中国経済への悲観が強まっています。日本では、いわゆる「中国関連株」への業績不安が高まり、株価が大きく下がったものが多数あります。そのような中国関連株に、中間決算の内容が明らかになると同時に株価が急騰するものもあります。21日は、安川電機(6506)が前日比10.1%、新日鐵住金(5401)が4.6%、東京製鐵(5423)が同12.6%上昇しました。

(1)中国経済の悪化が続くが、いわゆる「中国関連株」には株価が売られ過ぎのものもある

「中国関連株と言われていたが業績は堅調」「確かに業績が悪化しているが、懸念したほど深刻ではない」といった理由で、中間決算の中身がわかると、見直される中国関連株があります。中国経済への悲観は変わりません。中国発の悪材料は、これからまだ増える可能性もあります。それでも、一部の中国関連株には、投資のよいタイミングを迎えているものもあると考えています。

そもそも、中国関連と言われているものに、イメージだけの「中国関連株」もあります。中国関連と言われている割には、中国景気悪化の影響がさほど大きくない銘柄群です。中国事業の売上高構成比が必ずしも高くない場合もあります。業績が堅調だと買いの候補になります。安川電機(6506)や東京製鐵(5423)、トヨタ自動車(7203)、東レ(3402)などはその候補です。

また中国の影響を受けて業績が悪化しているものでも、株価があまりに下げ過ぎている場合は、見直される場合があります。新日鐵住金(5401)・JFEホールディングス(5411)などの鉄鋼株は、その候補になります。

(2)安川電機(6506)の9月中間連結決算実績は好調

安川電機(6506)は、決算期末を20日に設定しています。9月中間決算とはいっても9月20日までなので、決算発表が早く注目を集めます。

 
 

安川電機(6506)の9月中間決算実績

(金額単位:億円)

  中間決算実績 前年比
売上高 2,079 +7%
営業利益 190 +27%
経常利益 190 +21%
純利益 120 +3%

(出所:同社決算短信)

中間決算は、売上高・利益とも過去最高を更新しました。同社発表資料によると、上半期の実績は、営業利益で35億円、同社計画を上回っており、中国関連株と見られている割には、業績は好調といえます。

安川電機(6506)の主力事業は、制御機器(売上構成比:47%)とロボット(売上構成比:35%)で、いわゆる設備投資関連株と考えられています。地域別の売上構成を見ると、国内向け30%・海外向け70%で、世界景気の影響を受けやすい「世界景気敏感株」といえます。懸念されている中国向け売上高は、上期473億円で構成比は23%です。上期の中国向け売上高は為替(人民元高)の影響もあり、前年比で13%伸びています。

ただし、2016年3月期通期の見通しについて、会社側では中国市場の減速など不透明要因が増えていると考えています。

 

安川電機(6506)の2016年3月期通期の業績見通し

(金額単位:億円)

  通期計画 前年比
売上高 4,200 +5%
営業利益 365 +16%
経常利益 370 +9%
純利益 240 ▲3%

(出所:同社決算短信)

同社が4月20日に発表した期初計画と比べると、売上高の計画は150億円引き下げられていますが、営業利益・経常利益・純利益の計画は、変更されていません。同社説明では、中国景気減速によって下半期に不透明要因が増えているので売上予想を減額するが、利益率の改善が見込まれるので、利益の予想は据え置くとしています。

同社資料によると、制御機器部門で、汎用インバータが中国のインフラ関連・米国のオイル&ガス市場向けに低迷しますが、ロボット部門でカバーします。制御機器部門については、売上高で165億円、営業利益で29億円通期見通しを引き下げていますが、ロボット部門については、売上高で40億円、営業利益で30億円通期見通しを増額しています。

私は、安川電機(6506)については、短期的な見通しよりも中長期的な成長期待の方が重要と考えています。今はまだ利益に貢献していませんが、ロボット分野でサービスロボットの開発に注力しており、「ロボット関連」として注目しています。近い将来、同社のさまざまなサービスロボットの実用化が実現する見込みです。

(3)東京製鐵(5423)は今期の単独利益見通しを上方修正

 

東京製鐵(5423)の9月中間(単独)決算実績

(金額単位:億円)

  中間決算実績 前年比
売上高 717 ▲15%
営業利益 72 +23%
経常利益 74 +21%
純利益 69 +25%

(出所:同社決算短信)

東京製鐵(5423)は電炉最大手です。電炉とは、鉄スクラップを仕入れ電気炉で主に建設資材を製造する製鉄会社のことです。同社の上半期業績は、15%減収、23%営業増益でした。上半期は、中国が鉄鋼の過剰生産・安値輸出を続けているため、建設資材の国際市況が大きく下がり、その影響で国内の鉄鋼市況も下がっています。このため、東京製鐵(5423)は15%減収でした。ただし、原料となる鉄スクラップ価格も大きく下がっています。原料安効果を享受し、営業利益は増加しました。

上半期の利益が好調であったことを受け、同社は通期の利益見通しを上方修正しました。

 

東京製鐵(5423)の2016年3月期通期の業績見通し

(金額単位:億円)

  通期計画 前年比 7月計画比
売上高 1,320 ▲20% ▲95
営業利益 130 ▲2% +10
経常利益 130 ▲6% +10
純利益 120 14% +10

(出所:同社決算短信)

7月時点の同社計画と比較すると、売上高は95億円引き下げられていますが、利益の見通しは逆に10億円引き上げられています。

(4)新日鐵住金(5401)は、原料安効果の発現に時間がかかる見込み

21日の日本経済新聞朝刊で、「新日鐵住金(5401)の2016年3月期は連結経常利益が3000億円強と、前期に比べ約3割減る見通し」と報道されました。会社計画(前期比▲18%の3700億円)よりも、さらに減益率が拡大します。ただし、21日の同社株は、前日比4.6%上昇しました。

よりも遅れます。高値在庫が残っている影響が続くからです。今期は、原料安効果の発現が遅れる中で、鉄鋼市況悪化や減産の影響で、業績が悪化します。ただし、来期には、原料安効果の発現で、業績の回復が見込まれます。株価は既に大きく下がって割安と判断されることから、当面、株価の反発が続くと予想されます。電炉大手の東京製鐵(5423)も、鉄鋼市況下落の影響を受けますが、同時に原料(鉄鋼石・石炭)安の恩恵も受けます。ただし、原料安効果の発現は、新日鐵住金(5401)