23日の日経平均は、前日比81円安の16,654円でした。先週末、麻生財務相が「消費増税は予定通り実施する」と発言したこと、為替が1ドル109円台の半ばへやや円高に進んだことが売り材料となりました。午前中に、一時318円安の16,417円まで売られましたが、大引けにかけて下げ幅を縮小しました。為替・日経平均とも方向感なく、やや膠着色が出ている状況は変わりませんでした。

円高で株安、円安で株高の為替連動相場が続いています。6月にも米利上げが実施されれば、円安・株高の芽が出てきます。今日は、その可能性について、現状わかっていることをまとめます。

(1)為替連動相場が続いている

(ドル円為替レートと日経平均の動き:2016年1月~5月20日まで)

(注:楽天証券経済研究所が作成)

(2)4月の米景気持ち直しは本物か?

4月の米景気指標を見ると、1-3月に失速した米景気が、やや持ち直していることを示しています。4月の雇用統計(非農業部門雇用者数)が弱かったことを除くと、その他の指標は好調です。

4月のISM景況指数は好調

50を割っていた製造業が3月に続き4月も50を上回りました。好調が続く非製造業は、3月・4月と上昇しました。

ISM製造業・非製造業景況指数の推移:2014年1月―2016年4月

(出所:米ISM供給管理公社)

4月の雇用統計は弱かった

注目度が高い非農業部門の雇用者増加数(前月比)が、景気好調と判断される20万人増を下回り、16万人増でした。失業率は低水準ですが、さらなる低下とはなりませんでした。

米雇用統計:2014年1月―2016年4月

(出所:米労働省)

4月の小売売上高・鉱工業生産が回復

小売売上高(前月比)と鉱工業生産(前月比):2015年1月―2016年4月

(出所:小売売上高は米商務省、鉱工業生産は米FRB)

米インフレ率は上昇基調

ドル安と原油反発を受けて、CPI(消費者物価指数)は上昇基調です。

米CPIコア指数と総合指数(前年比):2015年1月―2016年4月

(出所:米労働省)

(3)結論

米国の経済状況だけ見るならば、6月にとりあえず0.25%利上げすることが適切と考えます。ただし、米利上げは、今や経済の議論ではなく、政治の議論になっています。米大統領選を11月に控え、直前の利上げはしにくくなっています。直前にならないためには、6月か7月に利上げを1回実施することが適当と考えられます。

ただし、大統領選で、共和党の有力候補のドナルド・トランプ氏が、米FRBの利上げを厳しく批判しており、「大統領になったらFRBイエレン議長は再任しない」と述べるなど、政治から中央銀行に圧力をかける動きもあります。

こうした政治情勢を考えると、今年の米利上げは、大統領選が終了した12月に1回だけとの予想も、現実味を帯びてきます。