先週の日経平均は、昨年末から1335円(7%)安い17,697円となりました。世界同時株安となる中、リスク資産が一斉に売られる世界的な「リスク・オフ」相場となりました。WTI原油先物も安値を更新しました。為替市場では、安全通貨として円が買われました。

本レポートの末尾に、1月10日の新春セミナー資料へのリンクをつけています。ご一覧いただけると幸甚です。

(1)日本市場が閉まった後の米国市場の動き

  • 1月8日(金):世界的な「リスク・オフ」が継続しました。
  • NYダウ:16,346ドル(前日比167ドル安)
  • CME日経平均先物:17,280円(1月8日の日経平均終値比417円低い水準)
  • 為替:1ドル117.21円(前日比0.42円のドル安(円高))
  • 1月11日(月):NYダウは小反発、為替はやや円安が進行しましたが、CME日経平均先物は低い水準にとどまっています。
  • NYダウ:16,398ドル(前日比52ドル高)
  • CME日経平均先物:17,390円(1月8日の日経平均終値比307円低い水準)
  • 為替:日本時間12日午前6時30分時点で1ドル117.70円(前日比0.49円のドル高(円安))

(2)今週の日本株見通し

日本市場が締まっている間の海外市場を見ると、まだ世界的な「リスク・オフ」が収束していないと考えられます。今週の日経平均はさらに下落して始まることが予想されます。11日のNYダウは小反発しましたが、上海総合株価指数・WTI原油先物の下落は継続しています。

ポイントとなるのは、1月8日のNYダウの動きです。8日に発表された12月の米雇用統計がポジティブ・サプライズ(強くて驚き)だったにもかかわらず、円安(ドル高)が進まず、NYダウは下落しました。米景気が堅調と判断できることは、世界景気にとってプラス材料ですが、今はそれを評価できる相場の流れとなっていません。中国や資源国(ブラジル・ロシアなど)の景気不安が大きいために、世界的にリスク・オフの株売り・円買いが続いている状況に、現時点で変化がありません。

(3)ポジティブ・サプライズだった12月の米雇用統計

12月の米雇用統計は、強い内容でした。もっとも注目の高い「非農業部門の雇用者増加数」が、12月は前月比で29万2000人の増加と、景気が好調と判断される分かれ目(20万人の増加)を大幅に上回りました。10月から12月まで3ヶ月連続で20万人を上回る増加となったことから、米景気は夏場の減速から立ち直り、好調に推移していると判断されます。

ただし、天候要因(暖冬)で、雇用が増加している部分は少し割り引いてみる必要があります。暖冬で建設工事が進みやすく、建設業の雇用増加が大きくなっています。なお、12月の完全失業率は、5%と低い水準に留まっています。

非農業部門の雇用者増加数推移:2014年1月―2015年12月

完全失業率推移:2014年1月―2015年12月

(出所:米労働省)

(4)アベノミクス相場は終わったのか?

私は、アベノミクス相場は終わっていないと考えています。新興国の投資魅力が低下し、相対的に先進国(日米欧)の魅力が高まっている現状に変わりなく、中でも日本の自動車・機械産業の競争力回復が目立ちます。独フォルクスワーゲンの不祥事でクリーン・ディーゼル車の競争力が低下したことは、ハイブリッド車で高い技術を持つトヨタ自動車(7203)に追い風です。また、日本企業に、生き残りを賭けた合併・経営統合が増えていること、日本企業が株主への利益還元に積極的になりつつあることも、日本株の投資魅力を高めることに寄与しています。政治面では、農業改革・TPP大筋合意・法人減税・郵政完全民営化へのステップ・空港民営化・マイナンバー(電子政府へのステップ)実現など、構造改革が進んでいる点に注目しています。ただし、来年実施予定の消費増税には警戒が必要と考えています。

(4)新春セミナー資料

1月10日横浜で開催されました弊社新春セミナーに多数の方のご来場をたまわりまして、誠にありがとうございました。私の講演で使用した資料は、以下の青文字部分をクリックしていただくと、ご覧いただけます。「新春セミナー資料」 PDF ご一覧いただけると幸甚です。

なお、皆様からたくさんのコメント・ご質問をいただき、ありがとうございます。すべてに目を通しています。質問にご回答できていないことばかりで、申し訳ありません。これまでにいただいているご質問やコメントに、明日から少しずつ回答していこうと思います。なにとぞ、よろしくお願いいたします。