先週の日経平均は、1週間で214円下がって16,724円となりました。WTI原油先物が一時1バレル40ドルに乗せ、NYダウが6日連騰するなど、世界的にリスク資産を買い戻す流れは続いていましたが、一時1ドル110.62円まで円高が進んだことが嫌気され、日経平均は下がりました。今週の日経平均は、円高への警戒が上値を抑えますが、原油先物の上昇が強材料となり下値を支えそうです。原油価格の上昇は、長期的には日本経済にマイナスですが、短期的には原油が上がれば上がるほど、世界の景気も日本の景気にもプラスという状況が続いています。今週の日経平均は大きくは上下とも動きにくい展開となりそうです。

3月22日の日本時間午前6時現在、為替は1ドル111.96円とやや円安に戻りました。CME日経平均先物は16,755円となっています。

(1)円高を試す流れが続いていることに注意

ドル円為替レートの動き:2016年1月1日-3月21日
(日本時間午後1時)

2-3月のドル円為替レートを見ると、ドル高(円安)材料が出て円安が進んでも、1ドル114円ではきっちり打ち返されて、円高に反転しています。114-115円の壁は厚くなってきている印象です。

一方、円高を試す動きは、まだ継続していると考えられます。3月17日のロンドン市場で、一時1ドル110.62円をつけ、2月11日にロンドン市場でつけた水準(1ドル110.97円)を超える円高となりました。ただし、3月17日は、直後に日銀によるレートチェック(注)があったとの噂が広がり、ドルを買い戻す動きが広がりました。

(注)日銀によるレートチェック

日本銀行の為替担当者が民間銀行に電話をかけて、為替市場のレートや取引状況をヒアリングすること。円高が進んでいる時にレートチェックが入ると、日銀による為替介入(円売り・ドル買い)が入るのではないかという思惑を生じることがある。日銀が円高をけん制するために行っているとの説もあるが、真偽は不明。

日銀によるレートチェックの噂で、一旦円安に戻ってはいるものの、再度円高を試す動きが出る可能性もあります。日銀が今、為替介入(円売り・ドル買い)を行うと、「為替操作国」として海外から非難される可能性が高く、為替介入が行われる可能性は低いと考えられます。

日銀は、これまで量的緩和によって、円安を進めてきました。1月にはマイナス金利を導入して、さらに円安を後押しようとしました。これに対して、海外から日本を為替操作国として、非難する動きが、少しずつ出始めています。G20では、日本を名指しすることはありませんでしたが、金融緩和による通貨安競争を非難する議論が行われました。

なお、アメリカは、公式には日本の円安誘導を問題視していませんが、共和党の大統領候補者であるドナルド・トランプ氏が、日本の円安誘導を強く非難し、それを米国の大衆が支持していることに注意が必要です。ドル高によって輸出企業の業績が悪化している米国で、日本の円安誘導を容認すべきでないとの議論が出始めていることに注意が必要です。

(2)その他の円高要因

資源価格の急落によって、日本の貿易収支が黒字化し、その黒字幅が拡大していく見込みであることも、ドル安(円高)要因となります。ただし、貿易収支による為替取引は、資本収支の為替取引に比べると、圧倒的に規模が小さいので、貿易収支が、為替を動かすことはめったにありません。

為替を動かす主力は、あくまでも資本収支です。それは、変わりません。したがって、資本収支に影響する、①日米金利差と②日米金融政策の差が、為替を動かす主要因という考えは、変える必要はありません。貿易収支は、たまに話題となり、心理的に為替市場に影響を及ぼすだけです。

ただし、今のように、米国や海外から、日本の貿易黒字と円安誘導を非難する声が出る兆しがあると、貿易収支にも注目が集まります。今は、米国が利上げしにくいムードが広がっていること、日本の円安誘導を非難する声が出始めていることが、円高要因として、投機筋が材料視する可能性があります。

(3)円安要因

米景気が堅調で、いずれ利上げが必要になるという観測が残っていることが、ドル安(円高)を阻止する要因となります。原油価格の反発が続くと、米国景気の足を引っ張っている石油関連産業が息を吹き返しますので、それも、ドル高(円安)要因となりえます。

米景気指標および、原油先物の動きからも、目が離せません。

WTI原油先物:2016年1月4日-3月18日