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中国GDP6.8%成長の意味いつまで下げる原油?
窪田 真之
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略をレポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者としての幅…

中国GDP6.8%成長の意味いつまで下げる原油?

2016/1/20
19日の日経平均は、前日比92円高の17,048円と小幅反発しました。上海総合株価指数の反発(前日比+3.2%)と、円安(一時1ドル117.80円)が好感されました。
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19日の日経平均は、前日比92円高の17,048円と小幅反発しました。上海総合株価指数の反発(前日比+3.2%)と、円安(一時1ドル117.80円)が好感されました。

最近の世界的な株安に、大きな影響を与えているのが、中国経済への不安と原油急落です。今日は、19日に発表された中国10-12月GDPの意味と、原油価格が下げ続ける要因について書きます。

(1)中国の10-12月GDPは前年比6.8%増

中国国家統計局が19日に発表した10-12月実質GDPは前年比6.8%増でした。この数字を、そのまま信じる人はほとんどいません。もし本当にそんなに高い成長が実現しているならば、中国は世界経済を強力に牽引する機関車役になっているはずです。実態は、正反対です。中国の景気失速が世界経済に重大な脅威となり、中国ショックが世界に広がっています。

中国の実質GDP成長率(前年比)推移:2014年―2015年

  1-3月 4-6月 7-9月 10-12月 1年間
2014年 7.3% 7.4% 7.2% 7.2% 7.3%
2015年 7.0% 7.0% 6.9% 6.8% 6.9%

(出所:中国国家統計局)

中国政府の発表によると、2014年(1年間)のGDP成長率が+7.3%であったのに対し、2015年(1年間)は+6.9%でした。7.3%成長が6.9%成長に、たった0.4%成長率が低下しただけで、世界中に中国ショックが広がるとは考えられません。GDP統計は操作されている可能性があり、信頼できません。

では、中国のGDPの数字を見ても、まったく意味がないのでしょうか?そうは思いません。たとえ操作が疑われる数字でも、そこに一定の意味はあります。

中国政府の発表数字では、2015年1-3月は前年比7.0%成長でした。4-6月も全く同じで前年比7.0%成長でした。ここまで、2015年の政府目標である7.0%成長に、ぴったり合っているのが、不自然です。この時点で既に中国に景気失速の兆しはたくさん出ていましたが、この時は、中国政府にまだ目標が達成できていないことを認める準備が整っていなかったと思われます。

中国政府は、2015年7-9月のGDPは前年比6.9%増だったと発表しました。ここに至って中国政府はようやく公式に、目標とする成長率が達成できていないことを認めたことになります。ただし、大幅に未達になっている現実は認めるわけにいかないと考えられます。

そして今回、10-12月のGDPが6.8%成長と発表されました。これは、中国景気の実態が、さらに悪化していることを、中国政府が認めざるを得なくなったことを意味します。0.1%だけ成長率を引き下げたところに、中国経済の実態がかなり悪くなっていることを読み取ることができます。

それでは、中国のGDPは、現実的にどれだけ伸びているのでしょうか。私は、足元、中国GDPは3%程度しか伸びていないと見ています。消費は二桁成長が続き好調ですが、投資が実質マイナス成長になっていると推定しています。19日に国家統計局が発表した、12月の小売売上高は前年比11.1%増でした。これは十分納得できる数字です。中国では大衆層が富裕になってきた効果で、消費は安定的に二桁成長が期待できる段階に入っていると思います。

ただし、同じく19日に発表された12月の都市部固定資産投資が前年比10.0%増であったのは、納得できません。投資活動の停滞は深刻になってきており、そのような高い伸びになっていると考えられません。

中国経済は、好調な消費と不振の投資の綱引きで、停滞色が強まっています。ただし、株式市場で懸念されているほどの「中国バブル崩壊」が起こっているとは思っていません。中国経済については、今後とも注意深く見ていく必要があります。

(2)原油価格が急落しても原油供給量が増加する不思議

2015年に原油価格が急落した理由は、需給から見ると、明白です。世界需要の伸び(+1.7%)より世界の供給量の伸び(+2.7%)が大きかったため、供給過剰が拡大したことが価格の急落を招きました。

原油の世界需要と供給のバランス

(単位:日量百万バレル)

  2014年実績 2015年推定 増加率
総需要 91.38 92.92 1.7%
総供給 92.41 94.86 2.7%
内 OPEC 30.77 31.85 3.5%
内 非OPEC 61.64 63.01 2.2%
総需要ー総供給 -1.03 -1.94  

(出所:OPEC月次報告書2016年1月、総需要―総供給がマイナスになっているのは、供給過剰を示す。非OPEC供給量はOPECの非在来原油供給を含む)

2014年に日量1.03百万バレルであった供給過剰は、2015年には1.94百万バレルに拡大しました。OPECからの原油供給が3.5%、非OPECからの供給が2.2%増えたことが供給過剰を引き起こしました。

原油が急落する中で、供給が増えたのはなぜでしょうか?経済学の教科書では、「価格が下がると需要が増え供給が減り、供給過剰が解消する」と説明されていますが、2015年の原油については、それが当てはまっていません。

OPECで供給増加が大きかったのは、イラクとサウジアラビアです。イラクでは地政学リスクが高まっていますが、それでも原油増産は止まりませんでした。サウジアラビアは減産を放棄しただけでなく、増産して供給過剰を引き起こしました。イラン・UAEなども供給を増やしています。イランは、米国の経済制裁解除を見越して増産に走っています。

非OPECでは、米国の供給が増えていることがサプライズでした。シェールオイルの減少が予想より小さかったこと、米国の従来型油田で増産が進んだことが影響しました。

原油が急落する中で、供給量が増えたことには、2つの理由があります。

  • 原油収入が減る一部産油国で増産によって収入を補おうとする動きがあったこと(サウジアラビアなど)。
  • 生産コストが高い油田で、生産量を増やすことでコストを低下させる動きがあったこと(米国など)。

こうした動きから、原油が急落しても、短期的には原油供給は減らず、かえって増加しました。それが、さらに原油下落を生む悪循環を生じました。そして、原油下落に耐えかねたサウジ・クエートなどの産油国からは、保有する金融商品を売却して収入を補う動きも出て、世界的な株安を加速しました。

(3)原油の供給構造と需要構造が変わるには長い年月が必要

原油が急落しても、短期的には需要は増えないし、供給は減らないことがわかりました。今の供給過剰が続くと、原油価格は1バレル20ドル台が定着するとの予想も出ています。

それでは、原油価格が下げ続けても、需給構造はいつまでも変わらないのでしょうか?そのようなことはないと思います。何年かかかりますが、原油が急落した効果で、供給が構造的に減少してくると思います。また、米国で既に起こっているように、エネルギー多消費型の需要が復活する可能性もあります。

生産面でいうと、既存の油田の生産はあまり落ちていませんが、油田の新規開発は既に大幅に減っています。いずれ、それが供給の減少につながっていくと思います。需要構造も時間をかけて変わっていくでしょう。米国では、既に燃費の悪いパワフルな大型車の人気が復活し、小型車が売れなくなってきています。日本人は、エネルギー価格が下がったからといってすぐにエネルギーの無駄使いを始めることはないと思いますが、米国や新興国では、エネルギー多消費型の需要が復活する懸念もあります。

原油価格がいくらまで下がるか読むのは難しくなっています。短期的には供給過剰が続くので、下値のメドがたちません。ただし、価格が下がった効果で、需給構造が変わり始める兆しが出れば、原油価格は大きく反発すると思います。その時期がいつになるかは、まだわかりません。毎月の需給データを見ながら考えていきます。

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