9月11日に安倍首相が「携帯電話料金の家計負担軽減が大きな課題だとして、総務相に料金引き下げの検討を指示した」と報道が出てから、携帯電話事業を展開する通信株が大きく下がりました。ただし、株価が下がり、予想配当利回りが上昇したところで、今は、押し目買いも入り始めています。

NTTドコモ(9437)など、好配当利回りの通信株への投資を今どう考えるべきか、私の意見を述べます。

(1)NTTグループと、KDDIは比較的配当利回りが高い

 

通信株の配当利回り:2015年10月20日時点

コード 銘柄名 株価:円 配当利回り
9437 NTTドコモ 2,234.0 3.1%
9433 KDDI 2,792.5 2.3%
9432 日本電信電話 4,495.0 2.2%
9435 光通信 8,930.0 2.0%
9984 ソフトバンクグループ 6,427.0 0.6%

東証が発表している33業種分類で上記5社は、「情報通信セクター」に入っています。このセクターはかつて「通信セクター」と「情報サービスセクター」に分かれていましたが、分類の見直しで1つになったものです。上記5社は、かつて「通信セクター」に入っていました。NTTドコモ(9437)・KDDI(9433)・ソフトバンクグループ(9984)は、携帯電話事業を行っており、日本電信電話は短距離電話網を提供しています。光通信(9435)はかつて、携帯電話販売のショップ事業の構成比が高かったので、通信セクターに入っていました。

配当利回りについては、ソフトバンクグループ(9984)が低いことを除けば、2%以上の好配当利回り株が多いといえます。特に、NTTドコモ(9437)は、今は配当利回りは3.1%と高い水準にあります。

(2)株価が下がると、予想配当利回りは上がる

 

NTTドコモ(9437)の株価と配当利回りの推移:
2015年1月5日―10月20日

まず、配当利回りについての、基本的な知識を再確認します。増配や減配がない限り、株価が上がると、配当利回りは下がります。逆に、株価が下がると、配当利回りは上がります。

たとえば、1株当たり年間配当金が30円で株価が1,000円ならば、配当利回りは、30÷1000=3%です。

ここで、1株当たり配当金が変わらないままで、株価が2,000円(2倍)に上昇したらどうでしょう。配当利回りは、30÷2000=1.5%となります。逆に、株価が500円(半減)したらどうでしょう。配当利回りは、30÷500=6%と2倍になります。

このように、株価と配当利回りは、逆相関しています。

今年は、8月くらいまでは、NTTドコモ(9437)の株価は順調に上昇しつつありました。その間、予想配当利回りは低下していました。ところが、8月以降、世界的な株の急落に巻き込まれて日本株が下がり始めました。そこへ、9月11日に「首相が携帯電話料金引き下げの検討開始を指示」のニュースが出て、さらに大きく下がりました。配当利回りは逆に上昇しました。

(3)リスクはあるものの、配当利回りが高くなったところで買い増しを検討可能と思います。

NTTドコモなど通信株は、景気敏感株ではありません。好不況にかかわらず、ケータイ電話は使われます。日本のケータイ電話という高収益ビジネスを、ドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社で実質的に独占してきたことで、安定高収益を維持してきました。また、ガラケー(従来型ケータイ電話)からスマホへのシフトが進む中で、月額利用料金は上昇傾向にありました。

企業努力によって高収益を維持してきたといえます。ところが、それが、逆に自民党の政治家の目につき、料金引き下げのターゲットとされました。2017年4月に消費税の再引き上げ(8%→10%)が予定されており、内閣支持率がさらに下がることを避けるために、なんとか国民の人気を得ようと、携帯電話をターゲットにしてきたようです。

ところで、政府にケータイ電話料金を引き下げを指示する権限はあるのでしょうか?今は、ケータイ電話事業は民営化されており、厳密に言うと、その権限はありません。ただし、今でも、通信事業は、今でもさまざまなところで許認可がかかわっており、影響力を及ぼすことは可能と考えられます。