先週の日経平均は、円高進行を嫌気し、1週間で342円下がって15,821円となりました。7日(木)には一時1ドル107.66円をつけました。ただし、8日(金)の東京市場では一時1ドル108.99円まで円安に戻ったので、8日の日経平均は71円高でした。8日午前に麻生財務大臣が、急激な円高を「一方向に偏った動き」とし、「場合によっては必要な措置を取る」と述べたことを受けて、日銀による介入への警戒感から東京市場で円安が進みました。ところが、実際には介入はなく、8日のNY市場で再び1ドル108.09円まで円高が進んでいます。8日のCME日経平均先物(6月限)は、15,775円でした。

(1)今週の日経平均見通し

今週の日経平均は、外国人投資家の売りと国内投資家の買いが続き、一進一退の動きと考えています。引き続き、為替の動きに神経質な展開となるでしょう。日銀が円売り介入を実施するとの思惑が広がり、円安が進めば日経平均も上がりますが、4月14日(木)にワシントンでG20が開催されますので、その直前に為替介入を実施するのは難しいという見方が優勢と考えます。円高が一段と進行すると、日経平均がさらに売り込まれる可能性もあります。

(2)円高への警戒が続く

ドル円レートで、投機筋の円買いポジションが増加しつつあります。ドル円で勝負する為替ディ-ラーの短期的な関心事は、以下の4点となっています。

  • 日銀の為替介入(円売り・ドル買い)の有無?
  • G20で通貨安競争について、行われる議論
  • 米大統領選でのトランプ氏およびクリントン氏の、日本の為替政策をめぐる発言
  • 米国の今後の利上げに関する、米金融当局の要人発言

これまでは、①ー④のすべてが円高を進める方向に働いていました。この4点に、今後、なんらかの変化があるかないかが、注目点です。

  • 介入の可能性

    今、日銀が介入を行うと「為替操作国」のレッテルを貼られるリスクがあるので、介入を行えないと考えられています。7日に菅官房長官が、8日に麻生財務大臣が急激な円高に歯止めをかけるための介入をほのめかしましたが、今のところ、口先介入ととらえられています。実際に介入があるかないか、注目されています。もし本当に介入を行えば、投機筋は一斉に追随しますので、一時的に円安が進みます。

  • G20での議論

    2月の上海G20では、日本を名指しはしないものの、「通貨安競争は良くない」という議論が行われました。今週4月14日(木)からワシントンで開かれるG20で、通貨安競争について、どのような議論がされるか注目されています。

  • トランプ・クリントン発言

    これまで、トランプ氏が日本を為替操作(円安誘導)国と強く非難しています。クリントン氏も影響を受け、日本の為替操作を批判しています。米国は公式には日本の為替政策を批判していませんが、本音では円安(ドル高)を容認できなくなってきていると、考えられています。今後、トランプ人気がさらに高まるか低下するかが、心理的に為替にも影響しそうです。また、トランプ発言に合わせて日本の為替政策を批判するクリントン氏の真意がどこにあるかも問われます。選挙期間の中の単なる人気取りか、本音に近いのか、今後のクリントン発言にも注目が集まります。

  • 米国の追加利上げをめぐる要人発言

    イエレンFRB議長が利上げに慎重な発言をしてから、米国で、早期利上げはないとの見方が広がっています。ただし、米コア・インフレ率が2.3%まで上がっている現状から、米金融当局者の本音は、早期利上げを望んでいると考えられます。2つの配慮から、今は利上げの議論がしにくくなっていると考えられます。1つは、世界経済および世界の金融市場が不安定になる中、米国が利上げを実施すると、悪影響が及ぶことへの配慮です。もう1つは、選挙期間中のトランプ発言の影響です。ドル高によって米製造業の業況が悪化していることを問題視する発言が続いており、さらなるドル高につながる利上げの議論を今は行いにくくなっています。