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民生用電機3社の2014年3月期決算と2015年3月期見通し
今中 能夫
楽天証券投資weekly セクター・投資テーマ編
毎週金曜日夕方掲載。楽天証券経済研究所アナリスト 今中能夫の、今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。注目セクターと投資テーマに重点を置いて、相場と銘柄を分かり…

民生用電機3社の2014年3月期決算と2015年3月期見通し

2014/5/16
今週から「楽天証券投資Weekly:セクター・投資テーマ編」を発行します。従来お送りしてきた「信用取引評価損益率コメント」「決算発表銘柄コメント」を発展的に統合したものです。
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1.民生用電機3社(ソニー、パナソニック、シャープ)の2014年3月期決算

今回は、民生用電機各社(ソニー、パナソニック、シャープ)の決算を分析して、今後の業績と株価を展望してみたいと思います。

3社の決算を総括してみると、パナソニック、シャープについては、中身が改善しており、良い方向に向かっていることが確認できました。ソニーについても同様で、映画、音楽、金融の好調だけでなく、スマートフォンやテレビの損益改善が見られました。パソコンの大赤字が足を引っ張りましたが、とりあえず業績は回復してきたように思われます。

今後を展望すると、パナソニックは、自動車、住宅の両分野が成長エンジンとなった成長ステージに入ったようです。シャープはまだ病み上がりですが、中小型液晶のビジネスが拡大しており、全社でも四半期ごとに利益が出ています。

ソニーは、映画、音楽、金融が高水準の利益を上げており、特に100%子会社の音楽、映画が合わせて1,000億円以上の営業利益を安定的に上げるようになっています。ただし、テレビは今期利益ゼロ、イメージング・プロダクツ&ソリューション事業(デジカメ、ハンディカム、一眼カメラなど)は今期増益見通しですが、この見通しには苦しいものがあります。引き続きエレクトロニクス部門のリストラが必要と思われます。ただし、パソコンの大赤字を除くとエレクトロニクス各部門は損益が改善しつつあり、光は見えてきました。

グラフ1 民生用電機3社業績比較:売上高
(単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成、会予は会社予想)

グラフ2 民生用電機3社業績比較:営業利益
(単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成、会予は会社予想)

グラフ3 民生用電機3社業績比較:当期純利益
(単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成、会予は会社予想)

ソニー

1.成長続く映画、音楽と金融部門

ソニーの映画、音楽、金融の3部門が着実に成長しています。この3部門を合わせた営業利益は2013年3月期2,272億円から2014年3月期2,721億円へ前年比19.8%増となりました。特に、100%子会社で運営しているため、金融のように非支配持分を当期純利益から差し引かれることがない(利益が全てソニーのものになる)映画、音楽は、合わせて1,000億円以上の利益が安定的にでるようになりました。

表1 ソニー:セグメント別損益

2.2014年3月期はパソコン事業が大赤字だが、スマートフォン、テレビなどで一定の成果は上がった

2015年3月期からそれまでスマートフォントと一緒のセグメントだったPC(パソコン)事業が「その他」に区分けされました。PC事業がなくなった後のエレクトロニクス部門(モバイルコミュニケーションズ、ゲーム&ネットワークサービス、イメージング・プロダクツ&ソリューション、ホームエンタテインメント&サウンド、デバイス)は、一部を除き堅調に業績が回復しました。モバイルコミュニケーションズ(スマートフォン)が黒字転換し、テレビ(ホームエンタテインメント&サウンド)の赤字が縮小(2013年3月期696億円の赤字、2014年3月期257億円の赤字)するなどの成果がありました。イメージング・プロダクツ&ソリューションズ(デジカメ、ハンディカム、一眼カメラなど)は営業利益が2013年3月期14億円から2014年3月期263億円に黒字幅が拡大しました。

私は4月25日付けアナリストレポートにおいて、前3Q決算時の2014年3月期業績見通しの大幅下方修正を見て、ソニーのテレビ、スマートフォン、デジタルカメラなどのエレクトロニクス事業がかなり大きな赤字になると予想しましたが、実際にはPC事業の大赤字が業績悪化の主因であり、エレクトロニクス分野の多くは損益が改善していました。

2014年3月期の最終赤字の主因はPC事業です。PC事業の営業損失は2013年3月期386億円から2014年3月期917億円に拡大しました。この中には、投資ファンドへの売却前に購入契約を結んだ部品類の損失処理や構造改革費用が入っています。もともと業績不振だったところへ、売却決定によって売れ行きが悪化しました。また、今期もアフターサービスを継続する必要があり、販売店など各種のリストラを継続します。

今期に予想されるテレビ事業の分社化や、一歩踏み出してこれを売却することが必要になったときに、やり方がまずいとパソコン事業のように大きな赤字が出るかもしれません。これは今後注意しなければならないことでしょう。

3.今期見通し:光が見えてきた

会社予想によれば、今期も500億円の最終赤字が予想されます。2期連続の最終赤字見通しに対して、決算発表後の5月15日の終値は前日比6.09%下落しました。

もっとも、決算説明会を聞いた限りでは、私には3つ光が見えてきました。

一つ目は、前述した映画、音楽、金融の3部門が高水準の利益を上げていることです。特に、グローバルに展開する映画、音楽事業は合わせて約1,000億円の営業利益を上げています。ヒットした映画やアルバムによって利益変動が起こるため、毎期同じ率で成長する事業ではありませんが、映画、音楽双方で新興国市場が立ち上がってきたこと、映画はテレビドラマへの投資が収益に貢献していること、音楽も過去の楽曲を売る音楽出版事業が伸びていることから、中長期的に成長事業です。

仮に、映画、音楽事業が、年率15~20%の利益成長を実現すれば(私は無理なことではないと考えています)、4~5年でこの2部門の営業利益が2,000億円規模になる計算です。ソニーの中核事業が、少なくとも「利益」で見る限り、既にエレクトロニクスではなくなっていることは、今回の決算ではっきりしたと思います。

二つ目の光は、エレクトロニクス部門の各事業(PC事業を除く)の損益が、多くの事業で改善していることです。赤字が拡大したゲーム事業、赤字転落したデバイス事業(イメージセンサーなど)もありますが、ゲームはPS4発売に対してPS3が減少したこと、デバイスは電池事業の減損など理由がはっきりしており、これらも将来性がある事業であることに変わりはないと考えられます。

損益が好転したことで、有望事業(例えばモバイルコミュニケーション)には更に投資しやすくなりました。また、今は損益が好転しているが、将来が不透明な事業(例えば、テレビ、デジタルカメラなど)を分社化したり、外部資本を入れるときに、損益が好転しているため抜本策が取りやすくなっています。PC事業はソニーの事業ではなくなる過程で大赤字になったものであり、来期2016年3月期には赤字は大きく縮小すると思われます(ただしアフターサービスのコストは残ると思われます)。

なお、今期が大幅営業増益になる見通しにもかかわらず、500億円の最終赤字になる理由は、パソコン事業で800億円の営業赤字が見込まれていることと、現在ソニーは繰延税金資産に評価性引当金を設定しているため、税金を適正に期間配分する税効果会計が効かない状態になっており、税金が見た目上多くかかるためと思われます。

三つ目の光は、ディスクローズ(情報開示)が良くなったことです。5月14日に開催された決算説明会において、新任の吉田CFOは従来になかった丁寧さでソニーの現状を説明しました(この説明会の模様は、質問も含めてソニーのウェブサイトで公開されています)。今期もセグメント分けを若干変更しましたが、従来よりも会社の中身がわかりやすくなりました。

また、ソニーは今期の事業別損益予想を開示しました(表1)。各事業部門の予算をベースにしたものということであり、今期予想のベースとなる各事業の考え方がわかります。

加えて、ソニーの今後のリストラの課題がわかりました。ソニーは全世界の地域販社と本社の人員削減に取り組もうとしています。一方で、ソニーの地域販社の固定費の多くを賄っているのは、売上高の大きいテレビ事業です。更に地域販社が本社の固定費の多くを賄っています。従って、今期に予定されるテレビ事業の分社化と、その後あるかもしれないテレビ事業への外部資本導入がうまくいくかどうかが、地域販社と本社のリストラが成功するかの試金石になると思われます。

4.中長期で投資を考えてみたい

今後の注目点は、ソニーはそもそもどのような会社になろうとするのか、そろそろ明確にする必要があるということです。今の各事業の利益トレンドをそのまま伸ばすと、上述したように、ソニーは映画、音楽、金融を中核とし、エレクトロニクス事業の中で有望事業であるスマートフォン、イメージセンサ、プロフェッショナルソリューション(放送用機器、映画製作用機器など)などが収益を上げる会社になるでしょう。それ以外の事業、例えばテレビなどは分社化、外部資本の注入や売却になると思われます。私は、この方向を選択した場合、ソニーは投資妙味が大きい会社になると考えています。

一方で、リストラが中途半端だと、映画、音楽、金融が中核になることは変わりないものの、エレクトロニクスのいくつかの事業が赤字のままの状態が続き、エレクトロニクス全体では赤字か低採算の状態が続く可能性があります。時価総額も現状から大きくは増えないかもしれません。

今期、来期は、ソニーにとって重要な年になりそうです。

パナソニック

1.2014年3月期は大幅増益

パナソニックの2014年3月期営業利益は、3,051億円(前年比89.6%増)となりました。3Q決算時の会社予想は2,700億円でしたが、これを上回りました。セグメントで会社見通しを上回ったのはエコソリューションズ(住宅関連、太陽電池など)で、住設機器や太陽電池が好調。また前年比では、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ(自動車向け、アビオニクスなどの産業向け)、AVCネットワークス(テレビ、液晶パネル、デジタルAV機器など)、エコソリューションズの営業利益が前年を大きく上回りました。

表2 パナソニック:セグメント別損益

2.2015年3月期の会社予想は上方修正含みか

会社側の2015年3月期営業利益予想は3,100億円(前年比1.6%増)とほぼ横ばいですが、これは3月27日開催の2015年3月期事業方針説明会で会社側が提示した社内の積み上げによる見通しを変えていないためと会社側は説明しています。

実際には、エコソリューションズで消費税増税後の反動が予想されるものの、今のところ想定の範囲内と思われます。オートモーティブ&インダストリアルシステムズはテスラモーターズ向け電池などの好調が予想されます。AVCネットワークスは事業移管によって、デジタルカメラ、放送用機器、アビオニクス(航空機内AVシステム)、社会インフラ関連など産業向けの色彩が強くなっていますが、利益倍増が予想されます。アプライアンス(エアコン、白物家電、テレビ、BDレコーダー、店舗用流通用冷蔵庫、冷凍庫など)は前期不調だったエアコンの復調が見込まれます。会社予想営業利益の3,100億円は上乗せが可能と思われます。

リストラは今期も続く見通しで、2015年3月期の営業外損失見通し1,900億円のうち、900億円が構造改革費用、残りが金利負担、拠点移転費用など。リストラが終結しそうな2016年3月期になると、これらの営業外損失は縮小すると思われます。

2015年3月期の会社予想当期純利益は、1,400億円です。2013年3月期に取崩した繰延税金資産の再計上1,200億円を見込んでいます。

3.中長期的に注目したい

会社側の中期計画では、2014年3月期営業利益3,051億円、フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフロー-投資キャッシュフロー)5,941億円を、2015年3月期に各々3,100億円、7,000億円以上、2016年3月期に3,500億円以上、6,000億円以上にする計画です。足元の進捗は計画よりも早いため、この計画は十分達成、超過できると思われます。電気自動車向け電池のような成長分野も持っています。中長期的な投資対象として注目したいと思います。

シャープ

1.2014年3月期は最終黒字

シャープの最終損益は、液晶の不振によって2012年3月期3,761億円の赤字、2013年3月期5,453億円の赤字と2期連続で巨額赤字が続いていました。しかし、2014年3月期は115億円の黒字になりました。リストラの効果もありますが、個々の製品が好調だったことが大きく寄与しています。液晶は、中小型液晶パネルがスマートフォン向けに、大型液晶パネルが4Kテレビ向けに好調で、2013年3月期1,389億円の営業赤字から2014年3月期415億円の営業黒字へ転換しました。デジタル情報家電、太陽電池、電子デバイスも黒字化しました。

表3 シャープ:セグメント別損益

2.2015年3月期は最終黒字が拡大する見込み

2015年3月期会社予想営業利益は1,000億円(前年比7.9%減)です。部門別営業利益予想を見ると、太陽電池が補助金制度の変更などの影響で赤字になると見込まれる一方で、デジタル情報家電、液晶、電子デバイスは増益が見込まれます。

業績を左右する液晶事業は、足元で利益率の高い中小型比率が上昇しています。2014年1-3月期の中小型比率は28%でしたが、今上期中には50%に達する見込みです。中国での顧客開拓が進んでいます。また、4Kテレビの増加は大型液晶パネルの単価上昇に寄与しています。

会社見通しは営業減益見通しですが、前期のように特別損失を見込んでいないため、当期純利益は300億円になる見込みです。

3.再成長ステージへ

会社側の中期計画では前期までの構造改革ステージから、今期からは再成長ステージに移行することになります。黒字転換したことで、今後の注目点は利益成長ということになります。

会社予想PERは16倍です。自己資本率が2014年3月期末8.9%と低いため、公募増資の観測があります。これが実現すれば短期的には株価にネガティブな影響を与えると思われますが、資本増強は長期的にはポジティブにみてよいと思われます。投資を考えてもよいファンダメンタルズになってきたと思われます。

表4 業績表

グラフ4 ソニー:日足

グラフ5 パナソニック:日足

グラフ6 シャープ:日足

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