2016年末の日経平均予想レンジを引き下げます。年初には、年末に20,000-23,000円の範囲まで上昇すると予想していました。今回、18,000-21,000円と、予想レンジの上限・下限を2,000円ずつ引き下げます。円高の進行により、今来期の企業業績の伸びが低くなることが、予想変更の主因です。

(1)今来期の企業業績予想を修正

今来期の企業業績見通しを以下の通り、引き下げました。

東証一部上場の3月期決算主要790社(除く金融)経常増益率

2016年3月期 前回予想 +  12%
今回予想 +  6%
2017年3月期 前回予想 +  7%
今回予想 +  4%

(出所:楽天証券経済研究所、IFRS・米国基準採用企業は連結税前利益を経常利益とみなして集計)

今期(2016年3月期)および来期(2017年3月期)の企業業績予想を下方修正することになった主因は、以下の通りです。

  • 為替見通しの変更

年初には、「2016年は1ドル115-125円(平均120円)で推移」と予想していました。今回、「1ドル108-115円(平均112円)で推移」と予想を変更しました。今年、米FRBが何回利上げをするかが、ドル円為替レートに大きな影響を与えます。私は、年末1回だけ0.25%の追加利上げが実施されると予想しています。利上げ回数が私の予想より多ければ、為替は、私の予想より円安(ドル高)に向かうでしょう。ただし、米景気が失速し、利上げが1回もない場合には、さらなる円高が進むリスクがあります。

今期は、期末(3月)まで残りわずかなので、円高が企業業績に与える影響はそれほど大きくありませんが、来期の企業業績には大きなマイナス影響が及びます。

  • 原油価格の見通しを変更

年初には、「2016年はドバイ原油が1バレル40ドルへ反発」と想定していました。ところが、原油の供給過剰が長期化していることを受け、現在は、「2016年は1バレル30ドルで推移」と予想を修正しました。

原油価格の前提が下がったことで、今期(2016年3月期)の企業業績見通しは引き下げました。高値で仕入れた原料在庫が残っていることによる在庫評価損の発生や、海外の資源権益に減損が発生することが、今期の業績見通しを下げた理由です。ただし、資源安は、来期の企業業績にはプラス寄与すると考えています。高値在庫が減少することで、原料安メリットが得られるようになります。また、来期に電力料金やガス料金の低下が見込まれることも、プラス寄与します(原発再稼動は予想に織り込んでいません。LNG火力発電の燃料費低下分が電力料金引下げに反映すると見ています)。

来期は、円高による減益効果を、資源安による増益効果でカバーするイメージです。ただし、原油価格が、1バレル20ドルに向けて下落する場合は、来期の企業業績見通しをさらに下げる必要が生じます。原油安は、長期的に日本経済にプラスですが、短期的にはマイナス効果が先行します。

(2)日経平均の予想を修正

以下の通り、日経平均の予想を修正します。

  年末予想 PER評価
メイン・シナリオ 21,000円 16.8倍
リスク・シナリオ 18,000円 14.4倍

(出所:楽天証券経済研究所)

(3)2016年に想定するリスクは変わっていない

昨年12月30日のレポート(2016年の日経平均見通し)で、想定していた2016年のリスクは、以下の4つです。想定するリスク項目は今も変わっていません。

  • 中国景気変調のリスク
  • 資源安ショック
  • 円安終焉
  • 地政学リスク

アメリカの利上げリスクについて、昨年末のレポートには、以下の通り、記載しています。

「2016年のリスクとして、アメリカの追加利上げを挙げる人が多いと思います。2016年に何回追加で利上げするかが、金融市場の大きな注目点となっています。エコノミストの間には、2回~4回の追加利上げを予想する声が多くなっています。もし本当に4回も追加利上げすると、世界的な株安につながる可能性があります。私は、アメリカは、2016年末に1回だけ追加利上げすると予想しています。したがって、アメリカの利上げが世界的株安を招くとは考えていません。むしろ、アメリカの利上げが市場の期待通りに進まないことによって、円安(ドル高)が進まなくなることの方が、日本株にとって警戒すべき要因となります。そういう理由から、私は、2016年のリスク要因に「アメリカ利上げ」を挙げないで、代わりに「円安終焉」を挙げています。」

言い訳になりますが、基本的な考えは間違えていなかったのですが、年初からいきなり一時1ドル110円台まで円高が進むことは予想できませんでした。結果として、早々に日経平均の見通しを下方修正することになりました。

予想精度を高めることは永遠の課題です。今回の失敗を踏まえつつ、今後さらに予想精度を高められるよう、日々努力を続けます。今後とも、本レポートを宜しくお願いいたします。