11日の日経平均は13円高の16,579円でした。朝方、為替が109.15円と円安水準にあったため、一時249円高の16,814円まで上昇しました。ただし、大引けにかけて、為替が108.60円とやや円高に動くと、日経平均は上昇幅を縮小しました。

12日の日本時間午前5時50分現在、1ドル108.46円です。同時刻のCME日経平均先物は16,430円でした。

今日は、大詰めを迎えた3月決算のこれまでのまとめを書きます。

(1) トヨタ自動車(7203)が決算を発表

11日大引け後にトヨタが発表した連結営業利益は、前期(2016年3月期)が2兆8,539億円(前年比+3.8%)で、最高益を更新しました。ところが、今期(2017年3月期)については連結営業利益が1兆7,000億円(前年比▲40.4%)と、1兆1,539億円の減益予想を発表しました。市場予想(▲6%程度の減益)を大幅に下回るネガティブ・サプライズでした。

同社の発表資料によると、今期に見込む1兆1,539億円の営業減益の主な要因は、為替(円高)が▲9,350億円、諸経費の増加ほかが▲5,400億円です。諸経費ほか▲5,400億円には、タカタのエアバックにからむリコール費用など引き当て▲1,500億円が含まれています。一方、今期見込む主な増益要因としては原価改善努力+3,400億円があります。なお、今期のトヨタグループ全体(ダイハツ・日野ブランド含む)の販売台数計画は1,015万台(熊本地震に伴う工場稼働停止の影響を織り込まないベース)で、前期(1,009.4万台)から0.6%増える計画となっています。

円高(▲9,350億円)だけで、今期の営業減益のほとんどが説明できると考えることができます。今期予想の前提となる為替レートは、1ドル105円、1ユーロ120円で、前期の平均決済レート(1ドル120円・1ユーロ133円)から大幅な円高になります。ただし、足元のレート(1ドル約108円、1ユーロ約124円)よりも、さらなる円高水準を前提としています。足元のレートで業績予想を作り直すと、1,400億円程度、今期の予想営業利益が上乗せされると推定されます。その分、若干、保守的な計画と言えます。

(2) トヨタ1社で今期の減益はほぼ説明できる

東証一部で、11日までに前期(2016年3月)決算実績と今期(2017年3月期)業績予想を発表した715社について、今期の連結経常利益(会社予想)を集計すると、前期比で▲5.12%の減益予想となっています(SEC基準・IFRS採用企業は、連結税前利益を経常利益として集計)。例年通り、保守的(低め)な予想と考えられますが、期初予想で見る限り、今期減益が見えてきたと言えます。

ただし、ここまでの集計では、トヨタ1社で全体の減益がほぼ説明できます。トヨタを除く714社だけで集計すると、今期の連結経常利益は、前期比▲0.04%で、ほぼ横ばいの予想となります。

(3) 今期経常利益(会社予想)で、増・減益額が大きい企業

東証一部で11日までに3月決算を発表した715社で集計すると、以下の通りです。

 

2017年3月期の連結経常利益(会社予想)で増益額の大きい10社

(単位:億円)

No コード 銘柄名 前期実績 今期予想 増益額
1 5020 JX HLDG ▲ 86 2,600 2,686
2 8001 伊藤忠商事 3,227 4,630 1,403
3 9437 NTTドコモ 7,780 9,140 1,360
4 5019 出光興産 ▲ 219 1,120 1,339
5 8002 丸紅 906 1,900 994
6 6752 パナソニック 2,170 3,000 830
7 7011 三菱重工業 2,725 3,300 575
8 8572 アコム 162 653 491
9 7013 IHI 97 550 453
10 4528 小野薬品工業 333 750 417
 

2017年3月期の連結経常利益(会社予想)で減益額の大きい10社

(単位:億円)

No コード 銘柄名 前期実績 今期予想 減益額
1 7203 トヨタ自動車 29,834 19,000 ▲ 10,834
2 9531 東京瓦斯 1,888 400 ▲ 1,488
3 9502 中部電力 2,556 1,300 ▲ 1,256
4 6954 ファナック 2,294 1,281 ▲ 1,013
5 6301 小松製作所 2,049 1,450 ▲ 599
6 9532 大阪瓦斯 1,350 780 ▲ 570
7 7261 マツダ 2,236 1,760 ▲ 476
8 4536 参天製薬 795 390 ▲ 405
9 6503 三菱電機 3,185 2,800 ▲ 385
10 6981 村田製作所 2,792 2,410 ▲ 382

(注:SEC基準・IFRS採用企業は連結税前利益を経常利益とみなす。楽天証券経済研究所が作成)

増益貢献の大きい銘柄のほとんどが、前期にあった資源関連の減損や在庫評価損がなくなる効果です。増益貢献が一番大きいJXは、前期の在庫影響(▲2,695億円:高値の原油在庫をかかえることによる収益悪化)がなくなる効果が、今期の経常利益の増加要因となります。貢献度第4位の出光も同じで、原油の高値在庫がなくなる効果が主な増益要因となります。伊藤忠・丸紅は、主に資源権益の減損がなくなる効果が、増益に寄与します。今年に入ってから、原油を始めとした資源が一斉に反発しつつあることが、日本企業の今期増益に貢献していることがわかります。

減益額が大きい方では、トヨタ・小松・マツダなど、輸出企業が上位に入っています。円高が大きな減益要因となっています。また、電力・ガスも、減益額上位に入っています。前期、電力・ガス業界は原料安(LNG価格の低下)が増益要因になりましたが、今期は原料安を受けた料金の引き下げが主な減益要因になります。