30日の日経平均は、219円高の20,522円となりました。日経平均はしばらく20,000~21,000円の範囲で動くと考えています。

さて、今日は、来年1月からスタートするマイナンバーというテーマについて、考えていることを書きます。

(1)やっと日本でマイナンバーが実現

今年10月に、日本国の居住者(住民票のある人)全員に、12桁の個人番号(マイナンバー)が割り振られます。来年1月から、社会保障・税務・災害対策などの行政手続きに、マイナンバーが使われるようになります。

何十年も前から検討され、実現しなかったのが、やっと実現することに、私は感慨深い気持ちになります。米国では早くから使われていた制度です。納税者すべてに「SOCIAL SECURITY NUMBER」が割り振られ、それは一生使えます。私は、1991年に米国で勤務して納税した経験があります。その時、米国の「SOCIAL SECURITY NUMBER」を取得しました。その番号は、今でも私の個人番号として、残っています。

(2)マイナンバーは、株式市場で壮大なテーマになると思います

マイナンバーは社会に大きな変化をもたらします。「本人確認」のために煩雑化していた各種手続きが、マイナンバー導入で大幅に簡素化されます。ITを活用した合理化が遅れている官公庁分野がマイナンバー導入をきっかけに、大きく変わる可能性があります。「電子政府」といわれる取り組みが前進するきっかけとなりそうです。そうなると、行政部門の生産性が大幅に向上するだけでなく、国民が各種手続きを行う手間も、大幅に軽減される見込みです。

当初は、社会保障・税務・災害対策の3分野の行政手続きに絞った利用となりますが、軌道にのれば、利用できる分野はどんどん拡大していきます。将来、パスポート発行や戸籍登録、自動車登録などの行政手続きにも適用される見込みです。

現在、ネットがリアルを代替する(たとえば無店舗販売が有店舗販売のシェアを奪う)ことが、さまざまな分野に広がりつつあります。マイナンバーの導入が、その流れをさらに加速させることになると思います。民間にも利用が開放されれば、ネット金融取引の本人確認にも使えるようになる見込みです。マイナンバーを活用した新しいさまざまなネットサービスが、誕生するでしょう。

医療分野でも、遅れていたIT化が進むきっかけになるかもしれません。将来、マイナンバーとリンクした電子カルテが全面的に導入されれば、保険請求や治療・投薬の履歴管理が容易になる可能性があります。ただし、この分野での利用には、根強い反対意見もありますので、簡単には実現しないかもしれません。

相当な年数を要するかもしれませんが、マイナンバーは、官公庁・病院・ネットサービスなどに革命的な変化を引き起こす起爆剤となる可能性を秘めています。ただし、マイナンバーを使う分野が広がれば広がるほど、悪用のリスクも大きくなります。情報漏えいや悪用を防ぐサイバー・セキュリティー技術のさらなる革新がないと、利用の拡大も広がりません。

(3)マイナンバー情報のセキュリティ管理が課題

問題になるのは、個人情報のセキュリティ管理です。官公庁だけでなく、さまざまな主体が、マイナンバーを利用するようになります。たとえば、会社は、従業員やその扶養家族のマイナンバー情報を取得し、源泉徴収票作成などの目的に使用します。その際、従業員のマイナンバー情報が外部に漏えいしないように厳格に管理する必要があります。マイナンバー情報の流出によって、個人情報が漏えいし、他人による「なりすまし」を起こしてはならないからです。

あくまでも私見ですが、マイナンバーの導入に反対する人々は、情報管理の難しさと情報漏えいの危険性を、やや過大に語っているところがあります。ただし、現実問題として、情報管理に不慣れな個人や会社などが、情報漏えいの問題を起こすリスクを決して過小評価するべきではありません。

(4)株式市場で注目されるマイナンバー関連株とは

まず「サイバー・セキュリティー」関連株が注目されます。次に、「電子政府」の推進に向けて、ITインフラ整備などに膨大な需要が発生しますので、「ITインフラ構築」企業が注目されます。

あまり先読みし過ぎてはいけませんが、マイナンバーの利用範囲が拡大する都度、そこでメリットを受ける株が関連株としてとりあげられる可能性があります。医療分野はその有力候補です。いつになるかわかりませんが、健康保険証やカルテが完全に電子化されてマイナンバーとリンクするようになれば、「電子カルテ」関連株にも物色が広がるでしょう。

そう考えると、マイナンバーは今後5から10年は続く、壮大なテーマになると思います。本欄でも、今後、折に触れて、さまざまな「マイナンバー関連株」をご紹介できるように、取材活動を続けていこうと考えています。