中間決算の発表がほぼ終了しつつあります。今回の決算では、ネガティブ・サプライズ(悪くて驚き)とポジティブ・サプライズ(良くて驚き)が入り混じっています。ポジティブ・サプライズが多かったセクターでは、建設・土木セクターが挙げられます。内需成長株として、注目されると思います。

(1)中間決算で増益が続いていることが確認された建設・土木株

 

11月10日までに今期(2016年3月期)経常利益予想を上方修正した主な建設・土木株

コード 銘柄名 2015年3月期実績 2016年3月期期初予想 2016年3月期今回予想 前年比
1720 東急建設 80 86 125 +56%
1801 大成建設 745 620 830 +12%
1802 大林組 599 560 850 +42%
1803 清水建設 562 640 840 +49%
1812 鹿島建設 214 430 620 +190%
1820 西松建設 99 105 157 +58%
1833 奥村組 56 52 84 +50%
1881 NIPPO 366 355 375 +2%
1911 住友林業 364 365 400 +10%
1925 大和ハウス工業 2,026 1,920 2,280 +13%
1942 関電工 103 106 125 +21%
  11社合計 5,316 5,319 6,793 -
  11社合計前年比 +22.1% ▲0.1% +27.8% -

(出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成)

前期(2015年3月期)は、期初の保守的な会社予想が、徐々に上方修正されていって、上記の11社では最終的に+22.1%経常増益となりました。今期(2016年3月期)は、11社で期初▲0.1%の経常減益を見込んでいましたが、中間決算を発表した時点で、+27.8%経常増益予想に修正されました。今期は、人件費や資材費の高騰などで利益が伸び悩む可能性があるとして、会社は保守的な業績予想をたてていたのが、中間決算まで出た時点で、前期と同様の高い増益率になることが見えてきたわけです。

建築・土木事業の粗利(完成工事総利益率)が予想以上に改善したことが、業績予想を上方修正した主因となっています。人件費の高騰は続いていますが、資材費は低下しました。選別受注できるようになった効果も続いています。たとえば、鹿島建設(1812)によると、今期の完成工事総利益率が6.2%(土木9.7%、建築4.6%)となると見込んでいましたが、今回8.4%(土木12.6%、建築6.7%)まで上昇すると見通しを変えています。

(2)2020年まで仕事量は豊富

東北復興・リニア新幹線工事・東京再開発・オリンピック準備・国土強靭化など、建設・土木関連の仕事は2020年まで山積みです。建設・土木株の収益拡大が2020年頃まで続くことが期待されています。

ただし、問題は、長年にわたり過当競争が続いてきた体質から、仕事はたくさんあっても「利益なき繁忙」に陥る恐れが常に付いて回ることです。慢性的な人手不足で人件費が高騰し、また工事の進捗が遅れる懸念も続きます。

建設粗利(売上高総利益率)がはっきり改善し始めたのが、2015年3月期からです。受け切れないほど仕事が増えてから、大手建設会社は、選別受注をできるようになりました。低採算工事を受けないようになってから、建築単価がはっきり上昇し始めました。「利益なき繁忙」から「利益ある繁忙」に変わる最初の一歩が2015年3月期に見られました。

2016年3月期も中間決算で、粗利改善が続くことを確認できました。利益率確保ができるならば、仕事量の増加によって、2020年まで利益の拡大トレンドが続くというストーリーが現実的になってきます。世界景気に不安材料が増える中、内需で強い利益モメンタムを維持できる建設株に、物色が向かう可能性が高くなっていると考えます。

(3)旭化成建材の問題はリスク要因として残る

のように、旭化成建材をくい打ち工事の下請けとして使用してきた会社は、今後、旭化成建材の偽装工事の調査が進むにつれて、追加で損失がふくらむ可能性が残っています。旭化成建材の問題は、業界全体に波及しつつあり、業界全体のリスクとして考える必要があります。三井住友建設(1821)や三井不動産(8801)