7日の日経平均は、103円安の16,911円でした。先週末に17,000円台を回復したことから、7日は利益確定売りが出ました。

さて、今日は、日銀が1月29日に導入を発表したマイナス金利が、金融業の株価にどのような影響を与えているか、ご報告します。

(1)マイナス金利導入で、10年国債の利回りもマイナスに

2年・5年・10年もの国債利回りの推移:2016年1月4日―3月4日

日銀は、現在、1年間に80兆円の国債を金融機関から買い取る「量的緩和」を実行中です。日銀は、金融機関から国債を買い取った代金を、その金融機関が日銀に保有する当座預金口座に入金します。銀行が貸し出しを増やしやすいように、資金を渡しているわけです。

ところが、その買い取り代金は、ほとんどそのまま日銀の当座預金に預けられたままです。有望な貸し出し先の無い金融機関は、国債を売却した代金を日銀に預けたままでした。これまでは、日銀が年率0.1%の利息を支払ってくれていたので、金融機関は預けっぱなしで問題ないと判断していました。

今回、民間金融機関が、日銀に新規に当座預金に預ける資金には、▲0.1%のマイナス金利が適用されることになりました。これまでは、日銀に資金を預けることで、金利をもらっていたのに、これからは金利を取られることになったのです。

民間金融機関は、これまでのように、プラスの利回りが出る国債を日銀に売り渡さなくなりました。日銀は、利回りがマイナスになるまで買い取り価格をあげないと、国債を売ってもらえなくなりました。それで、10年国債まで、マイナス利回りに入ったのでした。

(2)マイナス金利の影響は、同じ金融業でも、業態により異なる

結論から言うと、生命保険業には、大きなダメージが及びます。また、銀行にも利ざや縮小のマイナス影響が及びます。一方、損害保険業は、あまり影響を受けません。また、消費者金融業は、逆にメリットを受ける可能性が高いといえます。

銀行は、業務の多様化ができているか否かで、影響の受け方が異なります。私は、3メガ銀行への影響は相対的に小さいが、地方銀行や中小金融機関への影響は大きいと考えています。また、資金運用の国債への依存度が高いゆうちょ銀行(7182)にも、ダメージが及びます

詳しい説明は、以下のレポートをご参照ください。

2月2日レポート「マイナス金利が銀行・生損保・その他金融に与える影響」

このように金融は業態により、メリット・デメリットがはっきり分かれます。それがマイナス金利発表後の株価に表れています。

マイナス金利導入発表後の株価騰落率

コード 銘柄名 業態 3月7日株価 株価騰落率
(1月28日との比較)
8572 アコム 消費者金融 553 9.7%
8410 セブン銀行 銀行(決済中心) 500 5.5%
8591 オリックス リース 1576.5 -0.1%
- 日経平均株価225種 株価指数 16911.32 -0.8%
8766 東京海上HLDG 損害保険 4012 -1.7%
8306 三菱UFJ FG 大手銀行 553.2 -11.8%
8750 第一生命保険 生命保険 1455 -13.3%
7182 ゆうちょ銀行 大手銀行 1358 -13.9%

(注:株価騰落率は、マイナス金利導入発表直前の1月28日の株価と、3月7日の株価を比較して計算:楽天証券経済研究所が作成)

私は、3メガ銀行は、マイナス金利のニュースで、売られ過ぎと判断しています。好配当利回り株として、長期投資していけると考えています。ただし、それ以外の銀行は、マイナス金利が業績に与える影響を見極めるまでは、積極的に投資しにくいと考えています。損保やリースも投資魅力はあると考えていますが、マイナス金利のダメージが大きい生命保険を、今あえて投資すべきではないと考えています。

上記の表の銘柄の一部について、株価の動きをグラフで示したのが、以下です。

金融主要各社のマイナス金利導入後の株価推移

(注:日銀によるマイナス金利導入の発表直前(1月28日)の株価を100として、指数化。楽天証券経済研究所が作成)