今週の日経平均は、11月13日(金)の夜にパリで起こった同時多発テロを嫌気して、調整が予想されます。本日の朝、発表になる7-9月の日本のGDPが、市場予想通り、前期比年率で▲0.1%となれば、4-6月に続く2四半期連続のマイナスで、日本の景気回復にも疑問符がつきます。

(1) 先週は日経平均が上昇(+331円)する間にNYダウは下落(▲665ドル)

NYダウは、パリでテロがあったニュースを嫌気し、13日は▲202ドルの17,245ドルとなりました。9月以降の反発局面が一旦終了した印象です。

NYダウ週足:2014年1月4日~2015年11月13日

日経平均は、世界的な株高につれて反発していましたが、NYダウの調整につれて、今週は調整局面となりそうです。13日のCME日経平均先物は19,415円と、13日の日経平均終値(19,596円)よりも181円低い水準まで下がっています。CME日経平均先物には、パリ同時テロの影響が完全には織り込んでいない可能性もあり、今週の日経平均下げ幅はさらに大きくなる可能性もあります。

日経平均週足:2014年1月4日~2015年11月13日

(2)パリ同時テロの影響を最初に織り込むのが、東京市場となる

13日夜(日本時間14日早朝)、パリ市内と近郊の6か所でほぼ同時刻にテロが起こり、129人が死亡しました。250人以上の負傷者には重傷者も含まれており、死亡者数は今後増える可能性もあります。過激派組織IS(イスラム国)が犯行声明を出しており、オランド大統領は、フランス全土に非常事態宣言を発令しました。事件の犠牲になられた方々に哀悼の意を表します。

この事件の影響を、世界で最初に織り込むのが、今日の東京市場になります。欧州市場のしまった後に起こった事件なので、欧州市場は織り込んでいません。米国市場には、ある程度は織り込まれました。ただし、事件の全貌が報道されてから最初に開くのは、今日の東京市場になります。

欧米株がさらに下がることが見込まれるため、今日の東京市場では、外国人投資家による「リスクオフ」の日本株売りが出る可能性があります。

(3)ISによるテロ警戒が強まる間、金融市場ではリスクオフモードが広がる

欧米諸国とISの対立は根が深く、短期的な解決は見込まれません。今後テロの影響が世界中に拡散していく間、世界の金融市場は、警戒モードに入る可能性があります。フランスを含め欧州各国では、テロへの警戒が厳重になり、経済活動に短期的に悪影響を及ぼす可能性もあります。欧米で移民排斥運動が活発になれば、それが新たな負の連鎖を生む、リスクもあります。

ところで、10月31日にエジプトを出発したロシア旅客機がシナイ半島に墜落し、乗客乗員224人が犠牲になった件も、ISによるテロとの見方があります。ISが犯行声明を出したことに対し、当初は、単なる宣伝のためとの見方もありました。ただ、ロシアがシリア領内のISへの空爆を始めた直後であり、さらに、ボイスレコーダーに爆発音とみられる音が入っていることから、テロとの見方が強まっています。

(4)南沙諸島の米中緊迫にも警戒が必要

中国が南沙諸島の岩礁を埋め立てて基地を作り、領有を宣言していること対し、米国がついにこれを阻止する行動に出ています。南沙諸島の領有問題は、中国と、ベトナム・フィリピンなどの対立としてとらえられていましたが、米中の対立に発展しつつあります。

米軍は、イージス艦を基地建設中の岩礁の12海里内を航行させ、B52爆撃機を近隣に飛行させ、中国の領有を認めない態度を示しています。中国軍との間に、不測の事態が起こりかねない状態と言えます。米中間で、たとえ小規模でも軍事的衝突があれば、世界の株式市場に悪影響を及ぼします。

ただし、中国は急ピッチに軍事力を拡大したとはいえ、現時点で、米軍に対抗する力がないことは明らかです。中国もそれは理解しているはずなので、中国側が行動を自制すれば問題が拡散しない可能性もあります。

ただ、事態を複雑にしているのは、中国国内の政治情勢です。中国共産党の一党支配に、国内では不満が高まっています。中国政府が対外政策で弱腰を見せると、中国国内で反共産党運動に火がつきかねない危うさがあります。中国政府は、米国との衝突を避けつつ、南沙諸島問題で致命的な弱みをさらすわけにいかない状態です。

(5)「平和攻勢」に出ることでメンツを保とうとする中国

中国は、アジアで孤立することを恐れ、アジアに「平和攻勢」をかけ、それを主導することで、メンツを保とうとしているように見えます。長年にわたって実現しなかった日中韓首脳会談や、中台(中国と台湾)首脳会談がいきなり実現したのは、中国の「平和攻勢」の一環ととれます。

どんな背景があるにしろ、課題であった首脳会談が実現したことは、東アジアの安定に寄与するものです。ただし、これで東アジアの安定が続くことが保証されたわけではなく、南沙諸島問題の落としどころも見えていないことから、しばらく、東アジアの地政学リスクからも目が離せません。