今週は「特集」をお休みします。8月26日(火)からオンラインセミナー「60分たっぷり中小型株」を楽天証券ウェブサイトの勉強会コーナーで配信する予定です。どうぞご覧ください。

(1)2014年8月18日の週の相場概況:円安が支援して日経平均は続伸

8月18日の週の株式市場は、日経平均が続伸する中、東証マザーズ指数が伸び悩む展開となりました。

日経平均は、8月8日ザラ場安値14,753.84円から8月21日ザラ場高値15,601.99円まで5.7%上昇しました。当面は、22日の米ジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演待ちの状態ですが、地合いは悪くないと思われます。22日も前場は強含みの展開でした。

アメリカ景気の好調さを受けて、アメリカFRBが早期利上げを検討するという見方から、ドル円レートがじりじり円安に動いた後、8月20日に1ドル=103円台となり、21日は104円に迫る勢いとなりました。これを受けて21日は、自動車(トヨタ自動車、本田技研工業、富士重工業、マツダなど)、電機(ソニー、パナソニック、村田製作所、ジャパンディスプレイ、日本電産など)、機械(IHI、三菱重工業、川崎重工業など)、不動産(三菱地所、三井不動産、住友不動産など)、メガバンク(三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャルグループなど)などの大型株が上昇しました。

自動車では、円安メリットと21日に報道された自動車用鋼板の3%値下げ合意が注目されます。このうち円安については、トヨタ自動車で、対ドル1円の円安で営業利益に約400億円の円安メリット、ユーロで約40億円の円安メリットが発生します。会社前提は通期ベースで1ドル=101円、1ユーロ=136円ですが、足元の1ドル=103円台、1ユーロ=137円台が続くと仮定すると、(400×(103-101)+40×(137-136))×3/4=630億円の営業利益上乗せ効果が発生します(2~4Qの円安メリット)。トヨタ自動車の今期会社予想営業利益は2兆3,000億円(前期は2兆2,921億円)ですので、円安メリットを考慮すると今期営業利益は約2兆3,600億円(前年比3.0%増)と試算されます。

富士重工業の場合は、1ドル1円で92億円の円安メリットが発生します。今期の前提は1ドル=100円ですから、92×(103-100)×3/4=207億円の円安メリットと試算されます。会社側の今期営業利益予想は3,400億円(前期3,265億円)なので、円安メリットを考慮すると今期営業利益は約3,600億円(前年比10.3%増)と試算されます。

もっとも、円安と言っても、足元の為替レートの変化だけでは、今期の利益変化率は大きなものにはならないと思われます。

ただし、自動車の場合、円安メリットや鋼板の値下げだけが注目材料ではありません。トヨタ自動車は2015年春から秋にかけて「プリウス」の新車を発売すると言われています。また、2016年には北米で「カムリ」の新車、日米で「アクア」の新車が発売されると思われます。2015年からトヨタ自動車は新しい新車サイクルに入っていくと思われるのですが、2015年から順次発売されるであろう「プリウス」「アクア」は、燃費もさることながら、自動危険回避装置などの安全や自動運転の要素をどれだけ搭載するのかしないのかが、一つのポイントとなると思われます。

1Q~2Qにかけて、日本電産が自動車の電動化や安全、自動運転をテコにデンソーのようなトップクラスの自動車電装品メーカーを目指すと宣言したり、ソニーが高性能イメージセンサーを2015年から車載用に投入するという報道が出たり、村田製作所、TDK、京セラ、アルプス電気、SMKなどの大手から中堅の電子部品メーカーが車載用部品の事業と生産能力を拡大するなど、自動車、自動車部品と自動車関連の電機には話題が多くなっています。自動車メーカー、自動車部品メーカーと電子部品メーカーは、安全や自動運転をテーマとして、今後とも株式市場で注目されると思われます。

また、政府が純国産戦闘機の開発の検討に入ったと報道されたことが、IHIなどの重工株上昇に繋がりました。

グラフ1 日経平均株価:日足

(2)東証2部総合指数は年初来高値を更新中。中小型株の物色範囲が広がってきた。

新興市場は、牽引役となった東証マザーズ指数を見ると、5月20日のザラ場安値633.02ポイントから8月1日ザラ場高値976.37ポイントまで、2カ月強で54.2%上昇しました。8月8日にミクシィの決算が出た後は、ミクシィ株が2日連続でストップ高し、それに連れて東証マザーズ指数も上昇しました。しかし、その後はさすがに主力株のミクシィ、CYBERDYNEに買い疲れ感が見えるようになりました。そのため、東証マザーズ指数はやや伸び悩んでいます。

ただし、中小型株の物色意欲が衰えたわけではないようです。

ゲームでは、8月8日の決算発表後の上下運動が激しかったミクシィが一服となってはいますが(8月21日30円安(0.53%安)、22日前場は反発)、8月21日には「白猫プロジェクト」のダウンロード数と課金売上高が好調なコロプラが145円高(3.55%高)、「パズル&ドラゴンズ」が累計ダウンロード数3,000万件を達成したと20日に発表したガンホー・オンライン・エンターテイメントが17円高(3.06%高)となりました。コロプラ、ガンホー・オンライン・エンターテイメントは22日前場も続伸しています。

ガンホー・オンライン・エンターテイメントは、「パズドラW」配信開始と「パズドラ」全体のダウンロード数の増加に伴い、月次課金売上高が徐々に上向く気配が出始めている模様です。PERが10倍前後と安いこともあって、一定の株価上昇(戻り)が期待できる可能性があります。なお、8月21日付けで、ソフトバンクと共同で買収したフィンランドのゲーム会社「スーパーセル」の株式売却と、国内外のゲーム事業への投資と新興国でのゲーム事業のために子会社を設立すること(原資は300億円)を発表しました。これも話題になりそうです。

このほか、KLab、クルーズ、スクウェア・エニックス・ホールディングスなども上昇しているので、ゲーム株の人気がなくなったわけではないと思われます。

また、東証2部総合指数が年初来高値を更新しています。東証2部で最近株価が上昇している銘柄には、例えば、7月に金属3Dプリンタへの参入を発表した後、株価が上昇しているソディック、医療器具の朝日インテック、電力用半導体の日本インターなどがあります。このように、新興市場だけでなく、東証上場の中小型株に対しても物色が拡大しています。

新興市場では、業績の裏付けに乏しい銘柄も人気化していますが、東証上場の中小型株は、例外はもちろんありますが、事業基盤と業績がしっかりして、かつPERが比較的安い企業が多いです。この方面への物色が拡大しているため、中小型株相場が長続きすることになる可能性があります。ここでは中小型株の定義を時価総額1兆円未満としていますが(国際的に中小型株というと、大体この基準でいいと思われます)、幅広いセクターで中小型株を探してみたいと思います。

大型株と中小型株の循環物色、あるいは、好業績や将来性のある中小型株の発掘が、株式市場の中で幅広く進んでいるように思われます。どちらかといえば業績変化率の大きい中小型株で、銘柄を探して投資したい相場と思われます。

グラフ2 東証2部総合指数:日足

グラフ3 東証マザーズ指数:日足

グラフ4 日経ジャスダック平均:日足

表1 楽天証券投資WEEKLY