18日の日経平均は、前日比572円安の16,275円と急落しました。建設・土木関連株の上昇が目立ちましたが、それを除くと、ほぼ全面安となりました。先週末に出た3つの悪材料が急落要因となりました。①17日のドーハ産油国会議にイランが出席せず原油増産凍結の合意ができなかったこと、②15日ワシントンG20で米国がドル安(円高)容認を打ち出したこと、③熊本地震で大きな被害が発生したこと。

18日の海外市場では、原油が急落後、持ち直しました。原油が持ち直したことを好感し、NYダウは9カ月ぶりに18,000ドルを回復しました。CME日経平均先物(6月限)は16,645円(18日の日経平均終値より370円上回る水準)でした。

(1)今日の日経平均は上昇が見込まれます

原油の下げが予想よりも小幅だったことが今日は、好感されそうです。円高も今のところ進行していません。19日の日本時間午前6時現在、1ドル108.82円です。WTI原油先物(期近)は同時刻で、前週比1バレル0.58ドル安の39.78ドルです。一時37.60ドルまで下げましたが、その後、持ち直しました。産油国クウェートで大規模ストがあり、原油生産が縮小する思惑から原油の下げ幅が縮小しました。17日のNYダウは下げて始まりましたが、原油が下げ幅を縮小すると、反発に転じ、9カ月ぶりに18,000ドル台を回復しました。

(2)建設・土木関連株が上昇

熊本地震で、道路・橋・鉄道・上下水道・電気・ガスなどライフラインに大きな被害が発生したことを受け、復旧に向けて、早急な手がとられるという思惑から、17日の株式市場では、建設・土木関連株の上昇が目立ちました。

建設事業より、土木事業に焦点が当たっています。直下型地震による地すべりでライフラインに大きな被害が出たことから、復旧・防災に、地盤強化が必要との思惑が出ています。地盤改良・強化を手がける会社の値上がり率が高くなりました。

4月17日の東証1部値上がり率 上位10銘柄

(注:楽天証券経済研究所が作成)

(3)熊本地震が日本経済に及ぼすマイナス影響は甚大

熊本地震は、日本株および日本経済にさまざまな面で多大なマイナス影響を及ぼします

  • 半導体・自動車部品工場が停止

    九州はシリコン・アイランドと言われ、半導体関連の工場が集積しています。また、トヨタ・ホンダ・日産系の自動車部品工場も集積しています。熊本地震によって半導体・自動車関連の工場が一斉に停止しており、サプライ・チェーンでつながった全国の工場に影響が及びます。これから発表される2017年3月期の業績予想に、下方圧力が及ぶ可能性があります。

  • 外国人投資家の日本株投資意欲にマイナス

    日本が常に大規模震災のリスクをかかえる国であることが再認識され、外国人投資家による日本株への投資意欲を低下させる可能性もあります。

  • インバウンド需要への悪影響

    もっと直接的なマイナス影響が懸念されるのは、インバウンド(訪日外国人観光客)需要です。震災の影響で、日本への旅行をキャンセルする動きが出てきている模様です。

訪日外国人観光客数の月次推移:2011年1月―2016年2月

(出所:日本政府観光局(JINTO)より楽天証券経済研究所が作成)

東日本大震災が起こった2011年3月から、外国人観光客数が大きく減少しました(上のグラフの赤矢印参照)。夏場の観光シーズンも含めて2011年いっぱい、外国人観光客は、2011年1月の水準(月間71万4千人)を超えられませんでした。その水準を超えたのは、2012年4月からでした。

今回も、マイナス影響が出ると考えられます。中国景気の悪化、円高・人民元安などの逆風があっても、大きく減ることのなかった中国人観光客数が目先、減少する可能性があります。

ただし、2011年ほど、マイナス影響が長引くことはないと思います。2011年は、震災の影響そのものよりも、原発事故による風評被害が外国人の訪日に大きなマイナス影響を及ぼしたからです。