今日の昼、日銀金融政策決定会合の結果が発表されます。「追加緩和なし」あるいは「期待はずれの小粒の緩和」になると日経平均が売られ、「期待以上の追加緩和実施」ならば買われるというのが、投資家のイメージです。ただし、実際に発表された後は、もっと複雑な反応をする可能性もあります。

今日は、イベント前の心の準備について書きます。イベント前後に短期トレードを試みる場合の注意点となります。

(1)12月・1月の金融政策発表後に起こったことを頭に入れておく

昨年12月18日、また、今年の1月29日、日銀会合の結果発表後に、マーケットが大荒れになりました。投資家は、今回も結果発表後に日経平均が乱高下する可能性があると、身構えています。昨年12月と今年1月、日銀会合の結果発表後にどういうことが起こったか、まず振り返りましょう。

(2)昨年12月18日の日経平均は急騰後に急落

2015年12月18日の日経平均の動き

昨年12月18日、昼に金融政策決定会合の結果が発表されました。日本銀行が買い取る日本株ETFを年間3兆円から3兆3000億円に増額すること以外、特に大きな変更はありませんでした。それでも、「追加緩和があった」の第一報を受けて、日経平均は昼から一時急騰しました。ただし、まもなく内容が小粒で評価できないことが市場に伝わり、日経平均は急落を始めました。この日の日経平均は、前日比366円安となりました。

大引け後、「日銀の追加緩和は失敗だった」の声が広がり始めているとき、日銀から以下の発表がありました。「あれは追加緩和ではない。緩和補完策である。いずれ、必要な時に追加緩和を実施する」。

評価できない内容だったのに、なぜ、投資家は一時、日経平均を急騰させたのでしょうか?それには、結果発表前の投資家の気分が影響しています。投資家の頭には、前年10月31日の黒田バズーカのイメージがありありと焼きついていました。2014年10月31日、日銀が市場の想定を越える大規模追加緩和(黒田バズーカ)を発表すると、日経平均は一貫して上昇を続け、この日は前日比755円高となりました。黒田バズーカの効果で、円安も進み、この日以降も、日経平均の上昇が続きました。この時の経験が強烈だったために、投資家には、「黒田日銀が追加緩和を発表すれば日経平均が急騰する」という記憶が刷り込まれました。

2014年は消費増税後の日本の景気が予想外に弱く、黒田日銀による追加緩和を期待する声が増えていました。ところが、2014年6月以降、黒田総裁は「追加緩和は、今は必要ない」を繰り返すばかりでした。黒田総裁が消極的発言を続けるため、次第に市場では、「黒田日銀はこれ以上の緩和をやる気がない」との見方が広がりました。「追加緩和をやれば日経平均は急騰するのに、やる気がない」が市場コンセンサスでした。

そこで、飛び出したのが、12月18日の緩和補完策だったのです。内容を精査することなく、「追加緩和が出た!」の一言に反応して、短期筋が一時、日経平均を買い上げ、その後失望から投げ売りになりました。

(3)今年1月29日の日経平均は、急騰後急落し、その後買い戻されて大幅上昇

2016年1月29日の日経平均の動き

非常に複雑な反応になったのが、1月29日の日銀会合結果発表後の日経平均です。追加策発表を受けて、まず急騰しました。「マイナス金利導入」という、マーケットで想定外の緩和策が発表されたことが好感されました。ところが、すぐに利益確定売りが増加し、急落を始めました。急騰後に急落した昨年12月18日の記憶が新しかったので、早めに利益確定しようとの動きが出ました。売りが売りを呼んで、急落となりました。ところが、その後の動きが圧巻です。市場で、「日銀が発表したマイナス金利政策は、効果絶大」と内容を評価する声が増え始めました。買いが買いを呼び、結局、この日は前日比476円の大幅高になりました。

なぜ、このような複雑な反応になったのでしょうか。それにも、イベント前の投資家の気分が影響しています。1月29日の結果発表前の投資家の気分はだいたい以下のようなものでした。

  • 月の緩和補完策が失敗に終わったが、日銀は必要なら追加緩和をやると言っていた。デフレ色が深まっているので、なんらかの追加緩和が発表される可能性がある。
  • ただし、日銀の打つ手は限られる。債券の買い取り額を大幅に増やしても、緩和効果はあまりない。マイナス金利を導入すると効果があるが、黒田総裁はマイナス金利の導入に一貫して否定的発言を繰り返している。
  • 昨年12月の緩和補完策発表後、日経平均は急騰後急落した。追加緩和発表後に、日経平均が急騰したら早めに売った方がいい。

以上のような気分の中で、マイナス金利の導入が発表されました。意外な内容に、日経平均はまず急騰しました。ところが、上がったら早めに売ると決めていた投資家が多かったので、すぐに急反落しました。ただし、その後、マイナス金利の効果は大きいと評価する声が増えて、再度、大きく上昇しました。

(4)現在の投資家の気分はどうか?

今日の昼に、日銀会合の結果が発表されます。発表前の投資家の気分は、どういうものでしょうか?

  • 月と1月の結果発表後のマーケットが荒れたので、今回も荒れる可能性がある。緩和がなければ失望で売られそう。あった場合は、その内容次第で、急騰も急落もあり得る。緩和があってもなくてもマーケットが荒れる可能性がある。
  • 銀行にダメージを与える従来型の緩和(マイナス金利幅の拡大)ならば、あまり好感されない。一瞬好感されても、すぐに売り直される可能性が高い。
  • 銀行にメリットを与える新型の緩和(貸付支援基金に日銀がマイナス金利で融資する内容)ならば、好感されて日経平均は大きく上昇するだろう。ただし、12月も1月も上昇の後、売られている。ゴールデンウイーク連休を控え、大きなポジションを取りにくいので、日経平均が上昇したら早めに売った方がよさそう。
  • 日本株ETFの大幅買い増し(年間買い取り額を数兆円レベルで拡大)ならば、市場への実弾投入となる。日経平均は上昇するだろう。ただし、金額が大きくなければ、失望につながる可能性もある。

いろいろ書きましたが、今日の昼過ぎには、結果が出ています。日銀が発表する政策内容と、その後の黒田総裁の発言、マーケットの反応に注目したいと思います。