5日のギリシャ国民投票結果(EUが求める緊縮策を大差で否決)が判明してから一昼夜たちました。ギリシャ・ショックが世界を駆け巡りましたが、欧米株式は日経平均ほど大きくは下げていません。

6日の世界の株価指数、為替は以下の通り、動きました。

  • 日経平均:20,112円、前日比▲427円(▲2.1%)
  • ドイツDAX指数:10,890ポイント、前日比▲167ポイント(▲1.5%)
  • NYダウ:17,683ドル、前日比▲46ドル(▲0.26%)
  • シカゴCME日経平均先物(円建て):20,275円(6日の日経平均終値対比+163円)
  • 為替:1ドル122.58円(7日の日本時間午前6時15分)

今日の日経平均は、欧米株式の下げがさほど大きくなかったことを受けて、反発が予想されます。

(1)ギリシャ国民投票の結果を踏まえ、EUは今日、ユーロ圏首脳会談を開催へ

ギリシャ国民投票の結果を踏まえ、ギリシャは今日にもEUに新提案を提出する見込みです。EUは、ギリシャの国民投票の結果を尊重した上で、新たにギリシャから出てくる提案を見て、今後の対応を協議する見込みです。EUがギリシャとの対話の場を維持する姿勢を示していることから、欧米株式の下げは大きくなりませんでした。依然、ギリシャ国債のデフォルト・EU離脱リスクはあるものの、金融市場は、今日の話し合い進展を見守る姿勢です。

なお、ギリシャ問題の行方にかかわらず、日本の景気・企業業績は回復トレンドが続くと考えていますので、日本株は買い場との判断を継続します。

(2)今後ギリシャに起こること

2つのシナリオを考えています。

<シナリオ1>  EUがギリシャ支援継続を拒否。ギリシャ国債はデフォルト、ギリシャはユーロ離脱。
<シナリオ2>  EUが妥協。ギリシャに要求する緊縮策をかなり緩め、ギリシャに何とか受け入れさせようとする。

(3)普通に考えれば、ギリシャ国債デフォルト・ギリシャはユーロ離脱へ向かう

ギリシャ国民は、EUの要求する緊縮策を大差で否決しました。チプラス首相は、借金が返せず事実上のデフォルト状態になっても金融支援を続けるEUやドイツを非難し続けてきました。

こうした経緯を考えると、ギリシャは、EUから支援延長を引き出す新提案はできないでしょう。そうなると、ギリシャ国債デフォルト、ギリシャのユーロ離脱の可能性が高まります。

この場合、今後起こることは以下の通りです。

  • EUはギリシャ支援継続を拒否
  • ギリシャ国債デフォルト
  • ギリシャの銀行預金封鎖は長期化
  • ギリシャ通貨は「ドラクマ」に戻る
  • 「ドラクマ」が対ユーロで急落
  • 輸入物価高騰でハイパーインフレ起こる
  • ギリシャ国民の銀行預金は価値が大幅目減り
  • ギリシャ国民の実質給与も激減

ギリシャ国民は、EUの要求する緊縮策を受け入れるよりも、さらに厳しい困窮におちいることになります。ギリシャのデフォルトによってEUの支援国や銀行も大きなダメージを受けます。

このように、ギリシャのデフォルト・ユーロ離脱は、世界経済に短期的にネガティブな影響をもたらします。ところが、私は、そこから、ギリシャの真の再生が始まると考えます。自国通貨の暴落したギリシャでは、過剰消費は、強制的に抑え込まれます。一方、観光業や海運業は、通貨安の恩恵で、活況になります。通貨ドラクマの暴落によって、ギリシャ経済は一時的に経済恐慌に陥りますが、そこから立ち直っていくと思われます。

(4)ギリシャへの支援延長は、問題の先送りにしかならない

この期に及んでなお、EUがギリシャを甘やかし、支援を続けようとする可能性もでてきています。ギリシャ国債デフォルトを回避して、問題を先送りしたい誘惑はEUにもギリシャにもあるからです。EUが、当初要求していた緊縮策を、ギリシャが受け入れるところまで緩めた上で、なんとかギリシャに受け入れさせるように努力する可能性もあります。

ただし、そうなると、ギリシャ問題は長期的に世界の金融市場にとって悪材料であり続けることになります。信用不安国のギリシャは、これからも延々とEUに文句を言いながら支援を受け続けることになります。その結果、緊縮に耐えて債務返済を続けている、他のEU諸国に「反緊縮」が連鎖するリスクも出てきます。

何よりも問題なのは、ギリシャがユーロに留まり、ドイツの信用で支えられている通貨「ユーロ」を使い続けることです。ギリシャの過剰消費は抑え込まれない上に、外貨を稼ぐ観光業や海運業が活況になることもありません。ギリシャの破綻を先送りすれば、それだけギリシャの真の再生も遠のくでしょう。

私は、遅かれ早かれ、ギリシャはユーロ離脱に向かわざるを得ないと考えています。それをしないで、問題を先送りしようとしても、ギリシャ国民も、他のEU諸国の国民も、両方納得できないと思います。

(5)統一通貨「ユーロ」の幻想

今になってみると、そもそも経済構造がまったく異なる欧州の国々が統一通貨を持てると考えたこと自体が幻想だったと思われます。経常赤字の大きい国、対外負債の多い国では、通貨が下がることによって、輸入が抑えられ、輸出が活性化します。信用不安国の通貨下落は、対外負債の拡大を未然に防ぐ機能を果たしています。

信用が悪化しても統一通貨ユーロを使い続けられる仕組みは、信用不安国をいつまでも赤字体質から脱却できなくする仕組みであったと言えます。