15日の昼に、日銀金融政策決定会合の結果が発表されました。事前予想通り、主要な政策に変更はありませんでした。ただ、マイナス金利の弊害に対する批判に配慮して、MRFを対象外にするなど、マイナス金利が適用される範囲を一部縮小しました。15時30分から、黒田日銀総裁の会見がありました。「必要な場合には、量・質・金利の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる」と表明しましたが、1月の声明にあった「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる」という文言は使いませんでした。金利のマイナス幅拡大を強調するスタンスは取りませんでした。ただし、マイナス金利について、「実体経済にプラスの影響をもたらす」「家計部門にとっても全体的としてプラスの効果を持つ」と述べており、マイナス金利自体は、正しい選択だったというスタンスを維持しています。

(1)市場の反応

15日の日経平均は、利益確定売りが増えて141円安の17,090円でした。為替はやや円高方向に動き、16日の日本時間午前6時10分現在、1ドル113.15円です。CME日経平均先物は、同時刻で、16,865円です。今日の日経平均は、下げて始まる見込みです。

日銀の金融政策決定会合の内容に、市場ははっきりと評価を下せていない状況と思います。私は、マイナス金利が、公的年金および企業年金の財政を悪化させる問題にふれずに、家計部門にプラスと総括することに疑問を感じます。年金の問題はすぐに表面化するわけでないので、意図的に隠しているのでしょうか。

次の注目は、今日予定されている米国FOMC(金融政策会合)結果発表です。政策変更(利上げ)はないと思われますが、今後の利上げについて、どのような示唆があるか、それによって為替がどう動くかが重要です。

(2)日銀が発表した金融政策の主な内容

  • 超過準備預金(注)に課されるマイナス金利:▲0.1%(変更なし)
    (注)民間銀行が日銀の当座預金に新規に預ける余剰資金
  • 資金供給量(金融機関からの国債などの買い取り額):年80兆円(変更なし)
  • ETF買い取り:年3兆円(変更なし)
  • REIT(上場不動産投資信託)買取:年900億円(変更なし)
  • マイナス金利を適用する範囲を縮小(今回の変更点)

(3)マイナス金利適用の範囲縮小で、マイナス金利の弊害に配慮

今回は、以下の2つの部分で、マイナス金利の適用を免除することとなりました。

  • MRF(証券会社にある短期資金を置くファンド)への入金に対応した資金
  • 貸し出し支援基金などの増加分の2倍に対応する準備預金にゼロ金利を適用
    (従来は、増加分相当額だけゼロ金利としていましたが、今回、増加分の2倍までゼロ金利適用としました)

今回の日銀発表で、主要政策の変更はありませんでしたが、ゼロ金利の弊害に配慮して、ゼロ金利の適用範囲を少し狭めたという意味において、わずかながらゼロ金利への積極性を後退させたと言えます。

(4)米FRBが利上げできないと、なぜ円高が進むのか

私がレポートで、「今年米FRBが追加利上げを1回もできないと円高が進むリスクが高まる」と書いたことに対し、上記の質問をいただきました。ここに回答を記載します。

為替レートを動かす要因には、いろいろありますが、日米金利差も、重要な要因です。2014年10月以降、日本は量的金融緩和を拡大し、米国は、利上げを実施しましたが、それでも、日米長期金利差は拡大していません。以下のグラフを見てください。

日米長期金利および金利差の推移:2011年9月末-2016年3月(14日まで)

日米長期金利差と、ドル円為替レートの推移を見ると、興味深いことがわかります。

日米長期金利差と、ドル円為替レートの動き:2011年9月末―2016年3月(14日まで)

グラフの赤い矢印①をつけたところをご覧ください。2012年10月から2013年5月にかけて日銀の大規模金融緩和実施への期待で円安が進んだところです。ここは、日米長期金利差が拡大していた時でもあります。金利差拡大で、円安が進んだという面もあります。

ただし、グラフに黒い矢印②をつけたところを見てください。2013年10月の日銀の大規模追加緩和(黒田バズーカ)で円安が進んだところです。この時は、日米金利差が縮小しているのに、円安が進んでいます。米国の利上げで、将来ドル金利が上昇し、日米金利差が拡大することを、先に織り込んで、円安が進んでいたと解釈することもできます。

次に、紫の矢印③をつけたところをご覧ください。米利上げが困難という見通しが広がり、円高が進みました。利上げが実施できないとの見通しが広がると、日米金利差が拡大しないので、円高が進みやすいと考えている理由はここにあります。