23日の日経平均は前日比47円安の17,000円でした。日経平均はしばらく17,000円近辺で、大きくは上へも下へも動きにくくなると見ています。今日は、建設・土木株について、考えていることを、お伝えします。

(1)建設・土木株を見直し

世界景気や円高に不安が残る中、内需好業績株や小型成長株に注目が集まりやすい展開が続いています。建設・土木株は、内需好業績株として注目できます。

3月22日に、鹿島(1812)が今期(2016年3月期)の業績予想を大幅に上方修正して注目されました。連結経常利益の見通しを、前期比190%増の620億円から、同310%増の1,100億円に修正しました。国内建築工事の利益率が向上する見通しとなったことが、上方修正の主因です。

今期は、業績予想の下方修正を発表する企業が目立ちましたが、建設・土木業では逆に、複数回にわたり業績予想を上方修正している銘柄が多数あります。

 

建設・土木業主要9社の今期(2016年3月期)経常利益(会社予想):昨年5月時点の期初予想と現在の予想比較

コード 銘柄名 株価:円 PER:倍 今期経常利益
(期初予想)
今期経常利益
(現予想)
増益率
(前年比)
1719 安藤・間 592 9 172 190 5%
1720 東急建設 939 10 86 154 92%
1801 大成建設 771 16 620 830 12%
1802 大林組 1145 16 560 850 42%
1803 清水建設 989 14 640 840 49%
1812 鹿島建設 738 11 430 1,100 415%
1820 西松建設 501 12 105 157 58%
1824 前田建設工業 863 10 130 200 31%
1833 奥村組 614 16 52 84 50%

(注:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成)

建築・土木事業の粗利(完成工事総利益率)が予想以上に改善したことが、業績予想を上方修正する主因となっています。仕事量が豊富にある中で、建設各社の施行能力が限られるため、選別受注が可能になった効果が出ています。かつてのような受注単価の叩き合いは姿を消し、建築単価の引き上げが通るようになりました。建設労働者が不足し、人件費の高騰が続いていることがマイナス要因ですが、それが過当競争を抑える要因にもなっています。

2020年まで、東北復興・リニア新幹線工事・東京再開発・オリンピック準備・国土強靭化など、建設・土木関連の仕事はたくさんあります。建設・土木株の収益拡大は2020年頃まで続く可能性があります。

(2)建設・土木株へ投資するリスク

以下の3つのリスクを意識しておく必要があります。

  • マンションくい打ち工事の不正問題

    旭化成建材の不正が明らかになってから、既存マンションで同様の不正がないか調べる動きが全国に広がりました。その結果、日本の大手ゼネコンで、くい打ちなど下請け業者を十分に管理できていないケースがあることがわかってきました。熊谷組(1861)では、子会社のくい打ち業者が不正を行っていたことが判明しています。この問題は、まだ完全な解決をしていません。未解決の問題を抱えるゼネコンへの投資はリスクが高いと考えられます。

  • 2020年以降、仕事量が頭打ちになる可能性があること

    2020年まで仕事量は豊富ですが、その後、頭打ちになる可能性があります。仕事量が減れば、過当競争が続く、元の体質に戻るリスクもあります。2020年はまだ4年も先なので、あまり気にしなくても良いかもしれません。ただし、そういうリスクがあることがわかっていると、建設株は、PER(株価収益率)で高い倍率まで、買われにくくなる可能性があります。

  • 低めの業績予想リスク

    今期(2016年3月期)は、前期(2015年3月期)に続き、建設業の業績は好調でした。ところが、建設業には、利益がたくさん出ることを外部に知られたくない体質があります。前期も今期も、期初には非常に低い業績予想を出しておいて、後から上方修正を繰り返しています。

    来期(2017年3月期)も、期初は、非常に低い業績予想をたててくる可能性があります。今期業績が絶好調でも、来期について減益の予想を出されると、一時的に株価が嫌気して下がる可能性があります。来期の業績予想が会社から出される、5月ころは要注意です。

私は、3月19-20日に東北復興の工事現場を見るために、宮城県気仙沼市と岩手県陸前高田市を訪問しました。そこで感じたことを、明日、ご報告します。