1月5日の日経平均は前日比▲76円の18,374円でした。4日に上海株の下落(▲6.9%)と、円高(一時1ドル119円割れ)を嫌気して、前年末比▲582円と急落しましたが、5日は上海株が小動き(▲0.3%)、為替も小動き(1ドル119円前半)だったことから、日経平均も前日値をはさんで小動きでした。

ただ、週末にイベント(米12月の雇用統計発表)を控えており、為替と株の乱高下はまだ続きそうです。短期的な下値リスクが払拭されたわけではありませんが、日本の企業業績拡大は続くと予想していますので、日本株は良い買い場と考えています。

今日は、年初からの世界的な株安の原因となった中国と米国の製造業PMI(景況指数)について、考えていることを、お話しします。

(1)ネガティブ・サプライズであった米ISM製造業景況指数

アメリカの景気は堅調ですが、好調なのは非製造業で、製造業の景況は悪化しつつあります。ドル高が続いたことから輸出産業は不振です。また、原油急落によって、石油関連産業も不振です。

米ISM製造業・非製造業景況指数の推移:2014年1月~2015年12月(非製造業は2015年11月まで)

(出所:米ISM供給管理公社より楽天証券経済研究所が作成)

製造業景況指数は、景況判断の分かれ目である50を2ヶ月連続で下回りました(11月48.6、12月48.2)。製造業景況がこれだけ弱いと、日本ならば景気後退期に入りかねない状況です。ところが、アメリカは早くから製造業の空洞化が進んでおり、製造業が経済に及ぼす影響が日本ほど大きくありません。既に米国は、非製造業(IT産業、サービス産業、金融業など)中心に成長する経済構造になっています。したがって、製造業が悪いままでも、雇用改善は進み、米FRBが「利上げが適当」と判断するほど、景気は堅調でした。

ただし、いくら製造業の比率が相対的に低い米国でも、製造業の悪化があまりに長引くと、景気に影響します。11月・12月の製造業景況指数を見て、その心配が生じました。

今週発表になるアメリカの景気指標で、以下の2つへの注目がさらに高まりました。

  • 1月7日(木)発表予定:12月のISM非製造業景況指数
  • 1月8日(金)発表予定:12月の雇用統計

12月の米雇用統計では、製造業の悪化が雇用に影響するか、あるいは非製造業の好調で雇用改善が続いているか、確認することになります。

(2)中国経済への不安は払拭されない

中国への不安は長期化しそうです。1月4日発表の、財新製造業PMI(景況指数)が弱かったことが、上海株急落の引き金になりました。

財新 製造業PMIの推移:2014年1月~2015年12月

(出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)

中国は「世界の工場」と呼ばれるほど、製造業が強い国ですが、近年は人件費の上昇が著しく、また、人民元高の影響もあって、製造業の競争力がやや低下しつつあります。2015年の製造業景況指数は景況判断の分かれ目である50を下回って推移しています。10月・11月に若干改善しましたが、12月に再び悪化しました。鉄鋼・自動車などの産業で、過剰投資の後始末が残っており、製造業の不振は長引きそうです。

(3)日本の大企業製造業・非製造業DI(業況判断指数)

日本は、大企業製造業・非製造業DIともに、景況判断の分かれ目であるゼロを上回っており、好調です。ここから急激な円高が進まない限り、日本では、企業業績の回復が続くと判断されます。非製造業が製造業よりも良いのは、米国と同じです。

大企業製造業・非製造業DIの推移:2012年3月―2015年12月

(出所:日本銀行)