4月28日(木)に日銀金融政策決定会合の結果が発表されました。「追加緩和なし」の結果を受け、1ドル108円台まで円高が急伸し、日経平均は前日比624円安の16,666円まで急落しました。日本が休日であった4月29日(金)に、海外市場で1ドル106.31円とさらに円高が進み、CME日経平均先物(6月限)は、15,860円(28日の日経平均終値比▲806円)まで下がっています。今日の日経平均は続落が見込まれます。

(1)止まらない円高

ドル円為替レート推移:2016年1月1日―4月29日

円高急伸の理由は、以下3点です。

4月28日に日銀が追加緩和を見送ったこと

何らかの追加緩和があるとの期待を織り込んで、事前に円安・株高が進んでいたので、緩和見送りがネガティブ・サプライズとなりました。黒田日銀総裁は、引き続き、必要な時に追加緩和を実施すると表明していますが、マイナス金利導入が市場機能をゆがめたことへの批判も多く、日銀にもはや打つ手がなくなってきているとの見方も広がっています。

日銀金融政策の手詰まり感は、もともとありました。日銀の一手買いで、国債の流動性が低下していることから、これ以上国債など債券の買い取り額(現在年間80兆円)を増やすのは難しいと考えられていました。マイナス金利導入で、年金財政の悪化など問題が生じていることから、マイナス金利のマイナス幅拡大も、難しくなりつつあります。

そこで、日銀が日本株ETFの買い取り額を大幅に増やす追加緩和や、銀行にメリットを与える新型緩和(貸付支援基金に日銀がマイナス金利で融資する内容)を予想する声が出ていました。

ところが今回、日銀はインフレ目標の達成時期をさらに先送りしたにもかかわらず、追加緩和は実施しませんでした。日銀としては打つ手がないとの印象を深めました。追加緩和見送りを発表した後の記者会見で、黒田総裁は、日銀によるマイナス金利貸し出しに対して、「そういうことを考えたことも、議論したこともない」と否定しました。

米国の利上げ見通しが低下したこと

4月27日にFOMC(米金融政策決定会合)の結果が発表されました。事前予想通り、利上げはありませんでした。ポイントは、6月に利上げがあるか否かです。4月28日発表の、米国1-3月GDP(速報値)が、前期比年率0.5%増と、予想以上に低く、米景気も減速しつつあるとの見方につながり、6月利上げも難しいというムードが広がりました。

米国で、日本を為替操作国とする批判が続いていること

米大統領選で共和党の有力候補ドナルド・トランプ氏が日本を為替操作(円安誘導)国として批判していることも、円高を進める影の力となっています。トランプ人気がなかなか下火にならず、民主党有力候補者のクリントン氏も、日本の為替操作を批判する発言を始めています。トランプの過激発言がエスカレートし、米国内でマイノリティ(少数民族)や女性の反感を買い、一時、トランプ人気が下火になる思惑も出ていましたが、足元、予備選でトランプ氏は勝ち続けています。共和党主流派がトランプ降ろしに動きましたが、その効果も出ていません。

こうした環境下、日銀は、為替介入(円売り介入)や、さらなる大規模追加緩和に踏み込みにくくなっています。また、米FRBは、ドル高(円安)につながる追加利上げを実施しにくくなっています。

(2)今週は、米国で重要指標の発表が続きます

6月利上げが難しいとの見方が広がれば、さらに円高を進めるリスクがあります。一方、米景気指標が強く、6月利上げもあり得るとの見方が広がれば、円高を止める要因となります。

  • 5月2日 4月の米ISM製造業景況指数
  • 5月4日 4月の米ISM非製造業景況指数 3月の米貿易収支 3月の米製造業受注
  • 5月6日 4月の米雇用統計