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ブレグジット不安一巡でもEU不安の種は尽きない
窪田 真之
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略をレポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者としての幅…

ブレグジット不安一巡でもEU不安の種は尽きない

2016/7/14
13日の日経平均は、前日比135円高の16,231円と、続伸しました。一時、348円高の16,444円まで上昇しましたが、その後は上げ幅を縮小しました。12日に一時1ドル104.99円まで円安が進みましたが、13日午後には104.10円まで円高となったことが影響しました。
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13日の日経平均は、前日比135円高の16,231円と、続伸しました。一時、348円高の16,444円まで上昇しましたが、その後は上げ幅を縮小しました。12日に一時1ドル104.99円まで円安が進みましたが、13日午後には104.10円まで円高となったことが影響しました。

7月に米利上げが見込みにくいことから、ドル高(円安)が進むのにも限界があり、それがそのまま日経平均の上値を抑えた形です。

14日の日本時間で午前6時現在、為替は1ドル104.46円です。CME日経平均先物(9月限)は、16,345円でした。

今日は、気をつけておく必要があるEU(欧州連合)の不安について、書きます。

(1)スペインとポルトガルに対する制裁勧告をEU財務相理事会が承認

EUの財政ルールでは、単年度の財政赤字が名目GDPの3%を超え、赤字削減努力が十分でない加盟国に対し、最大でGDPの0.2%の罰金を科すことができます。2015年に、スペインとポルトガルは、このルールに抵触しました。EU欧州委員会は、両国に対して、罰金などの制裁を科すように勧告を出し、EU財務相理事会は、12日に開かれた会合でその勧告を承認しました。今後、具体的な制裁の手続きが開始されます。

英国が国民投票でEU離脱方針を決め、改めてEUの結束を固めなければならなくなった今、反EU世論を高ぶらせるような制裁が議論されるのは不思議です。「制裁金を免除する代わりに、新たな財政緊縮策を出させる」という方向で議論が進むと予想されますが、その話をスペインやポルトガルの国民はどう受け止めるでしょうか?反EU感情が強まるに違いありません。同じように、EUの指示で緊縮財政を続けるイタリアやフランスでも、反EU感情が強まるきっかけとなりかねません。

EUを主導しているのは、EU最大の経済強国ドイツです。南欧のEU加盟国で勢力を拡大しつつある急進左派勢力や極右勢力など、反EU勢力は、今のところ「EU官僚」「ブリュッセル(EU本部があるベルギー首都)」を、緊縮財政を押し付けて景気を低迷させる元凶として批判していますが、一歩間違えば、批判の矛先は「ドイツ」に向かいかねません。

そのドイツに焦りがあります。経済的に弱体のギリシャなど南欧諸国を、ドイツがEUを通じて財政的に支えていることに、ドイツ国民の不満が膨らんでいるからです。「われわれの税金を使ってギリシャを支えるのはやめろ」という声が広がっています。財政規律を重んじるドイツは、第2・第3のギリシャが現れることを防止するために、財政状態のよくない南欧諸国に、何としても緊縮財政を守らせなければならないと焦っています。

ドイツは、信用状態の良くない国と通貨を共有することで、通貨ユーロが安くなり、それで自国の輸出産業の競争力を高める恩恵を受けています。それと引き換えに、低信用国を財政的に支えなければならなくなることは、避けたいと考えているわけです。

(2)共通通貨ユーロの幻想

出口の見えないEUの構造問題の元凶は何か考えると、共通通貨ユーロに行き着きます。今になってみると、経済構造がまったく異なる欧州の国々が統一通貨を持つという構想は、幻想だったと言わざるを得ません。

ギリシャの債務問題を悪化させたのは、共通通貨ユーロの存在です。ギリシャは2001年に自国通貨ドラクマを廃止して共通通貨ユーロを採用しました。もしギリシャがEUに加盟せず、通貨ユーロを使用していなければ、ギリシャの通貨ドラクマは、2001年以降、経常赤字の拡大とともに、対ユーロ・対ドルで下落し続けたはずです。通貨が下落すれば、輸入インフレが引き起こされ消費が抑えられます。一方、観光業・海運業など外貨をかせぐギリシャの自国産業は通貨安で活性化します。経常赤字拡大→通貨下落→経常赤字減少という「教科書的な為替調整機能」が働いていたはずでした。

ところが、ギリシャはドイツの信用で支えられた通貨ユーロを使用していたため、通貨は高止まりし、為替による調整機能が働きませんでした。ユーロを使い続けていたギリシャは、経常赤字を拡大させても通貨安による輸入インフレに見舞われることがなく、さらに経常赤字が拡大するという構造に陥っていました。

スペインもポルトガルもイタリアも、大なり小なり同じ構造問題をかかえています。自国通貨が下がることによる「消費抑制効果」「輸出産業の活性化」が働かないため、過剰消費は抑えられません。そのまま放置すると最後は、ドイツなど経済強国からの補助金で、埋め合わせなければならなくなります。そうなっては困るから、ドイツはEUを通じて、強権を発動して緊縮財政を強制しようとするのです。

スペイン・ポルトガル・イタリア・ギリシャ人は、自国通貨の下落によるインフレによって消費が抑圧されるならば、それは自国経済が弱い為とあきらめるでしょう。ところが、EU・ドイツの命令で、緊縮財政をやらされ、それで消費が抑圧され、景気が低迷していると聞かされると、EUへの怒りが蓄積していきます。

今のところ、南欧諸国の反EU勢力は、「反緊縮」「反移民」を唱えているだけで、EUからの離脱を明確には宣言していません。自国通貨を捨て、共通通貨ユーロを採用してしまった以上、それを自国通貨に戻すにはあまりに巨額のコストがかかるからです。EUに留まった上で、EUの規制に反旗を翻すスタンスをとっています。英国がEUからの離脱を決断できたのは、通貨まで共通化せず、英ポンドを残していたからです。通貨を人質にとられたEU諸国は、EUからの離脱を簡単に口に出来ません。

反EU・反緊縮を掲げて2015年1月に成立したギリシャの急進左派チプラス政権も、EUに残留した上で、緊縮を放棄することを宣言していました。ところが、緊縮を放棄すると、EUからの金融支援が受けられず、ギリシャ国債がデフォルトし、EUから離脱を迫られることがわかったため、チプラス政権は、公約違反であることを認めつつ、EUが求める緊縮策を受け入れざるを得ませんでした。

今、スペインやポルトガルの制裁を議論するのは、これらの国が、通貨ユーロを捨ててユーロを出ていくことができないと見透かした行為と考えられます。ただし、このように反EU勢力を刺激する行為を続けていると、いつか、欧州の反EU勢力が予想もできない暴走を始めるリスクがないとは言えません。

ブレグジットへの不安は、足元、小康状態にありますが、EUの構造問題への不安は今後、何度も繰り返す可能性があることを、意識しておく必要があると思います。

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