先週の日経平均は、1週間で305円上昇して16,412円となりました。日本から円高をけん制する要人発言が相次ぎ、一時1ドル109円台まで円安が進んだことを好感して、日経平均は上昇しました。

ただし、米国のルー財務長官は、13日の講演で、日本の円売り介入を再度けん制する発言をしました。日本に対し、為替介入ではなく「構造改革を先に行うべき」と話し、「介入の用意がある」との発言を繰り返す麻生財務相をけん制した形となりました。日米要人の為替に関する発言の応酬を受け、ドル円為替レートは、神経質な動きが続いています。13日のNY市場で、為替は1ドル108.58円で引け、CME日経平均物(6月限)は16,390円でした。

安倍首相が来年4月の消費増税を延期する方針を固めたことは相場の下支え材料となりますが、円高の不安が払拭されないため、日経平均は目先、16,000円台で上値の重い展開が続きそうです。

(1)今週の注目イベント

5月18日(水)8時50分 日本の1-3月GDP成長率(速報値)発表

事前の市場予想では、前期比年率0.3%増です。もし、その通りに出れば、実態は10-12月(前期比年率▲1.1%)に続いて2期連続のマイナス成長であったことになります。今年はうるう年で、2月の日数が1日多くなっています。GDP統計はうるう年要因を修正していません。うるう年要因で1.2%(非年率)成長率が押し上げられているので、市場予想通りの小幅増加ならば、実態はマイナス成長だったことになります。

政府自民党は2017年4月に予定されている消費増税を延期する方向に傾いており、1-3月が実質マイナス成長となれば、その判断を後押しします。

実質GDP成長率(前期比年率):2012年1-3月期~2015年10-12月期

(出所:総務省、ミニ景気後退の判断は楽天証券経済研究所)

5月20日(金)-21日(土)仙台G7財務相・中央銀行総裁会議

ルー米財務長官は、仙台G7で「通貨安競争回避の公約を強化すべき」と発言しています。4月13日のワシントンG7で「為替市場の動きは秩序的だ」と発言し、急激な円高に対して為替介入を考えている日銀をけん制した経緯がありますが、その後も日本から為替介入を示唆する発言が続いていることから、再び日本をけん制する発言を始めています。米国内では相変わらず、共和党の有力候補ドナルド・トランプ氏と、民主党の有力候補のヒラリー・クリントン氏が、日本を為替操作国として批判を続けています。仙台G7で為替についてどういう議論が行われ、それを受けて為替がどう動くか、注目されます。

(2)月内発表見込みの景気対策に注目

5月26-27日に伊勢志摩サミットが開かれます。伊勢志摩サミットでは、世界経済の下ぶれ懸念にどう対処すべきか議論される見込みです。議長国の日本は、サミット開催に合わせ、月内になんらかの景気対策を発表してくる見込みです。

安倍首相は、これに先立ち、欧州を歴訪し、5月4日にはドイツのメルケル首相と会談して、ドイツに(世界景気下支えのために)財政出動を要請しています。ドイツに拒否されていますが、提案国の日本でも、当然、財政出動をともなう景気対策を用意していると思われます。サミット前後に政府が発表する、景気てこ入れ策と構造改革(骨太の方針)の中身に注目が集まります。

なお、安倍首相は2017年4月に予定されている消費増税を延期する方針を固めた模様です。サミット後に正式発表する見込みです。消費増税延期は、野党からも反対が少ないため、衆院解散はない見込みです。

(3)3月決算の全体像がほぼ見えた、今期は1.4%程度の経常増益見込み

東証一部上場企業の今期(2017年3月期)経常利益(会社予想)は、前年比で小幅減益になると、途中経過では見込んでいました。ところが、その後、さらに決算データが追加され、どうやら小幅増益になりそうです。今期の見通しが改善したわけではありません。前期実績が当初見込みより落ち込み、今期はその反動で小幅増益となるだけです。

5月13日までに3月決算を発表した東証一部上場企業のうち、今期経常利益の見通しを発表している1375社で見ると、今期経常利益は1.4%の増益となる見込みです。三菱UFJ FG(8306)・あおぞら銀行(8304)などが今日(5月16日)3月決算を発表しますが、それで3月の決算発表は完了する見込みです。