昨日に続き、今どういう銘柄に投資していったら良いか、参考銘柄を挙げます。

(1)建設・土木株

 

大手ゼネコン3社の11月19日時点の株価、株価指標と最低投資金額

(金額単位:円)

コード 銘柄名 19日株価 PER:倍 配当利回り PBR:倍 最低投資金額
1801 大成建設 773.0 16 1.3% 1.8 773,000
1802 大林組 1,116.0 16 0.9% 1.6 1,116,000
1803 清水建設 1,050.0 15 1.0% 1.7 1,050,000

(注:楽天証券経済研究所が作成)

東北復興・リニア新幹線工事・東京再開発・オリンピック準備・国土強靭化など、建設・土木関連の仕事は2020年まで豊富です。収益拡大が、2019~2020年頃まで続くことが予想されます。

建設業は、長年過当競争が続き、低利益にあえいでいましたが、2014~2015年には、利益率の改善傾向がはっきり出てきました。仕事が大幅に増加する中で、利益率の高い案件を選別受注できるようになった効果が出ています。大手ゼネコンは今来期とも、利益モメンタムは強いでしょう。世界景気に不安が残る中で、内需の好業績株として、折にふれて物色されると思います。

3社とも、1000株からしか買えないので、最低投資金額が比較的大きいことは問題です。一番価格の低い大成建設でも77万3000円必要です。これでは、いろいろな銘柄に分散投資するのが難しくなります。もう少し、小規模のお金で投資できる建設株を探してもいいと思います。建設・土木業界全体に、利益率の改善が定着してきているので、投資候補は他にも見つけられると思います。今後、おいおいご報告していきます。

なお、リスク要因として、旭化成建材のくい打ち工事の不正事件が、建設業界全体にどれくらい広がるか、今のところわかっていないことを挙げておきます。

(2)総合電機株

 

総合電機4社の11月19日時点の株価、株価指標と最低投資金額

(金額単位:円)

コード 銘柄名 19日株価 PER:倍 配当利回り PBR:倍 最低投資金額
6501 日立製作所 731.4 11 1.6% 1.2 731,400
6503 三菱電機 1,355.5 13 2.0% 1.6 1,355,500
6701 日本電気 411.0 16 1.5% 1.3 411,000
6702 富士通 617.0 13 1.3% 1.7 617,000

(注:楽天証券経済研究所が作成)

「総合電機」株が経営改革によって、復活しつつあります。改めて総合電機を見直して投資していいと考えています。

「総合電機」は、長年にわたり総花的経営を続けていたために、1990年代以降、弱体化していきました。競争力のない事業を抱え込んだまま、経営効率が悪化し、投資対象としての魅力が乏しい時代が長く続きました。

近年、構造改革を成功させて復活したのが、日立製作所です。事業の集中と選択を進めて、競争力・収益力を回復しつつあります。利益が不安定で、業績の足を引っ張ることの多い半導体事業・HDD事業などを縮小・撤退する一方、競争力のある社会インフラ(電力・鉄道)、自動車関連(素材や部品)、ITサービスなどを拡張してきています。

三菱電機も同様です。競争力のあるFA(工場自動化)事業や、航空・宇宙部門などに、利益拡大の期待が持てます。

これに対し、日本電気(6701)・富士通(6702)は、まだ経営改革が道半ばです。競争力が低く、収益が不安定な携帯電話機やパソコンなどハード事業が残っていて、利益の足を引っ張る懸念が残っています。ただし、ITサービス事業を成長の柱とした構造転換は、かなり進んでおり、その成果が来年以降、顕著に表れてくると予想しています。やや早すぎるかもしれませんが、私は今から投資していっていいと考えています。

(3)皆様からいただいたリクエストより

(いただいたコメント)

買い銘柄ばかりでなく、買うべきでない銘柄についても教えてほしい。

(私からの回答)

これまでも、時々、投資すべきでない銘柄についてネガティブなコメントは出していましたが、はっきり「売り」と言っていなかったので、わかりにくかったかもしれません。今後、ネガティブ銘柄へのコメントも、もう少しわかりやすくします。

今日、早速、買うべきでないと考える銘柄を1つ挙げようと思います。それは、東芝(6502)です。ただ、ここではあくまでも私の考えを述べているだけですから、最終判断はご自身でお願いいたします。

東芝は、かつて先進的で積極経営のすばらしい会社でした。昔、輝いていた会社の株価が大きく下がっているので、復活に賭けて買ってみたくなる投資家もいると思います。ただ、私は、以下の問題が、残っている間は、投資すべきでないと思います。

  • 資産性の疑われる「のれん」の計上額が大きい問題。
  • 回収可能性の疑われる「繰延税金資産」の計上額が大きい問題。
  • これまで収益を稼ぐ柱であった半導体フラッシュメモリーの収益が将来不安定になるリスクがある問題。
  • 採算性の低い事業をたくさん抱えている問題。

詳しい説明は、長くなりすぎるので、割愛します。詳しい説明をお望みの方は、私が中央経済社の月刊誌「企業会計」2015年12月号に執筆している連載コラム「深読み!会計トピック:のれん・繰延税金資産の問題を露呈した東芝事件」をご覧ください。

最後に、東芝の思い出話しです。私のファンドマネージャー人生は1988年に開始しました。ファンドマネージャー兼アナリストとして最初に担当したのが、半導体業界でした。その時、最初に調査して書いたレポートが東芝でした。株価600円くらいで、600万株の買い推奨を出したのを、今でもはっきり覚えています。その後、東芝株は1500円辺りまで上昇しました。当時の東芝は輝いていました。その東芝がこのような会計事件を起こすに至ったことには、とても悲しい思いをしています。

今でも、東芝の技術力と東芝製品には、すばらしいものが沢山あります。それでも、財務上の不透明要因が晴れない限り、投資対象としては、不適当と考えます。