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日ロ経済協力が実現した場合の日本のメリットは何か?
窪田 真之
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略をレポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者としての幅…

日ロ経済協力が実現した場合の日本のメリットは何か?

2016/12/7
読者の方から「日ロ経済協力のメリットについて解説してほしい」とコメントをいただきました。今日は、そのご質問にお答えします。
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執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 安倍首相は日ロ経済協力の実現を目指して努力しているが、北方領土問題やウクライナ紛争が未解決であるため、簡単には実現しそうにない。日本がロシアとの関係を深めることを米国が許容するかも未知数。
  • 日ロ経済協力が実現し、サハリンからパイプラインによって安価なガスが入ってくるようになると、日本の電力料金引き下げに貢献する。天然ガスを原料として使えば、日本の化学産業のコスト競争力を改善することもできる。また、日本企業が、ロシアで資源開発やプラント建設などのビジネスを獲得する可能性も高まる。

(1)日ロ経済協力は進むか?

読者の方から「日ロ経済協力のメリットについて解説してほしい」とコメントをいただきました。今日は、そのご質問にお答えします。

安倍内閣は発足以来、北方領土の返還実現と日ロ経済協力の推進を、重要な政策課題と位置づけてきました。2014年にウクライナ紛争【注】が起こったために交渉は一時頓挫しましたが、水面下で交渉は続いています。

【注】ウクライナ紛争

2014年2月、ウクライナで親欧米派が政権を握ると、親ロシア派との対立が激化しました。ロシアは3月に親ロ派住民の多いクリミアに侵攻し、ロシアに編入。さらにウクライナ政府と親ロ派武装勢力との内戦で親ロ派支援を続けています。欧米はロシアのこの行為に対し、経済制裁を発動、日本も制裁に参加。対ロ経済制裁は今も継続しています。

ウクライナ情勢はとりあえず小康状態にあり、日ロ交渉が再び進展する気配があります。米大統領選で、ロシアとの関係改善を唱えるドナルド・トランプ氏が当選したことも、日ロ交渉に影響を与える可能性があります。米国がロシアとの関係改善に動けば、日本もロシアとの関係改善を進めやすくなる面はあります。

ただし、現時点で、北方領土問題は未解決で、ウクライナ紛争と対ロ経済制裁も続いており、日ロ経済協力は簡単には実現しそうにありません。日本がロシアと経済関係を深めると、対ロ制裁を骨抜きにすることになります。日ロ経済協力を、米国が黙認するか否かが重要です。

米国は、イランに対して経済制裁を行っていた間、日本がイランから原油を輸入することを事実上、黙認していました。日本が中東原油に深く依存していることを理解していたからと考えられます。トランプ次期大統領が、対中国・対ロシアでどのような駆け引きを考えているかが、日ロ経済協力進展に大きな影響を及ぼすと思われます。

(2)日ロ経済協力で、日本が受けるメリット

ここからは、日ロ経済協力が実現すると仮定して、日本が受ける経済的メリットについて、書きます。日本のメリットは、大きく分けて2つあります。

  • サハリン(樺太)・東シベリアから安価なエネルギーを輸入できること
  • 日本企業が資源開発・プラント建設など、幅広いビジネスを獲得すると期待されること

日本は、東日本大震災の後、中東から割高なLNGを大量購入せざるを得なくなりました。原発停止で、火力発電を緊急に拡大せざるを得なかったからです。その時、長期契約した世界一割高なLNGの輸入によって、日本はその後長い間、貿易赤字に苦しむことになりました。

中東原油への依存が高かったことが、世界一割高なLNGを言い値で買わざるを得ない結果を生んだのです。輸入先を広げることは、いざという時に日本の交渉力を高める効果があります。

ロシアは、日本に対し、過去に少なくとも2回以上、サハリンから日本へガスパイプラインを敷設することを提案しています。日本がそれを断ってきた経緯があります。サハリンから安価な天然ガスを購入するルートができれば、中東LNGの購入交渉でも、有利に働きます。

日本は火力発電燃料を、LNG(液化天然ガス)に転換して輸入して利用していますが、それには莫大なコストがかかります。世界でLNGを大量に利用しているのは、パイプラインで大量にガスを輸入することができない日本と韓国くらいです。世界では、天然ガスの9割はパイプラインで運んで使っています。

天然ガスは、パイプラインを使って4000キロメートル以上運ぶことができるので、かなり広い地域で、利用できます。LNGにして運ぶより、パイプラインで運んだ方が、はるかに低コストです。中国でも「西気東送」といって、中央アジアの天然ガスを東部工業都市に運ぶ長距離パイプラインを建設しています。

ちなみに、原油を採掘する際に、天然ガスが自噴しますが、中東ではパイプラインで運んで使用しないものは、今でも焼却処分しています。私は3年前、中東に出張した際、資源枯渇が心配されるバーレーンですら油田で高い火柱が上がっているのを見て、驚いた覚えがあります。

サハリンから東京は、天然ガスをパイプラインで簡単に運べる距離です。高速道路などを利用してパイプラインでつなぐ案や、新潟まで海底パイプラインで運び、新潟から東京につながっている既存のパイプラインに接続する案などが検討されたことがあります。

もし実現すれば、日本の火力発電コストを引き下げ、電力料金を引き下げるのに大いに役立ちます。北海道は電力料金が日本で一番高くなっていますが、安価なガスが入れば、まず北海道の電力料金の引き下げに貢献するでしょう。

天然ガスのまま輸入することができると、化学産業も恩恵を受けます。現在、米国の石油化学産業は、安価な天然ガスを原料としているために、コスト競争力がありますが、日本国内の石油化学産業は、割高な輸入原油を使わなければならないために、コスト競争力がありません。

サハリン天然ガスの輸入が実現すれば、日本の石油化学産業のコスト競争力を改善する効果もあります。

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