16日の日経平均は、31円高の16,054円でした。日経平均の1日の変動幅が50円以下になるのは今年初めてです。1月に入ってから、日経平均は1日で300円や400円動くのが普通になっていました。特に、先週から今週にかけて、900円下がったり1,000円上がったりと、激動が続きました。そんな荒い売買をするのは、いったい誰でしょうか?

(1)荒れる日経平均

2月以降の日経平均の動き

(単位:円)

日付 日経平均 前日比
2月1日 17,865.23 +346.93
2月2日 17,750.68 ▲ 114.55
2月3日 17,191.25 ▲ 559.43
2月4日 17,044.99 ▲ 146.26
2月5日 16,819.59 ▲ 225.40
2月8日 17,004.30 +184.71
2月9日 16,085.44 ▲ 918.86
2月10日 15,713.39 ▲ 372.05
2月12日 14,952.61 ▲ 760.78
2月15日 16,022.58 +1069.97
2月16日 16,054.43 +31.85

私たちは通常、株価を見ながら、投資判断をします。ある朝起きたら、欧米株式が急落していたら、日経平均先物を売ろうと考えることもあります。ところが、朝一番から日経平均が500円も下がったら、一旦、売ることをあきらめて、次に反発する局面を待って売ろうと考えることもあります。

ところが、最近、ある条件にヒットしたら機械的に先物を売り続ける運用が増えています。日経平均が500円下がっても、600円下がっても機械的に売り続けます。下がれば下がる程、売りを増やさなければならなくなる仕組みの運用もあります。

相場の流れにそのままついていく仕組みの運用は、日経平均が上昇する局面では、買いを増やします。下がると売りを増やし、上がると買いを増やすようにプログラムされた運用が増えたことが、日経平均の上昇・下落幅を増幅しています。

(2)先週は日経平均リンク債のノックインが下げを増幅した

本欄で何回か、海外ヘッジファンドや産油国のソブリン・ウェルス・ファンドが、下値で執拗に日本株を売ってきていることをご報告してきました。先週の日経平均急落にも、外国人の売りはある程度関与していると思います。

ただし、先週、日経平均を15,000円割れまで下落させた売りの主役は外国人ではなく、国内の手口であった可能性があります。国内で大量に販売されていた日経平均リンク債がノックイン価格にヒットしたことに伴う売りが、日経平均先物に大量に出ていたようです。

日経平均リンク債の仕組みをきちんと説明すると長くなるので、ここではごく簡単に結論だけ述べます。日経平均リンク債は、通常の円建て債券に日経平均のプット(売る権利)の売りを付加したものです。ノックイン価格(プットが行使される価格)まで日経平均が下がらない限り、高い利回りが得られる債券となりますが、ノックイン価格まで日経平均が下がると、元本が棄損する仕組みとなっています。

いろいろなパターンの日経平均リンク債が販売されていますので、ごく典型的な例を説明します。たとえば、日経平均が20,000円の時、日経平均が15,000円まで下がらない限り、年率4%台の高い利回りの出る日経平均リンク債が発売されたとします。日経平均が18,000円になっても、16,000円になっても、このリンク債の償還元本は棄損しません。年率4%の高い利回りも得られます。ところが、日経平均が15,000円(ノックイン価格といいます)以下に下がると、このリンク債に仕組まれているプットが行使され、リンク債の償還元本が棄損します。プットが行使されることに伴い、リンク債を仕組んでいた証券会社から、日経平均先物にヘッジを外すための売りが出されます。

このような日経平均先物の売りは、日経平均リンク債がノックイン価格に近づくにつれて、増加します。先週、日経平均が500円安になっても600円安になっても、下げの勢いが落ちずに、むしろ売りが増えていった局面があったのは、日経平均リンク債にからんだ売りが出ていたためと考えられます。

専門用語ばかりの説明でわかりにくくて、すみません。上記の説明がわからなかった方は、以下、赤字部分だけ頭に入れてください。

日本では、最近、ノックイン価格が15,000円から16,000円台に設定されている日経平均リンク債が大量に販売されていました。日経平均リンク債がノックイン価格に近づくと、日経平均先物に売りが増える仕組みとなっています。最近、日経平均が15,000~16,000円台で推移している間、リンク債がらみの先物売りが大量に出ました。それが、下げ局面で、下げを増幅する役割を果たしたようです。

(3)日経平均の乱高下が続く見込み

日経平均リンク債にからむ乱暴な売りは、徐々に収束しつつあると推定されます。ただし、相変わらず、海外要因に伴う外国人投資家の乱暴な売り買いは、続く可能性があります。相場が落ち着きを取り戻すまでに、今しばらく時間がかかる可能性があります。