ゴールデンウイークの谷間となった5月2日の日経平均は、円高進行を嫌気して518円安の16,147円となりました。今日は、ゴールデンウイーク中の海外市場の動きと、米景気の現状についての考え方を報告します。

(1)為替の動き

現在の日本株の動きにもっとも大きい影響を及ぼしているのは、為替です。まず、為替から報告します。

ドル円為替レート推移:2016年1月1日―5月5日(日本時間19時)

ゴールデンウイーク中の5月3日に一時、1ドル105.50円まで円高が進みました。ただし、その後、円高進行の速さに対する警戒からドルに買い戻しが入り、1ドル107円台の前半まで円安に戻っています。今朝(5月6日)の午前6時現在は、1ドル107.26円となっています。

先日のレポートに書いた通り、円高急伸の背景は、以下の3点です。

  • 4月28日に日銀が追加緩和を見送ったこと。
  • 米国の利上げ見通しが低下したこと。
  • 米国が、日本を為替操作(円安誘導)国に指定し、監視するとしたこと。

それでは、休暇中に105.50円まで円高を試してから、一旦107円台まで円安に戻した理由は何でしょうか?短期筋の注目点は以下の2点と思います。

  • 日銀による(円売り・ドル買い)為替介入への警戒

短期筋は、「(米国からの政治的圧力介入によって)介入はできない」と踏んで、円買いを進めてきました。万一、介入があると一時的に大きく円安に戻る可能性もあるので、円急伸後には、一旦(円の)利益確定売りを入れるようにしています。米国が賛同しないドル買い介入をやる場合、海外での委託介入(日銀が欧米の中央銀行に為替介入を委託すること)は不可能なので、東京市場でやるしかありません。短期筋から見ると、円高は海外市場の方が仕掛けやすくなっています。最近、円が高値を取るのはロンドン市場が多くなっています。一方、海外で円高を進むと、東京市場に戻る前に、一旦、円買いポジジョンを手仕舞いたいとの心理も働きます。

  • 5月6日に重要イベント(4月の米雇用統計発表)を控えていること

雇用統計が強く、6月利上げの見通しが復活すると、ドル買い(円売り)に動く可能性もあるので、雇用統計の内容を見極めたいとの気持ちもあります。

(2)CME日経平均の動き

為替を見ながら、動いています。一時105.50円まで円高が進んだ5月3日には、一時15,825円まで下がりました。その後、107円台まで円安に戻りましたが、まだ円高トライが終わったと判断できないことから、日経平均先物は上値が重いままです。5月5日のCME日経平均先物(6月限)は、16,045円(5月2日の日経平均終値と比べて▲102円)となっています。

(3)米景気は強いか弱いか?今晩発表の米雇用統計に注目

円高トライが終わらない限り、日経平均の本格的な反発は難しいと思います。円高が終わり、ドルが買われるためには、米景気が強く、6月にも利上げがあり得るとの見方が広がることが必要です。鍵を握るのは、4月以降の米景気の状況です。米景気は昨年まで堅調を維持してきましたが、今年の1-3月は減速感が出ました。1-3月の米GDP(速報値)は、前期比年率0.5%増に減速しました。

1-3月はドル高によって製造業の業績が悪化しました。また、原油急落によってシェールガス・オイル産業など石油関連産業の業績が悪化しました。今、発表中の、1-3月の米企業業績も冴えません。

ただし、4-6月には米景気が改善している可能性があります。足元、ドルが主要通貨に対して全面安となり、また、原油価格が急反発しているからです。4-6月の景気指標を見ながら、6月利上げの可能性を探っていくことになります。その試金石として、今晩、発表になる4月の米雇用統計は、重要です。

なお、ゴールデンウイーク中に発表された4月のISM製造業・非製造業景況指数は、堅調でした。

米国ISM製造業・非製造業景況指数の推移:2014年1月―2016年4月

(出所:米ISM供給管理公社)