18日の日経平均は、前日比8円安の16,644円でした。為替が1ドル109円台の前半でやや膠着していることから、日経平均も大きくは動きませんでした。円高材料(1-3月の日本のGDPが予想以上で6月の追加緩和期待が低下したこと)と、ドル高材料(最近発表の4月の米景気指標が強めであること)が両方出ていることから、為替は円高にも円安にも大きくは動けませんでした。

19日の日本時間午前6時現在、1ドル110.20円まで円安が進みました。同時刻のCME日経平均先物(6月限)は16,725円です。

(1)4月の米景気指標は好調

4月の米景気指標を見ると、1-3月に失速した米景気が、やや持ち直していることを示しています。4月の雇用統計(非農業部門雇用者数)が弱く、米景気の先行きに不安が生じましたが、雇用統計以外の指標は、おおむね好調です。

  • 4月の米鉱工業生産指数は前月比+0.7%で、市場予想の+0.3%を上回りました。
  • 4月の米小売売上高は前月比+1.3%で、市場予想の+0.8%を上回りました。
  • 4月のCPI(消費者物価指数)は前月比+0.4%で、市場予想の+0.3%を上回りました。

1-3月の米景気が失速したことを受けて、米FRBは当分、利上げができないとの見通しが広がっていましたが、4月の米景気に持ち直しの兆しが出ていることを受け、年内に利上げが可能との見方が、復活しています。

5月18日時点のブルームバーグ調べでは、年末までにFFレートが何回引き上げられるかについての市場予想は以下の通りです。

  • 1回も引き上げなし→35.4%
  • 0.25%の利上げを1回だけ実施→41.8%
  • 0.25%の利上げを2回実施→18.6%
  • 0.25%の利上げを3回実施→3.9%
  • 0.25%の利上げを4回実施→0.4%

米利上げ回数が多ければ多いほど、日米金利差が開き、ドル高(円安)が進みます。ラフなイメージでは、年内の米利上げ回数が、ゼロならば為替は1ドル100-110円、1回ならば105-115円、2回以上ならば110-120円で推移するイメージを持っています。なお、楽天証券経済研究所では、米利上げは年内1回と予想しています。

(2)1-3月の日本のGDPは市場予想を上回る

昨日の朝8時50分に発表された1-3月GDP(速報値)は、前期比年率+1.7%で事前予想(+0.3%)を大幅に上回りました。ただし今年は、うるう年要因【注】で、1-3月のGDPが前期比年率で約1.1%かさ上げされています。うるう年要因を除くと、実質約0.6%の増加だったことになります。

【注】うるう年要因:今年はうるう年なので2月が29日までありました。その結果、1-3月の日数が91日となり、通常(うるう年以外の90日)よりも1日多くなっています。1÷90=0.011(1.1%)ですので、GDPの数字が例年に比べ、約1.1%かさ上げされることになります。

なお、2016年4-6月のGDPの成長率は、うるう年要因で、逆に前期比年率で約1.1%低く出ることになります。一部で、4-6月のGDPがマイナスになるとの予想が出ていますが、それはうるう年要因を含めての話です。仮に、4-6月のGDPが前期比年率で▲1.1%になるとすると、実質では横ばいだったことになります。

実質年率0.6%の成長では、成長率は低く、決して強いと言えません。ただし、実質マイナス成長と考えられていた事前予想に比べると、良い数字と言えます。

実質GDP成長率(前期比年率):2012年1-3月~2016年1-3月(速報値)

(出所:総務省、ミニ景気後退の判断は楽天証券経済研究所)

(3)1-3月GDPが予想以上だったことに対する市場の反応

1-3月GDPが予想以上であったことにより、10-12月に続いて実質2期連続マイナス成長の「ミニ景気後退」状態と判断されることを免れることができました。ただし、昨日の日本株市場は、この事実を買い材料ととらえることはできませんでした。これには、3つの理由があります。

  • ミニ景気後退と判断されれば、消費増税延期のダメ押しとなるはずだった

実質2期連続のマイナス成長ならば、来年4月に予定されている消費増税の延期が正式に決定される可能性が高まると考えられていました。安倍首相は、増税延期に傾いていると推定されますが、自民党内に予定通り増税を実施すべきとの意見もあり、最後に安倍首相が翻意する可能性は残っています。

  • ミニ景気後退と判断されれば、日銀が6月にも追加緩和を実施する期待が高まるはずだった

日銀の黒田総裁は、マイナス金利導入の効果が出るのを待たずに、次の手(さらなる追加緩和)を打つことも考えていると発言しており、1-3月GDPが実質マイナスならば、追加緩和の期待が高まるところでした。

  • ミニ景気後退と判断され、追加緩和期待が高まれば、円安が進む可能性もあった

4月の米景気指標が好調で米FRBの年内利上げの思惑が復活する中、6月にも日銀の追加緩和があるとみなされれば、円安(ドル高)が進む可能性がありました。ところが、日本の1-3月GDPが予想以上だったため、円安が進みにくくなりました。

なお、18日の東京市場では、銀行株が大幅に上昇しました。日銀の追加緩和で長期金利がさらに下がり、銀行の利ザヤがさらに縮小する不安が、銀行株が下がる要因となっていました。ところが、GDPが予想以上で6月追加緩和の期待が低下しました。それは、18日の銀行株にはプラスに効きました。