25日の日経平均は、258円高の16,757円でした。1ドル110円台に乗せる円安が進んだことが好感されました。複数のFRB高官から6月利上げを示唆するメッセージが出されていることが、円安(ドル高)要因となっています。明日、27日金曜日にイエレンFRB議長が、討論会で利上げについてどのような発言をするか、ますます注目が高まっています。

ただ、為替・日経平均とも、今は材料不足で大勢ボックス圏の動きから抜け出せていません。しばらく材料待ちの展開が続きそうです。

今日は、日本株の裁定買い残高の現状について、報告します。

(1)先物がらみで突発的な売りが出る可能性は低下している

今日は、株式市場に潜むさまざまな地雷(先物・オプションを使った投機的ポジション)の変動を知るための参考指標として重要な、「裁定買い残高」の変化について改めて報告します。

まず結論から述べます。裁定買い残高は現在1.86兆円と低水準に留まっており、投機的な先物の買いポジションはかなり整理されたと考えられます。今後、先物がらみで突発的な売りが出る可能性は低下してきていると考えることができます。

今後、裁定買い残高が増加トレンドに転じれば、日経平均は上昇トレンドに入ります。ただし、それがいつになるかは、わかりません。突発的な先物売りが出にくくなってきたことだけしか、裁定買い残高からはわかりません。

それでは、具体的にデータを見ていきましょう。日本取引所グループが25日に発表した5月20日時点の裁定買い残高は1兆8,602億円と、昨年末の3兆3,018億円から、1兆4,416億円減少しました。年初より外国人投資家から株価指数先物に大量の売りが出たことに伴い、裁定解消売りが増え、裁定買い残高は大きく減少しました。

では、まず、日経平均と裁定買い残高の関係について、グラフで見てみましょう。

日経平均の動き(上段)と、裁定買い残高の推移(下段):2013年1月4日―2015年5月25日

(出所:日本取引所グループのデータに基づき楽天証券経済研究所が作成)

裁定買い残は、主に外国人投資家の投機的ポジションの変化をあらわしています。裁定買い残が増加するときに日経平均が上昇し、裁定買い残が減少するときに日経平均が下落する傾向が鮮明に読み取れます。

(2)裁定買い残高は近年、3.5兆~4兆円まで増えるとピークをつけている

先ほどのグラフを詳しく見てみると、裁定買い残は近年、3.5~4兆円がピークになり、その後減少に転じていることがわかります。裁定買い残高が3.5~4兆円に達したときに日経平均を売ると、その後、短期的に日経平均が下落する確度が高いことがわかります。以下にグラフを再掲します。

日経平均の動き(上段)と、裁定買い残高の推移(下段):2013年1月4日―2015年5月25日

(注:日本取引所グループのデータに基づき楽天証券経済研究所が作成)

(3) 裁定買い残高は近年、1.8兆~2.6兆円まで減るとボトムになっている

以下のグラフでわかる通り、近年は裁定買い残が1.8~2.6兆円まで減ると、そこからは増加に転じていることがわかります。

日経平均の動き(上段)と、裁定買い残高の推移(下段):2013年1月4日―2015年5月25日

(注:日本取引所グループのデータに基づき楽天証券経済研究所が作成)

裁定買い残高の変化からだけ判断すると、日経平均は底値圏にあると、判断されます。ただし、裁定買い残だけを見ていても、いつ上昇相場がスタートするか知ることはできません。裁定買い残は、短期的な相場動向を考える上でのあくまでも参考に過ぎず、最終的には、企業業績によって日経平均の方向性は決まります。

なお、裁定買い残高が、3.5~4兆円でピークをつけ1.8~2.6兆円でボトムをつけるというのは、近年の傾向を述べているだけで、普遍の法則と考えないでください。過去には裁定買い残が6兆円まで増えたことも1兆円まで減ったこともあります。

明日からシニアグローバルストラテジスト香川睦のレポートが始まります

「3分でわかる!今日の投資戦略」の金曜日は、今週より5月1日入社のシニアグローバルストラテジスト香川睦(かがわむつみ)が執筆いたします。グローバルな視点から、日本株の投資に有用な情報をタイムリーに提供します。金曜日の執筆者に香川を迎え、よりパワーアップする「3分でわかる!今日の投資戦略」に、ぜひご期待いただきたいと思います。なお、月~木は、引き続き、窪田真之が執筆いたします。