18日の日経平均は前日比18円高の19,649円でした。欧米株高を好感して朝方209円高の19,840円まで上昇しましたが、その後上昇幅を縮小して引けました。投資環境の不透明要因がまだ払拭されていませんので、しばらく上値が重くなりそうです。ただ、昨日のレポートに書いた通り、来年は日経平均が高値を抜けていくと予想しています。

今日は、今どういう銘柄に投資していったら良いか、参考銘柄を挙げます。

(1)割安株に長期投資、成長株に短期投資

私は、25年間日本株ファンドマネージャーをやってきました。私の投資スタイルを一言でいうと、「割安株に長期投資・成長株に短期投資」です。それで東証株価指数を大幅に上回るパフォーマンスをあげることができました。

逆でないか、と思った方もいらっしゃると思います。「成長株に長期投資し、割安株は大きく下がった時に短期リバウンド狙いで投資」でいいと思う方もいらっしゃると思います。ところが、私が日本株を運用してきた1987~2013年は、特定の時期(1999年ITバブルなど)を除けば、おおむね割安株が成長株を上回るパフォーマンスをあげています。

割安株は、言い方を変えれば「不人気株」です。人気がないから株価が割安に放置されているのです。それに対し、成長株は、言い方を変えれば「人気株」です。バイオ、インバウンド、マイナンバー、IOT、ロボット関連などテーマ株は、人気が高く、株価が割高になっているものもたくさんあります。

不人気株に投資してパフォーマンスが良いとは、一体どういう訳でしょう。冷静に考えて、日本は高成長経済ではありません。過去には、高成長を期待されて熱狂的に買われてきた小型株が、成長ストーリーが崩れた途端に暴落するケースがたくさんありました。小型成長株は、成長性崩壊の兆しが見えたらさっさと売り抜ける「短期投資」のスタンスで臨まないと、大怪我することもあります。

一方、「もうだめだ」と思われた経営危機から、立ち直ってくる底力を持った企業が多いのも日本の特徴です。会社が危機的な状況になると、従業員と経営者が一致団結して構造改革に取り組み、よみがえってくる企業は、結構たくさんありました。復活の兆しが見えてきた割安株に投資すると、高いリターンが得られるのは、こういうパターンです。

今日は、長期投資したいと思う割安株を参考銘柄としてあげます。

(2)大手銀行株

 

3メガ銀行の11月18日時点の株価、株価指標と最低投資金額

(金額単位:円)

ード 銘柄名 18日株価 PER:倍 配当利回り PBR:倍 最低投資金額
8306 三菱UFJ FG 827.0 12 2.2% 0.8 82,700
8316 三井住友FG 4,898.0 9 3.1% 0.7 489,800
8411 みずほFG 260.0 10 2.9% 0.8 26,000

(注:楽天証券経済研究所が作成)

本欄で何回もご紹介していますが、3メガ銀行は、好配当利回りの割安株として、長期投資に向いていると思っています。1990年代の不良債権問題から完全に立ち直り、財務内容は良好です。信用格付で欧州の銀行を抜き、国際競争をする上で、優位な位置にあります。国内の利益が伸び悩んでいますが、アジアやアメリカの金融機関の買収など、積極的に海外事業を拡大しています。

海外での利益拡大によって、将来的に、少しずつ最高益を更新していくことができるだろうと予想しています。そうした投資魅力が、まだ株式市場で十分に評価されていません。株価は、配当利回りが高く、PER・PBRが低い割安株であり、長期投資対象として有望と考えています。

(3)通信株

 

携帯電話3社の11月18日時点の株価、株価指標と最低投資金額

(金額単位:円)

コード 銘柄名 18日株価 PER:倍 配当利回り PBR:倍 最低投資金額
9433 KDDI 3,017.0 15 2.2% 2.3 301,700
9437 NTTドコモ 2,415.5 19 2.9% 1.7 241,550
9984 ソフトバンクグループ 6,662.0 13 0.6% 2.6 666,200

(注:楽天証券経済研究所が作成)

安倍首相が「携帯電話料金の引き下げが必要」と発言してから、ケータイ電話3社は、すっかり不人気株になりました。料金の大幅引き下げによって、利益が縮小する懸念が株価を抑えています。今後、携帯電話料金の引き下げは進むと思いますが、私は、それでも日本のケータイ電話3社は、高収益を維持できると考えています。スマホへの転換がさらに進むことによって高水準のARPU(平均月額料金)を維持できると見ているからです。スマホの性能がどんどん上がっていく過程で、パソコンの仕事をスマホがどんどん奪っていく時代になると考えています。

KDDI(9433)、NTTドコモ(9437)は、値上がり期待は低いが、好配当利回りの魅力から、長期投資対象に相応しいと考えています。

ソフトバンクグループ(9984)は、配当利回りは低いが、PERの低い割安な成長株として注目しています。ソフトバンクは過去に、人気株になったり不人気株になったりを、繰り返してきました。今は、不人気株です。国内ケータイ電話料金の引き下げ懸念、米国で買収した通信会社スプリントの業績不振などが不安材料となって、ソストバンクの株価低迷につながっています。「ソフトバンクはもう成長株ではない」との声も聞かれます。

私は、ソフトバンクがこれから、もう一回、成長性で注目される時が来ると思っています。米子会社スプリントを成長させる夢は破れましたが、投資したキャッシュは回収できると思います。国内の通信事業で高成長は期待できませんが、スマホ拡大による成長余地は残っていると考えています。これからスマホがPCの役割をどんどん奪っていく時代になると考えているからです。

ソフトバンクが、中国のEコマース市場で一人勝ちのアリババの大株主であることは注目できます。アリババの高成長は始まったばかりです。競争が少なく利益率の高い中国で、高成長と高利益率を両立していけると思っています。また、すぐに大きな利益をあげることはありませんが、電力(メガソーラー)事業も、遠い将来、利益を稼いでいく柱の1つになると思っています。ソーラー発電が、補助金なしで、競争力のある電源として成長する時代が近づいていることに注目しています。また、大きな利益を稼ぐことはできないと思いますが、ロボット事業(ペッパーの貸し出し)も、将来は利益に貢献する事業として、話題性があります。

明日、私が投資候補と考える割安株の話を続けます。

(4)昨日のレポート「日本株長期展望」へのご意見と、私の考え

(いただいたご意見)

2016年3月期のEPS1,253円として考えるなら、日経20,000円はPER約16倍になります。これは歴史的には高めの水準です。この水準で考えるとしても24,000円になるにはEPSが20%UPする必要があります。来年の半ばでこのEPSを期待するのは無理でしょう。

(私の考え)

私は、日経平均のPERは17倍が妥当と考えています。まず事実関係から。日経平均のPER16倍は、歴史的には低い水準です。1989年(不動産バブル時)は、平均PERは60倍でした。2000年(ITバブル時)は、平均PERは40倍でした。近年は約20倍で推移していました。確かに、1960年代までさかのぼれば、平均PERが12倍だったこともありますが、過去40年の範囲で見ると、平均PER16倍は最低水準です。

日本企業は利益の約3割を配当金にまわしています。詳しい説明は省きますが、PER17倍で利益の3割を配当にまわすと、配当利回りは1.76%になります。低金利が長期化する中で、配当利回り1.76%は十分魅力的と思います。借金返済が終了した企業が増えているので、日本企業は、将来は利益の35%くらいを配当金にまわすようになると予想しています。そうなれば、PER17倍で、配当利回りは2.06%となります。

なお、私は来期の増益率を暫定的に10%と置いています。日経平均のEPS2016年3月期予想1,290円を1.1倍して、それにPER17倍をかけると、目標株価は、約24,000円となります。

皆様からいだだいた質問すべてにお答えできなくて、すみません。すべての質問に目を通しています。少しずつ回答を続けていきます。