売したミドルサイズセダンの「TLX」(アキュラブランド)が順調な滑り出しです。

この他のセクターでは、22日の週の動きですが、民生用電機のソニー、パナソニック、スマートフォン関連の電子部品メーカーで、村田製作所、TDK、ヒロセ電機、アルプス電気など、自動車部品でデンソー、日本電産など、プラント関連で、日揮、千代田化工建設、総合商社で三菱商事、三井物産、丸紅などが上昇しました。いずれも円安メリットが見込まれるセクター、銘柄群ですが、同時に電子部品は「iPhone6」の寄与や自動車向け拡大の寄与が予想されます。プラントや総合商社も円安が業績拡大に寄与するセクターです。

内需関連でも、大成建設、大林組などの建設株が上昇しました。輸出グローバル関連だけに偏らない相場展開であり、バランスの取れた動きです。

9月26日は、前日のNYダウの大幅下落とやや円高になったことによって、日経平均は下落していますが、前場段階では戻しつつあります。日経平均の週足を見ると、更に上値を追いそうな動きです。銘柄を探して投資したい相場と思われます。

グラフ1 日経平均株価:週足

(2)中小型株は引き続きまちまち。ロボット株が上昇しLINE関連が下落した。

一方で、中小型株は先週に続きまちまちの展開でした。指数を見ると、日経ジャスダック平均と東証2部総合指数が、日経平均同様9月25日に昨年来高値を更新しました。一方で、東証マザーズ指数は上値を抑えられたままもたついています。

この状況の中で、9月22日引け後にLINEの年内上場見送りが報じられました。これを受けて、24日はLINE関連株が売られることになりました。ゲームでは、ミクシィ、エイチームをはじめゲーム株の多くが下落しました。広告、電子書籍ではアドウェイズ、メディアドゥが下落しました。ただし、25日になると、LINE上場がなくなったわけではなく、あくまでも延期であることと、LINE関連の各銘柄のファンダメンタルズやPERの違いに着目して買いなおす動きもありました。ミクシィは25日も一時売られましたが、引けには急速に戻し、26日には上昇しています。LINE関連でないにもかかわらず連れ安していたコロプラも、上昇しています。

また、ゲーム以外のエンタテインメント関連で、(東証1部上場も含めて)、アミューズ、オリエンタルランド、ドワンゴなどを物色する動きがありました。

これら以外のテーマでは、25日にCYBERDYNEが証券会社のレポートを材料にストップ高となり、菊池製作所も大幅高となりました。

このように、市場を問わず、大型、中小型を問わず物色意欲が旺盛な市場と言えます。前向きに株式市場に向き合いたい相場であると思われます。

グラフ2 東証マザーズ指数:週足

グラフ3 日経ジャスダック平均:週足

グラフ4 東証2部総合指数:週足

グラフ5 東証各指数(2014年9月25日まで)を2012年11月14日を起点(=100)として指数化

(3)特集:スマートフォン関連

「iPhone6」シリーズ、9月19日に発売

今回の特集は「スマートフォン関連」です。9月19日に発売されたアップルの「iPhone6」「iPhone6Plus」がスマートフォン市場に与える影響を考えてみたいと思います。

「iPhone6」シリーズ(画面サイズ4.7インチの「6」と5.5インチの「6プラス」の2種類がある。これまでの「5s」までは4インチ)は、9月10日発表、12日から予約開始され、19日に発売されました。発売地域はアメリカ、カナダ、ドイツ、イギリス、フランス、日本、香港、シンガポールの9カ国で先行発売され、その後年末までに115カ国で発売されます。

予約数は予約受付開始後24時間で400万台を超え、19日の発売後3日間で販売台数は1,000万台を超えました(アップルの発表による)。2013年9月20日発売の「5s」「5c」の発売後3日間の販売台数が900万台超でしたので、過去最高となりました。

日本でも好きな色、ストレージ容量(16GB、64GB、128GB)をそのまま入手するのは困難な状況で、大半のタイプが多くの店舗で入荷待ちの状況です。特に、「6Plus」は5.5インチ液晶パネルの歩留まりが50~60%と言われており、店舗への入荷ペースが「6」に比べゆっくりしたものになっている模様です。

「iPhone6」シリーズの評価は様々だが、売れている

先代の「5s」「5c」までの4インチディスプレーに比べ、4.7インチ、5.5インチは明らかに大きくなっています。使う人の体格や手の大きさにもよると思われますが、4.7インチは「5」シリーズまでの4インチに比べ使いやすいという感じはします。ただし、日本では女性にとって画面の大型化は使いにくいという意見があります。

また、5.5インチの「6Plus」は大型ですが、タブレットPCや、10~12インチのモバイルPCを代替する可能性があります。店舗への入荷がゆっくりしているせいもありますが、人気が高いようです。

仕様を見ると、CPUはより一層強力になり、電池容量も大きくなっており、3Gの連続通話時間は「6」が最大14時間、「6Plus」が最大24時間です(「5s」は最大10時間)です。ストレージも最大128GBになっていますので、用途にもよりますが、パソコンやタブレットの代わりにも耐えるものになっています。

また、NFC(近距離無線通信)を使った決済サービスが使えるようになります。いわゆる「お財布ケータイ」です。これも注目点の一つです。

今のスマートフォンは、ゲームをプレイする、あるいは音楽、映画・ドラマを視聴するための「エンタテインメント端末」、特に「携帯用ゲーム機」としての機能が重視されるようになっています。この傾向は今後弱まることはないと思われますが、「6」シリーズの描画能力は「プレイステーション3」並みという評価があります。いよいよスマートフォンも高性能ゲーム機並みの能力を持つことになってきたわけであり、これはゲームをはじめとしたコンテンツ市場の拡大と高度化に中長期的に寄与すると思われます。

「6」シリーズは発売されたばかりですので、様々な意見が出ていますが、足元では各国ともによく売れているようです。2014年10-12月期のiPhone出荷台数は過去最高を更新し6,000万台を超える可能性があると思われます(グラフ6)。

世界のスマートフォン市場は趨勢的な拡大が続いています(グラフ7)。その中でiPhoneのような高級品市場も成長していると思われます。

グラフ6 iPhone出荷台数(単位:万台、出所:会社資料より楽天証券作成、予は楽天証券予想)

グラフ7 世界のスマートフォン出荷台数(単位:万台、暦年、出所:IDCより楽天証券作成、予想はIDC2014年8月28日プレスリリース

日本の電子部品メーカーへの恩恵は大きい

「iPhone」はスマートフォンの中では最高級機種になります。従って使っている部品も高級品が多くなっています。アップルは電子部品メーカーや通信事業者に対する秘密保持契約が厳しい会社なので、個々の部品をどのメーカーが納入しているのか、正確には不明です。また、個々の部品は複数のメーカーからの調達が原則となっているようです。

ただし、インターネット上に掲載されている分解調査やメディアの報道から見ると、以下のような日本メーカーが関わっていると思われます。

電波を選別するSAWフィルターなどの高周波部品は、村田製作所、TDK、太陽誘電など、

「6Plus」に搭載されている「光学式手振れ補正用アクチュエーター」は、アルプス電気、ミツミ電機、

液晶パネルは、シャープ、ジャパンディスプレイ、LG電子(韓国)

カメラに使うCMOSイメージセンサは、ソニーなど、

LEDバックライトモジュールは、ミネベアなど、

WiFiモジュールは、村田製作所など、

電子機器の電圧制御を行うセラミックコンデンサは、シェアから考えて、村田製作所、TDK、太陽誘電など。

また、「iPhone6」シリーズの成功は、韓国、中国のスマートフォンメーカーを刺激すると思われます。特に中国のスマートフォンメーカー、大手のファーウェイ、レノボや、新興で急成長中のシャオミー(小米)などは、現在中級品メーカーですが、ブランド力を上げて、アップル、サムスンのような高級品市場に参入する野心を持っていると言われています。廉価の低級品はインドメーカーが供給しており、中国の大手メーカーは中級品から高級品への拡大を狙っている模様です。実際に、上記の中国大手メーカーは廉価の部品は使っていないようです。例えば、シャオミーはヒロセ電機のコネクターを使っている模様です。

既に日本の電子部品メーカーにとって、中国メーカーはアップル、サムスンに次ぐ大手顧客になっていると思われます。中級品から高級品に移る過程や、3Gから4Gに移行する過程で、重要部品の使用個数が増えていきます。中国メーカーの製品が高度化するに従って、日本の電子部品メーカーへの恩恵は大きくなると思われます。

表1 スマートフォンの世代別電子部品装着個数

表2 主なスマートフォン用電子部品の概要と市場シェア(主に日本企業が強い分野)

グラフ8 村田製作所の用途別売上高(単位:百万円、出所:会社資料より楽天証券作成)

日本の通信事業者ではソフトバンクが先行

「iPhone」ビジネスは、日本の大手携帯電話会社にとって最重要ビジネスです。家電量販店の販売調査を行っているBCNランキングによれば、9月19~21日の「iPhone6」シリーズの量販店販売シェアは、ソフトバンク42.9%、au(KDDI)32.2%、NTTドコモ24.9%となっています。各携帯電話会社の自社店舗での販売は入っていない数値ですが、大勢を見ると、ソフトバンクがリードしているようです。各社とも、スマートフォンの下取りサービスや乗り換えキャンペーンを活発化させており、今後の動きが注目されます。