執筆:窪田真之

8月1日の日経平均は、先週末比61円高の16,630円でした。先週末1ドル102.09円まで進んだ円高を嫌気して、朝方250円安の16,319円まで下がりましたが、その後切り返して上昇しました。

これまで、円高→株安、円安→株高と密接にリンクしていましたが、先週末からの円高急伸局面では、その関係が途切れています。このまま、円高でも日経平均は堅調に推移するか、円高→株安の関係に戻るか、正念場です。

為替は、1日15時時点で1ドル102.43円と、前週末比で34銭、円安に戻りましたが、7月29日に1日で3.03円、円高急伸したことと比べると、ドル円の戻りは鈍いと言えます。なお、8月2日の日本時間午前6時20分現在、1ドル102.38円でした。1日のCME日経平先物(9月限)は、16,450円でした。

(1)為替連動相場は続くか?

今年に入ってから、円高→株安、円安→株高のリンクが鮮明です。

ドル円為替と日経平均の推移:2016年1月1日―8月1日

(注:楽天証券経済研究所が作成)

ところが、7月29日(金)・8月1日(月)は、円高が急伸する中、日経平均は堅調です。円高・株安のリンクがこのまま切れるか、今後が注目されます。

(2)米国株は「ゴールディーロック」

円高でも、日経平均が下がらなかったことには、2つの理由が考えられます。

米国株(NYダウ、S&P500)が「ゴールディーロック」【注】の米景気を好感して7月に最高値を更新、つれて世界的に株式が堅調に推移していること。

【注】ゴールディーロック:ロシアの民話に出てくるわがままな少女の名前。森の中で見つけた熊の家に勝手に入り込み、スープを食べて「これは熱すぎる」「これは冷たすぎる」と文句を言う。ベッドについても「これは堅すぎる」「これは柔らかすぎる」と文句を言う。転じて、株式を上昇させるのに必要な「強すぎず、弱すぎない景気の状態」をゴールディーロックという。株式相場は、景気が弱すぎると下がるが、強すぎても金利上昇を嫌気して下がる。金利上昇懸念を生じない程度の景気回復を、ゴールディーロックと呼ぶ。

8月1日のNYダウは原油安を嫌気して6営業日続落、ハイテク株比率の高い米ナスダック株価指数が5営業日続伸しています。米景気は回復しているものの、回復の足取りは重いままです。世界経済が不安定な状態であることも、米景気に影響しています。そのため、アメリカの早期利上げ観測は後退しています。

米景気がゆるやかに回復する中で、早期利上げはないとのムードが広がり、円高(ドル安)が進み、日本株は売られましたが、米利上げ観測の後退は、世界の株式市場にとっては強材料でした。世界の株式市場が堅調に推移する中で、日本株だけ独歩安になっていました。

日銀の6兆円のETF買い発表が心理的に日本株を売りにくくしている。また、日銀が政府の財政出動とした追加緩和を先行き行う期待が残っていること。

黒田日銀総裁は、7月29日の記者会見で、9月に予定される政府の補正予算発表と同時に政府と連携して追加緩和を実施することに、含みを残しました。これを、フォワードガイダンス(先行きの金融政策の方向性についての示唆)と捉える向きもあります。9月への期待が、日経平均の下値を支えている可能性もあります。

(3)今日、閣議決定される予定の経済対策に注目

安倍首相が7月28日に福岡で行った講演では、「事業総額28兆円超、財政措置(真水と財政投融資の合計)13兆円」の経済対策となる見込みです。景気下支えに効果があり、長期的に日本経済を強くする内容であるか、注目されます。

これについては、正式発表の後に、改めて報告します。