今日は、最高益更新中の食品株についてコメントします。食品株といえば、かつては純粋な内需株でした。それが近年、海外で売上を拡大する企業が増えてきています。人口の増えない日本の停滞産業が、いつの間にか世界で成長する産業になってきています。日本食が海外で受け入れられるようになっている流れも、日本の調味料メーカーには追い風です。

ただし、最高益更新中の食品株は、近年、株価が大幅に値上がりしています。PERなど株価指標で見ると、既に割高になってきています。私は、今の水準であえて食品株に積極投資したいとは考えていません。

(1)高いPERまで買われるようになった食品株

かつて食品セクターは割安株の宝庫でした。財務内容が良くて利益がそこそこ出ていても、人気が出ることがなく、株価がPER(株価収益率)などの指標で割安に放置される銘柄がたくさんありました。人口が減少する日本で、食べ物を売っていく商売に、夢がないと思われていたからです。割安株を好む投資家以外は、あえて投資しようとしない銘柄がたくさんありました。

ところが、今日、株式市場における食品株のイメージはがらりと変わっています。食品株は、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブな安定成長株として、高く評価されるようになっています。海外で売上を拡大している自動車・電機などの輸出企業は、世界経済に不安が出ると売られるのですが、海外で売上を拡大する食品株は、世界経済の影響をあまり受けずに安定的に成長しています。食べ物を売っていく商売の強みで、景気変動の影響を受けにくい安定成長株として、高く評価されるようになっています。

最高益を更新中の食品株は、PERで高く評価されるようなっています。同じように最高益を更新している自動車株のPERの低さと比較すると、食品株の市場評価がいかに高いかが、わかります。

今期会社予想ベースで経常最高益を更新する見込みの食品株

コード 銘柄名 今期経常利益会社予想:億円 前年比 24日株価:円 PER:倍 配当利回り
2801 キッコーマン 292 20% 4,045.0 41.3 0.6%
2802 味の素 890 8% 2,827.5 24.7 0.9%
2229 カルビー 280 9% 5,030.0 42.5 0.7%

今期会社予想ベースで経常最高益を更新する見込みの自動車株

コード 銘柄名 今期経常利益会社予想:億円 前年比 24日株価:円 PER:倍 配当利回り
7203 トヨタ自動車 29,800 3% 7,636.0 10.6 2.6%
7270 富士重工業 5,470 39% 5,087.0 10.6 2.8%
7261 マツダ 2,300 8% 2,589.5 9.9 1.2%

(注:楽天証券経済研究所が作成)

(2)企業が魅力的でも、株価が魅力的とは限らない

私は、25年のファンドマネ-ジャー経験で、割安株への投資で競争相手のTOPIX(東証株価指数)を上回るパフォーマンスを上げてきました。割安株への投資を徹底することが染み付いています。上記のように、PERが高くて人気のある食品株と、PERが低く警戒的に見られている自動車株を見ると、割安な自動車株の投資により魅力を感じます。

ただし、株式市場では、PERの高い株の上昇率が高く、PERの低い株の上昇率が低い状態が長続きすることもあります。今はそういう傾向が強くなっています。PERの低い株ばかりを好んで入れていると、TOPIXにパフォーマンスが大きく負けることになりかねません。

今の食品株のように、PERが高くても人気がある株は、一定量保有していないと、TOPIXに負けるリスクが出てきます。私がファンドマネージャーの時は、このような割高な人気株は、「中立」(競争相手のTOPIXの構成比と同じ組入比率にすること)の組み入れとしていました。

冷静に考えてみて、自動車株は、世界経済の変動に大きな影響を受けます。リーマンショックのような世界景気悪化があると赤字になることもあります。世界各地で地政学リスクが高まると、世界中で工場を持って生産を行っている自動車株には、業務上のリスクが発生します。同じ海外で利益を稼ぐ株でも、自動車・電機のような業績の不安定な株ではなく、食品や小売り・サービス業のように安定成長株の方が、PERで高く評価されるのは、当然のことかもしれません。

(3)本コラムに応援メッセージをお寄せいただき、ありがとうございます

皆様からいただいたご質問にほとんど回答できていませんが、すべて目を通しています。機会を見て、おいおいお答えしていこうと思っています。なにとぞ、よろしくお願いいたします。