執筆:窪田真之

6日の日経平均は、62円安の16,580円でした。朝方、319円安の16,322円まで下がりましたが、その後、下げ幅を縮小しました。朝方、1ドル106.62円だった為替が、午後には1ドル107円まで円安へ動いたことが、日経平均が下げ幅を縮小する要因となりました。

先週末に発表された5月の米雇用統計はネガティブ・サプライズ(弱くて驚き)でしたが、米景気の実態はそんなに悪くないとの見方が主流です。「米早期利上げが難しくなり、円高が進んだこと」は日本株にネガティブですが、「米景気が回復しつつあるにもかかわらず、利上げがしにくい環境になった」ことは、世界の株式にとって追い風です。世界的なリスクオフが始まったわけではないので、日経平均だけが大きく下がることはないとの見方も出て、6日午後は日経平均を買い戻す動きが出ました。

7日の日本時間午前6時30分現在、為替は1ドル107.59円、CME日経平均先物(6月限)は16,650円でした。イエレンFRB議長が、6日の講演で「FF金利をゆるやかに(gradually)引き上げることがたぶん必要になる」との発言を繰り返したことから、やや円安(ドル高)が進みました。ただし、利上げの時期を明示せず、利上げを急ぐ必要もないととれる語りぶりであったことから、早期(6月・7月)利上げの期待は低下しました。

(1)とりあえずボックス圏内に留まった日経平均

日経平均は今、16,500-17,000円を中心とするボックス圏に収束しつつあります。

日経平均週足:2015年1月4日―2016年6月6日

(注:楽天証券マーケットスピードより筆者作成)

為替が1ドル111円の円安水準をつけたとき、17,234円まで上昇してボックスの上抜けを試しましたが、為替が円高に反転したために、日経平均はボックス圏内に打ち返されました(ピンク色の矢印をつけたところ)。

昨日の午前中は、1ドル106円台に進んだ円高を嫌気して、日経平均はボックス圏の下抜けを試しましたが、午後に下げ幅を縮小し、一旦ボックス圏内に戻りました(水色の矢印をつけたところ)。

日経平均は、しばらくボックス圏内で推移する可能性もあります。ただし、三角もち合いは徐々に収束しており、近く、上か下へ抜ける可能性もあります。為替が鍵となります。その為替に影響するのが、米金融政策です。

イエレンFRB議長は6日の講演で、5月の米雇用統計が弱かったこと、世界経済に不透明要因があることに言及しました。ただし、「先行き雇用を増加させ、インフレ率を上昇させるポジティブな力が、ネガティブな力を上回ると考えるのに十分な理由がある」と語り、ゆるやかに金利の正常化(利上げ)を進めるべきであるとの見解を示しました。ただし、時期を明示せず、早期利上げの期待は低下しました。

(2)原油価格が堅調であることは、米景気に追い風

6月2日にウイーンでOPEC総会が開かれました。事前予想通り、増産凍結で合意することはできませんでした。原油先物は、このニュースを受けて一瞬下がりましたが、すぐに持ち直しました。

OPECが増産凍結で合意できないことは、織り込み済みでした。今、原油市場で注目されているのは、米シェールオイルの生産が減り始めたことと、米国・インド・中国などの需要が増加していることです。

EIA(アメリカエネルギー省)の見通しでは、OPECが今年日量1.6百万バレル増産しても、シェールオイルの生産減少と、世界の需要増加によって、世界の原油需給は来年初めに均衡するということです。

1-3月の米景気を失速させたのは、原油急落とドル高です。米国のエネルギー産業と、輸出産業の業績が悪化しました。今、米景気が持ち直しているのは、原油反発と、ドル安の恩恵によります。4-5月の雇用統計(非農業部門の雇用者増加数)が良くなかったのは、エネルギー産業の雇用調整が響いているからです。

原油がここから急反落しなければ、エネルギー産業の雇用も持ち直すでしょう。そうなると、6月の雇用統計は、回復に向かうはずです。