17日の日経平均は、303円高の19,353円でした。一時、457円高の19,507円まで上昇しましたが、引けにかけて上昇幅を縮小しました。米FRBが9年半ぶりの利上げを発表したが、市場に織り込み済みで、波乱なくイベントを通過したことを、好感する買いが続きました。17日の欧州株も米利上げを好感する買いで軒並み上昇していますが、NYダウは前日比253ドル安の17,495ドルとなりました。今日は、米利上げ好感の買いは一巡する可能性があります。

今日の注目イベントとして、日銀政策決定会合の結果発表があります。メインシナリオは、変更なし(追加緩和なし)ですが、確率は低いものの、小規模の追加緩和を発表する可能性はあると考えています。今日は、来年の日米政治イベントについて想定されることを書きます。

(1)来年は米大統領選が相場のかく乱要因に

来年のリスク要因として米大統領選を挙げておく必要があると思います。大統領選が実施されるのは来年11月とまだかなり先ですが、その前に、民主党と共和党がそれぞれ大統領選に出馬する候補者を選ぶための予備選挙を行います。大統領選に出る指名を得るために、民主党・共和党の候補者がそれぞれテレビなどマスコミを通じて、劇場型の政策論争を繰り広げるのが常となっています。

劇場型の政策論争では、大衆の共感を得ることが大切です。そのため、大衆迎合型の極論を展開する候補者が増えてくる可能性があります。米国の有力政治家から、世界経済を考えない、自国の都合だけを優先した発言が出やすくなるリスクがあります。

既に、共和党の指名争いに名乗りを上げている不動産王のドナルド・トランプ氏が、大衆受けする極論をどんどん発言し、共和党の大統領選出馬候補者として、トップとなる高い支持率を得ていることが注目されています。ドナルド・トランプ氏は、対外強硬策の極論を展開することで、物議をかもしています。「イスラム教徒の入国を制限する」「中国は米国にとって脅威」「TPPは何も生み出さない」ほか、数々の人種差別発言など、大統領選の候補者としての資質を疑われるような発言を繰り返していますが、それが大衆から熱狂的な支持を得ています。

共和党候補者の強硬発言に影響されてか、これまでTPPを熱心に推進してきた民主党の大統領候補者クリントン氏も、「TPPには問題がある」と、手のひらを返したような発言をしています。米国世論の右傾化、それに合わせて米政治家が米国の伝統であるモンロー主義(孤立主義)に傾注していくことは、世界の株式市場を不安に陥れるリスク要因となります。

(2)日本でも参院選挙が近づくと経済政策が選挙の道具になりやすくなる

来年7月には、参院選が実施されます。参院選が近づくにつれ、日本でも目先の選挙対策を意識した経済政策が取り上げられる可能性が高まります。今、議論になっている食料品に対する消費税軽減税率の議論も然りです。低所得者層に配慮して負担軽減を議論すること自体は必要ですが、それを実現するために、小売店舗などに多大な事務負担が発生する点が問題です。明らかに選挙を意識して政治家中心に議論が進んでいるために、軽減税率にからんで社会が負担する事務コストが膨らむことに、無関心になっています。

今後、選挙が近づくにつれて、さらにバラマキにつながる経済政策の議論が増える可能性があります。現時点で、実現可能性はきわめて低いものの、自民党政府が「2017年4月の消費税引き上げ(8%→10%)を実施しない」方針を決定し、「その妥当性について国民に信を問う」ことを理由に、来年7月の参院選に向けて、衆議院を解散し、衆参同時選挙とする案もささやかれています。

ところで、参議院は、3年に1回、定数の約半数の議席が改選されます。来年7月に改選されるのは、その6年前、2010年に参院選で当選した議員です。2010年というと、民主党ブームが吹き荒れていたときです。改選議席に占める民主党の議席数が多いため、民主党は今回の参院選でどんなに健闘しても議席を増やすことは難しいと考えられています。

来年は日米とも、経済政策が選挙の道具になりやすい時期に入ることに注意が必要です。ただし、来年、原油安や米景気好調の恩恵を受けて日本の企業業績が拡大する見通しに変わりはありません。日経平均は、政治要因で乱高下することも考えられますが、最終的には企業業績の拡大を織り込みつつ、来年末に22,000円以上に上昇するという見方には変わりありません。