執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 長期金利の上昇・円安の進行・資源価格の上昇を受け、これまで割安に放置されていた金融株・輸出株・資源関連株が見直され、上昇が続いている。
  • 三大割安株が上昇する中、ディフェンシブ株は下落しているものが多い。ディフェンシブ株にも見直し余地がある。

(1)三大割安株の見直し続く

このレポートで「三大割安株」と呼んで私が注目しているのが、金融株・輸出株・資源関連株です。今年の6月までは、配当利回りが高く、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などの株価指標で見てかなり割安となっていても、不人気で、買いが入りにくい状態が続いていました。以下の不安が、株価を抑えていました。

  • 金融株: マイナス金利の不安
  • 輸出株: 円高の不安
  • 資源関連株: 資源バブル崩壊の不安

ところが、7月以降、三大割安株が見直され、上昇するようになってきています。米国・中国の景気が徐々に持ち直しつつあることから、金利低下・円高・資源価格下落に歯止めがかかり始めたことが好感されました。

11月8日の米大統領選に勝利したトランプ氏の経済政策(トランプノミクス)が伝わり、米景気の回復が強まる見通しが広がり、世界的に長期金利が上昇、ドル高(円安)が進行、銅・ニッケルなどコモディティが上昇したことで、三大割安株の見直しに拍車がかかりました。

特に、長期金利上昇を受けた、金融株の上昇率が高くなっています。海外収益の拡大が続く3メガ銀行、三菱UFJFG(8306)(予想配当利回り2.7%)・三井住友FG(8316)(同3.8%)・みずほFG(8411)(同3.6%)は、株価が依然として割安であり、ここからさらに上値余地が大きいと予想しています。

 
 

米英独日 長期金利の動き:2016年1月4日―11月11日

 

ドル円為替レートの動き:2016年1月4日―11月11日

 

LME銅3ヶ月先物の動き:2014年1月―2016年11月11日

(2)ディフェンシブ株にも見直し余地

トランプノミクス・ラリーで、景気敏感株・金融株が買われる中、食品・医薬品・小売り・サービス・通信など、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ株には、値下がりするものが目立ちます。

年金・投信などの機関投資家が、これまでアンダーウエイト(基準組み入れ比率よりも低い組み入れとすること)していた金融株・景気敏感株を買うために、これまでオ-バーウエイト(基準組み入れ比率よりも高い組み入れとすること)していたディフェンシブ株を売っている影響が出ているようです。

業績好調にもかかわらず、値下がりしているディフェンシブ株には、見直し余地があると思います。

日本たばこ産業(2914)は、代表的なディフェンシブ株で、最近株価は軟調です。今期は、円高が利益にマイナスですが、海外でタバコの販売数量が拡大していることに加え、値上げができる効果もあり、業績堅調です。予想配当利回りが3.19%あり、好配当利回り株として注目できると思います。

国内の蒸気タバコで、フィリップ・モリスの「アイコス」にシェアをとられていることを気にする向きもありますが、JTも商品開発を急いでおり、いずれキャッチアップすると考えられます。

(同2.4%)などは、安定高収益株であり、配当利回りも魅力的と言えます。(9433)(同2.6%)・KDDI(9432)(予想配当利回り2.9%)・NTT(9437)通信会社も、ディフェンシブ株なので、足元の値動きは不振です。NTTドコモ