執筆:窪田真之

13日の日経平均は、582円安の16,019円と急落しました。BREXITリスク(6月23日の英国国民投票でEU離脱が可決されるリスク)を嫌気して、先週末に欧米株式が下落した流れが続きました。世界的なリスク・オフ・ムードの復活を映し、為替が一時1ドル105.70円まで円高に進んだことも嫌気されました。今週の米FOMC(金融政策決定会合)で利上げはなく、今週の日銀金融政策決定会合で追加緩和はないことが、ほぼコンセンサスとなっており、円高も進みやすくなっています。

なお、6月14日日本時間午前6時現在、為替は1ドル106.16円です。同時刻の日経平均先物(9月限)は15,920円です。 13日の欧米株式は、英国のEU離脱不安を背景に続落しました。

(1)16,500―17,000円の範囲に収束しつつあった日経平均は、レンジを下へ抜ける

日経平均週足:2015年1月4日―2016年6月13日

上の週足チャートをご覧いただくとわかりますが、日経平均は、三角もち合いを描きながら、16,500-17,000円のレンジに収束しつつありました。そろそろ上か下へ抜けるタイミングと考えていましたが、一旦、下へ抜けることとなりました。

ただし、心理的な節目である16,000円はまだ割れていません。16,000円や17,000円などキリの良い数字は、日経平均の上値や下値のメドとなることがよくあります。多くの人がその水準を意識しながら売買するので、結果的にそこが節目となります。

今年の日経平均の動きを見ると、16,000円を割れても、比較的短い期間で16,000円を回復しています。16,000円は心理的な節目となっていますが、CME日経平均先物はこの水準を割れており、ここが維持できるか正念場です。

(2)英国がEUを離脱すると何が起こるか?

英国は、欧州の通貨統合(自国通貨を廃止して共通通貨ユーロを使用する)には入りませんでしたが、EU(欧州共同体)には加盟しています。EU域内では、貿易には原則関税がかからず、人やモノの移動に対する障壁も原則撤廃されています。英国は、輸出の約4割がEU向けであり、関税がかからない恩恵を受けています。

もし、英国がEUから離脱すると、まず、英国経済が深刻なダメージを受けます。これまでEUへ輸出する際、かからなかった関税が、かかるようになるからです。これで、輸出競争力が低下します。EUに留まれば、EUとFTA(自由貿易協定)を結んでいる国にも、関税なしで輸出することができますが、そうした協定も一旦白紙になります。英国として、個別に世界各国と自由貿易協定をやり直さなければならなくなります。世界各国と個別に交渉して自由貿易協定を結ぶには相当な時間がかかり、それまでは、英国の貿易量が縮小する懸念があります。

日本企業では、ホンダや日立製作所が、英国に工場を作っています。英国で作った製品を、EU域内に関税なしで輸出できるメリットを生かし、英国を生産拠点として活用しています。ところが、英国がEUを離脱すると、そのメリットが得られなくなる可能性があります。

英国は、日本を含むさまざまな国から直接投資(工場建設など)を呼び込み、それが英国経済を活性化してきました。英国がEUを離脱すると、英国への海外からの直接投資は激減する可能性があります。日本企業も、英国への投資には二の足を踏むようになるでしょう。

ダメージを受けるのは、英国だけではありません。重要な貿易パートナーを失うEUにとっても大きなダメージとなります。EUには、別の問題もあります。近年、加盟各国から、EUやEUを支配するドイツに対する反感が蓄積していることです。ギリシャはもちろん、イタリアやスペインなど、対外借金が多く、緊縮財政を続けている国々では、「緊縮を押し付けているのはEU」との不満が国民の間に広がっています。

英国のEU離脱が実現すると、EU各国にEU離脱機運が高まり、最悪、EUの崩壊に進む可能性もないとは言えません。

いまや英国のEU離脱リスクは、EUだけでなく、世界経済全体にとってリスク要因と考えられています。6月23日に国民投票を控えて尚、世論調査では賛否が拮抗していることから、英国のEU離脱リスクの意識が、世界的な株安につながっている状態です。

英国の国民投票は6月23日です。それ以前に、世論調査がいろいろな形で出てきます。英国世論動向に、世界の株価も振り回されるかもしれません。

今週は、日米で金融政策が発表されますが、それ以上に、来週のイベントに世界の投資家の関心が移っています。来週6月23日のイベント(英国国民投票)に関心が集まっている状態です。