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ゆうちょ銀行の決算説明会報告
窪田 真之
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略をレポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者としての幅…

ゆうちょ銀行の決算説明会報告

2016/5/20
19日の日経平均は、前日比2円高の16,646円でした。為替が1ドル110円台前半まで円安となったことを受けて、一時196円高の16,841円まで上昇しました。ただし、その後上げ幅を縮小しました。
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19日の日経平均は、前日比2円高の16,646円でした。為替が1ドル110円台前半まで円安となったことを受けて、一時196円高の16,841円まで上昇しました。ただし、その後上げ幅を縮小しました。1-3月の日本のGDP成長率(速報値)は事前予想より高かったものの、それでも、日本の景気・企業業績のモメンタムが低下している事実に変わりはなく、上値は重いままでした。

20日の日本時間5時30分現在、為替は1ドル109.96円です。同時刻のCME日経平均先物(6月限)は16,595円でした。

昨日、ゆうちょ銀行(7182)の決算説明会に参加しました。今日は、そこで聞いたことの報告と、それを踏まえての投資の考え方について書きます。

(1) ゆうちょ銀行は、2期連続の減益を見込んでいる

 

ゆうちょ銀行の前期業績(実績)と今期業績(会社予想)(金額単位:億円)

  2016年3月期
実績
前年比 2017年3月期
会社予想
前年比
経常利益 4,819 -15% 4,200 -13%
当期純利益 3,250 -12% 3,000 -8%

(出所:同行の決算説明会資料)

ゆうちょ銀行は、これまで、利益のほとんどを国債による運用益に依存してきました。日銀によるマイナス金利導入で、10年国債利回りまでマイナスになった影響で、経常利益の減少が続きます。

ゆうちょ銀行は、前期末(2016年3月末)で約198兆円の運用資産を保有します。この運用資産を管理会計上、ベース・ポートフォリオ(主に国債で運用する部分)136兆円と、サテライト・ポートフォリオ(超過リターン追求のポートフォリオ)62兆円に分けています。

前期末で、ベース・ポートフォリオは、国債82兆円・短期資産48兆円などで構成されています。サテライト・ポートフォリオは、外国証券45兆円・地方債社債等13兆円・金銭信託(株式)2兆円などで構成されています。

  • 前期(2016年3月期)の経常減益(▲875億円)の要因分析

ゆうちょ銀行資料によると、前期(2016年3月期)は、国債利回りの低下によりベース・ポートフォリオの収益が▲1933億円の減益要因となりました。サテライト・ポートフォリオの収益増加+516億円、コスト削減効果+522億円、手数料収入増加+18億円などの増益要因もありましたがカバーしきれず、トータルで▲875億円の経常減益となりました。

  • 今期(2017年3月期)に見込む経常減益(▲619億円)の要因分析

国債利回りの低下によりベース・ポートフォリオの収益がさらに▲2000億円の減益要因になると見込んでいます。サテライト・ポートフォリオの収益増+1400億円などを見込んでいますがカバーしきれず、トータルで▲619億円の経常減益を見込んでいます。

(2)素朴な疑問:ゆうちょ銀行は6兆円超の有価証券評価益があり、益出しすればいくらでも利益を出せるのに、それでも今期減益にするのか?

金利低下(債券価格の上昇)が続いたため、ゆうちょ銀行が保有する国債などの運用資産には、巨額の評価益が存在します。前期末で、評価益は6兆3947億円に達しています。債券売却益を出せば、いくらでも利益を作れる状態です。

決算説明会では、当然、その点について質問が出ました。ゆうちょ銀行の回答は、「長期的に安定的に収益をあげることを目標としている。過去7-8年の損益計算書にその考えは表れている」ということでした。要するに、債券売却益をたくさん出して一時的に利益をかさ上げする考えはないという回答と解釈できます。

自然体で決算すれば、国債利回りの低下によって今期経常利益が前年比▲619億円の4200億円になるというのが、会社側の見通しです。ただし、市場予想では、ゆうちょ銀行の今期経常利益は前年比▲323億円の4496億円となります。会社予想よりも、減益幅が296億円少なくなっています。債券売却益などが今期300億円程度出ると、アナリストは見込んでいることになります。

(3)もう1つの重大な関心事:追加の公募売り出しはいつあるか?

民営化を進めるため、ゆうちょ銀行については、なるべく早期に国(親会社である日本郵政)の保有株を50%以下まで減らすように、処分を進める方針が決定しています。追加の売り出しがあれば、一時的に需給悪化から株価が下げる可能性もあるので、株主にとって、いつ売り出しがあるかは重大な関心事です。

ただし、親会社がいつ、どのような方法で保有株を処分するかについて、ゆうちょ銀行としてはノーコメントです。決算説明会でも、その質問は出ませんでした。

総務省の郵政民営化の担当者から、かつて私が聞いた話は、以下の通りです。郵政3社については、なるべく早く、国の保有株を「処分」して4兆円の資金を確保して、復興財源に当てることが決まっているが、いつ、どのような方法で処分するかは決まっていないということです。処分には、公募売り出しと、自社株買いに応じた売却の2通りがあるとのことでした。市場環境がよければ公募売り出しが増え、市場環境がよくなければ自社株買いに応じた売却が中心になると考えられとのことでした。

(4)業務範囲の拡大について、どのような取り組みが進んでいるか?

ゆうちょ銀行は、国債運用に収益を依存してきました。住宅ローンなどの貸し出しもほとんど行っていません。国債利回りが低下したことにより、業務の多角化が急務となっています。

  • 資金運用力の強化

外国証券などで超過収益をねらうサテライト・ポートフォリオを増やしていく方針です。国債で運用するベース・ポートフォリオは減らしていく方針です。運用資産全体に占めるサテライト・ポートフォリオの比率は、2010年3月末には9%(約17兆円)でしたが、少しずつ増やし続けてきた結果、2016年3月末では31%(約62兆円)になっています。

  • 住宅ローンに進出して積極的に増やすか?資金運用力の強化

貸し出し業務を拡大することも検討課題にあがっていますが、今から住宅ローンに進出して、積極的に残高を増やしていくことは、現時点では考えていないようです。日本の住宅ローンは過当競争で、利率が低くなり過ぎており、過当競争にさらに拍車をかけることは得策でないと考えているようです。

  • 手数料収入の拡大

金利収入への依存を下げて、手数料収入の比率を高めることが、経営の安定化につながるので、積極的に取り組んでいく方針です。前期は、為替・決算関連手数料592億円、投資信託関連手数料130億円、ATM関連手数料75億円などで、合計911億円の手数料収入を得ています。今後、投信販売の強化、コンビニへのATM設置などで、引き続き手数料収入の拡大をはかっていく方針です。

(5)資本政策次第で、ゆうちょ銀行の既存株主の投資価値は大きく変わる

ゆうちょ銀行は、配当性向(純利益のうち配当金に回る割合)について50%以上を目安とする従来方針を継続しています。今期の配当について、会社側では、9月中間配当を1株当たり25円、来年3月の本決算配当を25円で、合計50円を予想しています。19日の株価1306円で計算すると、配当利回りは3.8%と高く、低金利時代に、魅力的な好配当利回り株といえると思います。

国債利回り低下の影響で、減益が続くことがネガティブですが、それでも自己資本比率26.38%の強固な財務内容と、6兆円を超える有価証券評価益を持っていることを考慮すると、将来的な減配リスクは低いと考えます。

ただし、投資判断をする際に、むずかしいのは、政府保有株(ゆうちょ銀行では親会社日本郵政の保有株)の処分方法が、わからないことです。ゆうちょ銀行は、資本政策(親会社保有株の処分方法)次第で、既存株主の価値は、大きく変わります。

2つの極端な例を考えてみます。

  • 親会社保有株の処分を、すべて公募売り出しで行う。自社株買いはゼロ。

公募売り出しは需給面の悪材料ですので、常に、売り出しによる値下がりリスクを心配していなければなりません。また、自社株買いゼロならば、純利益の減少につれて一株当たり利益も減少するので、将来的に減配リスクが出る可能性もあります。

  • 親会社保有株の処分を、すべて自社株買いによって吸収する。公募売り出しはゼロ。

公募売り出しによる、需給悪化がない。さらに、自社株買いで、発行済み株式がどんどん減っていくので、その分、一株当たり利益が増加する。純利益が減少しても、一株当たり利益は減少しない可能性がある。あるいは、一株当たり利益が増加して、増配余地が高まる可能性もある。

超悲観ケース(①)では、ゆうちょ銀行の株はここからさらに下がることが見込まれます。ただし、超楽観ケース(②)では、ゆうちょ銀行株は、大きく上昇することが見込まれます。実際には①と②の中間のどこかで、総務省がさじ加減を考えるのでしょう。

このように、ゆうちょ銀行の実態利益には当面、低下圧力がかかるものの、ゆうちょ銀行は、自社株買いによって既存株主の投資価値を、大きく増加させることも可能です。国(親会社日本郵政)は、今後の市場環境を見ながら、保有株の処分を、売り出しによって行うか、自社株買いによって行うかを、決める方針としています。資本政策がわからないので、アナリストとして投資判断を出すのが、とても難しい銘柄となっています。

(6)日本郵政グループ3社の投資判断について

日本郵政グループ3社(親会社の日本郵政(6178)、子会社のゆうちょ銀行(7182)および、かんぽ生命保険(7181))は、いずれも資本政策次第で、既存株主の価値が減少することも増加することもあります。ゆうちょ銀行は、前期末で、6兆3947億円の有価証券含み益がありますが、かんぽ生命保険も、9兆5701億円と巨額の含み益があります。日本郵政は両社の親会社ですから、連結バランスシートに両社の含み益合算を保有することになります。

3社とも、国債利回りの低下が収益を圧迫することになります。政府持ち分の売却が予定されていることも同じです。詳しい説明は割愛しますが、現時点での株価で判断すると、ゆうちょ銀行の投資価値が相対的に高いと考えています。

(7)3メガ銀行の投資判断について

)について、ネガティブなニュースが出ていますが、株価はこうした悪材料に過剰反応して、売り込まれていると判断しています。詳しい説明は今日は割愛しますが、3メガ銀行はいずれも、好配当利回り銘柄として投資価値が高いと判断しています。みずほFG(8411)、三井住友FG(8316)、三菱UFJ FG(8306)3メガ銀行(

 

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