執筆:窪田真之

8月2日の日経平均は、前日比244円安の16,391円でした。最近発表の米景気指標が弱めでジリジリと円高が進んでいること、原油価格下落が新たな不安材料となっていることなどが、嫌気されました。

8月2日は、総額28.1兆円の経済対策が閣議決定されましたが、ほぼ事前報道通りの内容で、サプライズはありません。

8月3日の日本時間午前6時20分現在、1ドル100.90円まで円高が進んでいます。2日のCME日経平均先物(9月限)は、16,095円(2日の日経平均終値比▲296円)でした。

(1)経済対策の内容はほぼ事前報道とおり

政府は、2日夕方に、経済対策を閣議決定しました。総事業規模28.1兆円、真水【注】7.5兆円(国の負担6.2兆円、地方自治体の負担1.3兆円)は、事前の報道通りでした。

【注】真水:経済対策のうち、国や地方が直接負担する財政支出のこと。公共投資・減税など。GDPを直接押し上げる財政出動。

当初、経済対策は総額10兆円、真水3兆円と言われていましたが、直前の報道で、規模が膨らむことが伝えられていました。経済対策として一番重要な真水は7.5兆円に膨らみました。ただし、それは複数年度の対策をあわせた総額のことを言っています。2016年度の2次補正予算案に4兆円を計上し、残りが2017年度の予算案や特別会計で編成する見込みです。政府試算では、これらの経済対策で2016~17年度のGDPが1.3%押し上げられます。

発表内容にサプライズはありません。ただし、規模を膨らませるために、急いで作った印象は否めません。複数年の目標を挙げて規模を膨らませているので、単年度のGDPが大きく押し上げられるわけではありません。

(2)原油下落が新たな不安材料に

原油が再び、下落しつつあります。8月2日の日本時間午前6時現在、WTI原油先物(期近)は、1バレル39.70ドルまで下がっています。原油暴落によるショックから世界経済が立ち直りつつあっただけに、原油下落が新たな不安要因となっています。

WTI原油先物(期近)の推移:2014年4月1日―2016年8月1日

(出所:シェールオイル生産コストは、楽天証券経済研究所の推定)

私は、現在の原油下落は、これまでの上昇ピッチが速過ぎたための反動で、再び1バレル30ドルに向けて暴落するとは考えていません。

2014年4月以降の、原油の5つの動き(グラフの中の①~⑤)について簡単に解説します。

  • 2014年7月―2015年1月:米シェールオイル増産で原油が供給過剰となり暴落
  • 2015年2月―5月:コスト割れのシェール田が出てきたことを受けて、原油反発
  • 2015年6月―2016年1月:中東原油の予想以上の増産を受けて、原油が再び急落
  • 2016年2月―6月:原油需要の増加、シェールオイルの生産減少を受け、原油反発
  • 2016年7月:シェールオイルの稼動リグ数増加・中東原油増産を受けて、原油反落

シェールオイルの稼動リグ数の増加は、2―6月の原油反発が急だったから起こったことですが、原油価格が1バレル60ドルを超えて上昇しない限り、米シェールオイルのこれ以上の増産はないと予想しています。

原油下落がこれ以上続くと、また、産油国・資源国の景気悪化、米シェールオイル産業の悪化→米景気悪化と、不安が増えてきます。原油のさらなる急落はないと現時点で予想していますが、今後の、原油価格の推移を注意深く、見ていく必要があります。