31日の日経平均は、前日比120円安の16,758円でした。1ドル112円台前半に、円高が進んでいることに加え、本日の夜に重要イベント(3月米雇用統計の発表)を控え、手仕舞いの売りが出た可能性もあります。

また、3月期末特有の需給要因も影響した可能性があります。

(1)3月末特有の需給要因

3月29・30・31日は、公的年金の買いが出にくいと推定されます。1-3月の日本株は、公的年金の買いによって支えられてきたので、公的年金の手口が小さくなると、反落しやすいといえます。

31日に日本取引所グループが発表した主体別需給(2市場1・2部)によると、3月第4週(22-25日)は、外国人投資家が12週連続で日本株を売り越す中、信託銀行(主に公的年金)が18週連続で日本株を買い越しました。日経平均の下落局面で日本株を買い増ししてきた個人投資家も、先週は小幅ながら売り越しとなりました。

日本株の主体別売買動向・売買代金差額(2市場1・2部抜粋):
2016年1月4日―3月18日

(単位:億円)

期 間 外国人 信託銀行 個 人
2月29日-3月4日 -954 2,813 -1,989
3月7日-11日 -11,932 737 2,038
3月14日-18日 -4,580 182 1,875
3月22日-25日 -2,043 1,831 -205
合  計 -19,509 5,563 1,720

(出所:日本取引所グループ資料から作成)

日本株は、公的年金の買いによって支えられていることがわかります。その公的年金の買いは、3月受渡し最終売買日(3月28日)まで出ていたと推定されますが、3月29日からは4月受け渡しとなるので、買いが一巡している可能性があります。3月29・30・31日の3日間は特に、公的年金が大きくは売買を行いにくい時期であったと推定されます。

(2)4月からの需給要因

昨日「新年度になると機関投資家から新たなマネーが流入するということを聞いたことがありますが、2016年度はその影響がどのように現れるのか考察をお願い致します」というご質問をいただきました。今年4月から海外の機関投資家がどう動くかは、投資環境次第であり、正直わかりませんが、国内の機関投資家について言うならば、4月から新規マネーが入るというお話しは少し古いな、と思います。

  • 特金を使った金融機関の運用は減少

かつて、3月は決算対策の売りで下がりやすく、4月は新年度入りで機関投資家の買いが入りやすいと言われたことがありました。日本の金融機関が特定金銭信託(通称「特金」)を使って日本株での資金運用を積極的におこなっていた時代には、3月決算前に一度ポジションを落として、4月から再度、ポジションを作るということがありました。その時は、確かに4月に新規マネーが入りやすかったと思います。

ただし、今は、日本の金融機関が特金を使って積極的に運用をおこなう時代ではありません。3月の決算対策売りも、4月の新規マネーも、古い言葉になりつつあると思います。

  • 企業年金が運用を拡大する時代ではなくなっている

企業年金が運用を拡大していた時代には、4月から追加の運用資金が入りやすく、新年度入りで年金の買いが期待されたことがありました。ところが、今、企業年金は、運用を縮小する時代に入っています。企業が年金運用で財務リスクを負うことを避けるため、リスク資産(株式など)での運用を縮小し始めています。また、設立年数の古い年金基金では、だんだん新規積み立てより、拠出が多くなる時代となりました。4月から企業年金の買いが入ることも期待できません。

  • 公的年金の買いは目先一巡する可能性もある

年金で積極的に株などリスク資産への投資を増やしてきたのは、公的年金です。約130兆円の運用資産を持つGPIFが日本株の組み入れ比率を大幅に引き上げたことが知られています。ただし、株式組み入れ比率の引き上げは一巡しつつあります。

以下に示すとおり、12月末時点で、GPIFの日本株の組入比率は23.35%まで上昇しており、基本ポートフォリオの組み入れ比率25%に近づいています。1月からの日本株の下落で時価ベースの組み入れ比率は一時減少したと考えられますが、その分も含め、1-3月に公的年金は日本株を買い増ししたと推定されます。4月からさらに日本株を買い増す余力は、さほど大きくないと推定されます。

GPIFの基本ポートフォリオと、2015年12月末時点の資産構成比

  基本ポートフォリオ 乖離許容幅 12月末の資産構成
国内債券 35% ±8% 37.76%
国内株式 25% ±6% 23.35%
外国債券 15% ±5% 13.50%
外国株式 25% ±5% 22.82%
短期資産 0%   2.57%

(出所:GPIF)

去年は、公的年金と日銀の買いが日本株を支えました。ここから公的年金の買いは徐々に減少してくると思います。日本銀行の日本株ETF買いは、続きそうですが、日本銀行は相場を押し上げるような買い方はしません。

  • 事業法人の自社株買い

事業法人の自社株買いは、毎年、日本株の安定的な買い主体となっています。ただ、3月決算企業について言えば、決算発表前の4月は自社株買いがやりにくい時期になります。決算発表・株主総会を終えれば、新たに自社株買いの枠を設定して、買いを実行する企業も増えると思いますが、4月はそうした買いもあまり期待できません。

(3)日本株の動く方向性を決める外国人の売買に注目

何度も同じ話で恐縮ですが、日本株の動く方向を決めているのは、外国人投資家です。1月から日経平均は外国人の売りで急落しました。3月に入っても、外国人の売り越しが続いていますが、売りの勢いが鈍ったため、公的年金の買いで日経平均はリバウンドしてきました。

買う時には上値を追って買ってくる外国人がどう動くかが鍵です。4月に日経平均が上昇するためには、外国人が買い越しに転じる必要があります。その外国人の売買を決めるもっとも重要な要因は、今は為替です。アメリカで早期利上げの見通しが強まり、ドル高(円安)が進めば、外国人が日本株を買い、日経平均は上昇するでしょう。アメリカで当分利上げができないとの見通しが広がると、円高になり、外国人の日本株売りが続くでしょう。

私は、4月は一旦、下押しする可能性があると思っていますが、本当にそうなるか為替と外国人の売買動向を見ながら判断し、機動的に動くことが必要と思います。